時事問題

2010.04.12

開けてびっくりiPad(アイパッド)〜ビジネスのスタートラインにも立てなくなるのか日本メーカー

こんにちは、井之上喬です。皆さんいかがお過ごしですか?
週末に新宿御苑で時期遅れのお花見を楽しみました。

地面に散り落ちた桜の花びらが絨毯のように陽光に映え、幻想的な空間のなかで時間が経つもの忘れてしまうほどでした。
携帯電話の分野ではiPhone(アイフォーン)に代表されるスマートフォンが大流行し、パソコン(PC)の世界ではネットPC、タブレットPCに注目。モバイルのインターネット端末機器はものすごいスピードで進化を続けています。そんな中で米国時間の4月3日、アップル社が新しい端末機器「iPad(アイパッド)」を発売し世界中の注目を集めています。

日本でも花開くか電子書籍分野

iPadは、日本でも4月末の販売が予定されていますが高さ約243mm、幅約190mm、厚さ約13mmで重量はWiFi+3Gモデルで730g。週刊誌よりひとまわり小さいB5判の雑誌に近い大きさで、9.7インチのLEDバックライトの液晶ディスプレイ画面で文字も読みやすいようです。

日本発売に先駆け、米国で購入したiPadを試したあるライターさんは、「慣れるのにちょっと時間がかかったが、すぐに時間を忘れていろいろな機能を試してみたくなった。日本発売が待ち遠しい」とiPadの虜になってしまった様子でした。

iPadではウェブ・ブラウザーやメール、写真、ビデオ、動画、音楽再生、ゲームなどに加え注目は何と言っても電子書籍。文字拡大の必要もない読みやすい大きさ、1画面の情報量も多く、電子書籍の分野に大きな影響を与えるのは必至のようです。
電子書籍の分野では、2007年に米アマゾン・ドット・コムが電子書籍端末「Kindle(キンドル)」を投入。2008年後半から米国の電子書籍市場は急拡大し、米国IDPF(The International Digital Publishing Forum)の調べでは、2009年第4四半期(10?12月)の電子書籍売上は5590万ドルで、前年同期の1680万ドルに比べ3.3倍の売り上げ増となっています。

この急成長の背景には、電子書籍端末の登場だけでなく米国や欧州の出版社がコンテンツの提供に積極的に取り組んでいることも見逃せません。日本でもiPadの上陸を前に3月24日に日本電子書籍出版社協会(電書協:一般社団法人)が設立されました。

電書協は2000年に設立された電子書籍販売サイトを運営してきた電子文庫出版社会(任意団体)が母体となっています。電書協はこの団体が行っていた電子文庫パブリの運営を引き継ぐとともに、電子書籍事業に関する課題の調査・研究を行っていくことにしており、代表理事には講談社の野間省伸副社長が就任。

メンバー企業には、角川書店、幻冬舎、講談社、光文社、集英社、小学館、新潮社、ダイヤモンド社、筑摩書房、東洋経済新報社、徳間書店、日経BP、日本放送出版協会、PHP研究所など出版社31社が参加。組織を拡大しています。
取次や書店といったこれまでの書籍流通構造への依存に加え、活字離れが進み市場規模が縮小している構造不況の出版業界にとって、電子書籍が神風となるか、それとも黒船襲来となるのかデジタル時代のコンテンツ・ビジネスの今後に大いに注目したいと思います。

ブラック・ボックスは必要ない!

今回のiPad関連報道で一番驚いたのが、4月9日の日本経済新聞朝刊でした。見出しは「iPad部品 日本製影薄く」。米国のハイテク調査会社アイサプライ社のデーターが紹介されていました。

同社がiPadを分解して、そこに搭載されている電子部品のメーカーや価格などを分析した結果、何とほとんどが韓国や台湾メーカーの部品。日本メーカーの部品ではTDKの香港子会社アンプレックステクノロジー社製のバッテリーが唯一採用されているだけという衝撃的な記事でした。

これまでの我々の常識とされた、「最先端のコンシューマー電子機器には多くの日本製電子部品が搭載され、高機能化、高性能化に貢献している」といった考えは覆されました。半導体など日本企業が生産する最先端の電子部品が世界をリードし、貿易摩擦を生むほどの勢いがあった時代とは隔世の感があります。

日本は、ヒット商品も生み出せず、ヒット商品に搭載される部品も作れない、そんな国になってしまったのでしょうか。
最先端の電子機器分野では、これまでの「ブラック・ボックス的部品を採用し、他社に真似できないような製品を作る」時代から、「普通に調達できる部品をうまく組み合わせ低価格かつ高機能な製品を工夫する」時代に移行したようです。

このままでは、新しいビジネスのスタートラインにも立てない事態になりかねません。3月22日の井之上ブログでも書きましたが、ガラパゴス化はまだましなのかもしれません。韓国や中国のスピード経営は新しいビジネス・モデルを創りだし、これまで日本の製造業の常識であった“良いものを作れば売れる”時代は今や遠い昔話。

Made in Japanが見向きもされないような時代が来ないように、いま政府には強いリーダーシップが求められています。産官学が連携し、次々に新ビジネスを創出させ、世界市場をリードするような選手=企業を育成する体制づくりが急務ではないでしょうか。目標を設定し、その達成のためのリレーションシップ・マネジメント(良好な関係性の構築・維持)であるパブリック・リレーションズ(PR)が強力な武器となるでしょう。

 

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