時事問題
2009.11.30
全9日間、「事業仕分け」が終了 〜政府行政刷新会議
こんにちは、井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
8月30日の衆議院総選挙で民主党が大勝し、政権交代が実現して今日で3カ月経ちました。11月11日に「事業仕分け」をスタートさせた、民主党行政刷新会議の一連の作業は27日に終了しました。目標は、過去最大規模の来年度予算概算要求額95兆円から3兆円削減すること。
447事業に対して、必要性に応じて「廃止」「予算削減」を求めた結果、概算要求から約7500億円が削減可能とされ、国庫返納などで捻出できる財源を加えると、その削減額は1兆9500億円に達した(朝日11/28朝刊)模様です。仕分け作業は一般公開で行われ、インターネットでも同時中継されるなど新政権による積極的な情報公開を印象付けたといえます。また仕分け人の判定基準が「あいまい」とする批判も出ましたが、総じて大多数の国民が今回の事業仕分けを歓迎しています。
求められるプレゼン能力
仕分け人メンバーは、その人選に紆余曲折があったものの、民主党を中心とした国会議員と民間人により構成。TVを通して、今回の「事業仕分け」から見えてくるものは、質問される側に立つ各省庁代表の官僚の返答や説明が不明瞭であったり、その内容が明確性を欠いたものでした。
初めての経験とはいえ、相手に対する説明能力に欠けていたのは明白。民間では、顧客に売り込みをかけたり説明を行う場合、必要とされるのはプレゼンテーション能力です。説明する側に立つ官僚はこれまで、シビル・サーバントとして納税者へ対しどのようなプレゼンテーションを行ってきたのでしょうか?
相手を説得する気迫もさることながら、プレゼンテーション技術に長けていないと相手を理解させることは困難です。「なぜ」、「何の目的で」この事業を行っているのか、事業を通して国民(社会)に「どのような恩恵をもたらすのか」、その「ユニーク性」や(施設の場合)その利用頻度など、「数字に裏付けされた説明」が求められます。多くの天下りを受け入れ、受け入れが目的化している機関では、こうした説明は苦手ということなのでしょうか。
11月28日の主要各紙の朝刊は、トップで事業仕分けが当初の目標の3兆円に及ばなかったことを報じていますが、今回の数値目標に違和感を持っている人は私だけではありません。これまで野党で、行政の細部にわたってアクセスできなかった民主党が、数か月で完全な予算編成ができるはずはありません。まず新予算を組み、1年間走らせ、現場の実態を把握してから、埋蔵金の発掘や無駄な予算を削ってもいいのではないでしょうか。「一度組んだ予算は使い切る」これまでのやり方は、現在の財政状態では通用しないはずです。
科学技術は日本の生命線
事業仕分けのなかでスーパー・コンピュータ研究など、科学技術予算の大幅削減提案が引き金となり、9つの大学の学長が24日、東京都内で緊急記者会見を行いました。日本の学術や大学の在り方に立って、これらの削減は世界の潮流に逆行する行為であると批判。将来の日本の科学技術への懸念を表しました。翌日のTV番組で、ノーベル賞学者の益川敏英さんが「科学技術分野でNO.2はNO.30を意味する」と語り、科学技術研究の重要性について強く訴えていたのが真に迫っていました。
いま日本から有為な人材が流出しつつあります。その流れ出る先は、これまでのような米国の研究機関ではなく、猛烈な人材引き抜きを国家戦略として行うアジアの新興国です。そうした国の政府からひとりの科学者(研究者)やチームが、数十億円の研究費で迎えられようとするケースが顕在化しています。その意味するところは、迎え入れられた研究者の成果が、相手国のものになってしまうということです。定年退職を迎える科学者は格好の標的になっています。
中国のGDPは今年中にも日本を上回るといわれています。中国をはじめ、多くの人口を抱えるインドなどの新興国が急速なスピードで追い上げをはかっています。これらの国に価格競争で勝てるはずはありません。日本が勝負できるのは、高付加価値製品ということになります。その基礎となるのが科学技術。
予算の問題とは別に、日本には助成金の利用法にも問題があるようです。とくに科学技術分野での問題は、有能なプロジェクト・マネージャーがいないといわれています。これまで日本では国の助成金で研究を行う際、報告書など超大な資料作成が要求されていました。研究者は時として本来の研究より、その作成に神経と時間を取られていることも耳にします。プロジェクト全体を管理できる人材養成も必要とされるところです。
鳩山内閣の予算編成作業はこれから本格化しますが、どのような結果になるのか関心が高まっています。国民への理解と協力を得るために、パブリック・リレーションズ(PR)はなくてはならないものといえます。