時事問題
2009.09.21
鳩山新政権発足〜民主党マニフェスト実行
8月30日の総選挙で歴史的な大勝利を収めた民主党。半月後の9月16日、国会での首班指名の後、鳩山由紀夫代表は、第93代日本国首相に就任し、社民党、国民新党との3党による連立政権がスタートしました。
安定感のある新閣僚
連立政権発足直後の鳩山内閣の支持率は、毎日新聞の調査で77%、読売新聞が75%、共同通信社72%と、小泉内閣に次ぐ高い数字で同政権に対する国民の期待は高まっています。
鳩山新首相が初めて取り組んだ閣僚人事は「脱官僚」に主眼を置いたのが特徴。代表経験者である菅直人(副総理、経済財政担当相兼国家戦略局担当相)、岡田克也(外相)、前原誠司(国交相)の3氏を始めとし、知名度の高い論客を「脱官僚」の最前線に配置したことです。18日には辻元清美国交副大臣を始めとする22人の副大臣を決定し、陣容固めを急いでいます。
大臣就任後初の深夜の記者会見では、これまでのように官僚が準備した原稿を読み上げる光景は見られず、一人ひとり自分の言葉で語っていたことが強く印象に残っています。長い野党時代を経験したからでしょうか、息せき切ったような新閣僚から発せられる就任スピーチの内容と姿勢は、これまでの就任会見と比べて際立っていたといえます。
新政府人事は、民主党内のグループ間のバランスや来夏の参院選挙への布陣も考えた、小沢一郎幹事長への配慮も窺わせ、「挙党態勢」を重視したものとなっています。また新政権には、首相官邸をサポートする組織や具体的な政策決定システムの構築が急がれており、鳩山新政権は試行錯誤を繰り返しながらのスタートとなるものと見られています。
早速、マニフェスト実行
翌17日、新大臣から次々に新機軸が打ち出されます。前原誠司国土交通相は川辺川ダム(熊本県)や八ツ場ダム(群馬県)の建設中止を表明。長妻昭厚生労働相は、後期高齢者医療制度の廃止や生活保護の「母子加算」復活を表明。原口一博総務相は、国から地方へのひも付き補助金を廃止し、一括交付金として交付。並びに、国の直轄事業における地方の負担金制度の廃止を表明。亀井静香郵政改革・金融相は日本郵政社長に対する辞任の促しと中小企業への金融支援の表明などなど。
政府の戦略的要となる国家戦略室長には古川元久(内閣府副大臣兼任)さんが就任。弱冠43歳の古川さんは東京大学在学中、20歳で司法試験にパスし、28歳で大蔵省を退職、その後浪人経験をしながら政治家を目指してきた人です。頭脳明晰で、ハートもあり大所高所でさまざまな視点が求められるこのポストには最適な人事といえます。
しかしこれらの中には担当大臣間の政策やその守備範囲についての微妙な食い違いも見られます。長年膠着化した組織を全面的に変える場合、多少の齟齬は走りながら調整をするということなのでしょうか。関係者の間で論議が沸き起こっています。
PR実務家にとって興味深い話題がありました。それは岡田克也外相が就任後間もない18日の記者会見で、「外務省での記者会見を原則としてすべてのメディアに開放する」と述べていることです。これまで外務省の霞クラブに所属する報道機関に限定していた会見に、それ以外のメディアに対しても参加を広げる方針を明らかにしたもので、同外相によると、対象媒体は、「日本新聞協会」「日本民間放送連盟」「日本雑誌協会」「日本インターネット報道協会」「日本外国特派員協会」の各会員と、「外国記者登録証保持者」。また、条件付でフリーランス記者も認めるとしています。
岡田外相は何度も「国民の理解が得られなければ、外交はなりたたない」と発していますが、まさに国民の理解を得るために思い切った記者クラブ改革を打ち出したものと考えることができます。日米政府間の「核密約」問題で省内に徹底的な調査を命じていることからも、外務省の透明性が飛躍的に高まっていくことが期待されます。
マニフェストを掲げて国民の支持を取り付けた新政権にとって、数々の難題が山積しています。さまざまなステーク・ホルダー(パブリック)との関係構築を行なうパブリック・リレーションズ(PR)がどのように機能するのか今後が楽しみです。