時事問題

2009.08.31

民主党 歴史的勝利〜政権交代、衆議院選挙

今日は井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?

8月30日、第45回衆議院議員選挙の投開票が行われました。107年振りの真夏の選挙、その結果は480議席のうち、民主党が308議席、自由民主党が119議席と民主党の圧勝に終わりました。自民党は、1955年の結党以来選挙に大敗し、政権第一党の座を降り、15年ぶりに野党に転落することになります。

他党の議席数では、公明党は21、共産党9、社民党7、国民新党3。日本新党1、大地1、その他6、また公示直前に新しく旗揚げした、みんなの党は5名と善戦。政権与党の自民・公明は共に、太田代表、北側幹事長をはじめ多くの現職閣僚や党幹部、派閥の長が小選挙区で議席を失いました。今回の政権交代の嵐は想像を絶する勢いだったことが証明されました。

有権者が立ち上がった

300を超える民主党の議席獲得は、一党が占める議席としては戦後最大といわれていますが、自民党敗北の原因はいろいろ考えられます。
開票後に麻生総理が、「自民党への積年の不満と不信が敗因」と敗戦の弁を語っていますが、1955年以来、細川・羽田政権(1993-1994)の一時期を除いて、半世紀以上にわたり国家経営を主導してきた同党への有権者の不満が爆発した結果と見ることができます。

また自民党が日本や世界を取り巻く環境の変化を読み切れず、政官財のもたれあいの構図から抜け出せなかったことなどもあげられます。加えて安倍、福田両首相(総裁)の突然の辞任。「自民党総裁が毎年変わったのも敗因の一つ」と麻生総理がテレビのインタビューに答えたように、国民の自民党離れに拍車をかけたといえます。

さらに昨秋のサブプライム問題は自民党にとって避けがたい逆風となりました。国民の不満は自民党に一気に集中。これまで、「政治には期待しない」と言っていた人たちが、投票行動が自らの生活に直結していることを知らされ、本気になって投票場に足を運び、地殻変動を起こしたのでした。
台風11号の影響にもめげず今回の投票率では、TBSの報道(31日午前1時現在)によると69.29%と、前回2005年(67.5%)より2ポイントほど上回っているようです。また、期日前投票は全国で1398万人。2005年衆院選の1.56倍と過去最高を記録。

成熟する民主主義

英国週刊誌『エコノミスト』のシンクタンクである、Economist Intelligence Unit(EIU)が発表した民主主義の成熟度のランキング Democracy Index2008 をみると、上位には一位のスウェーデンを始め北欧諸国が占めていますが、日本は前年度の20位から17位に上がっています。評価項目は、1)選挙プロセスとプルーラリズム(複数の民族・宗教等の共存状態) 2)政府の機能 3)(市民の)政治参加度 4)政治風土 5)市民の自由度以下の5項目。

戦後、日本の民主主義は少しずつ成長してはいるものの、「欧米型先進国」のなかで、日本のような国家は、他には存在しません。これまで日本人の多数は、戦後長きにわたって所属する組織で組織票を形成してきました。産業界であれば所属する自動車労連、金属労連などの労働組合やパブリック・セクターでは、官公労(官公庁にある労働組合)などに所属し、これらが政党に対して選挙の集票マシーン役を担ってきたといえます。

企業の政治献金も盛んで、土建関連企業は、公共事業の受注と引き換えに、政治資金の提供から、選挙活動で社員を供出するなど特定の政治家と深い関係を築いてきました。つい最近まで、企業が政治家の事務所や秘書の給与を肩代わりするなどはごく当たり前のこと。個人票は、浮動票といわれ大政党に大事にされてきませんでした。したがって政権与党からは浮動票の投票は歓迎されず、投票率が低いと組織票を持つ政党が優位に立っていたわけです。

いまこの流れが大きく変わろうとしています。小沢一郎代表(当時)の公設秘書問題をきっかけに民主党はいち早く、企業・団体からの全面的政治献金廃止をマニフェストに掲げました。また公務員の制度改革を訴え他の野党も追従するなど、政・財・官のもたれあいを断ち切ろうとしています。

今回の総選挙は、初めて多くの日本人が、組織を離れ、自分の意思によって各党のマニフェストを投票基準とし、自分の望む政策を実現してくれる候補者や政党に一票を投じた選挙といえます。マニフェストによる政権交代が当たり前になって初めて、真の民主主義国家になるのではないでしょうか。

今後の組閣人事が楽しみですが、内政、外交など問題は山積しています。しかし、しばらくは温かい目で見守る度量を、有権者はもとより、敗北した自民党やマスメディアに期待したいものです。

30日深夜の鳩山代表の「勝利会見」で、鳩山さんは3つの交代の必要性について話しました。一つ目は「政権交代」。二つ目は「古い政治から新しい政治への交代」。三つ目は「官僚主導から国民主導への交代」。そして最後に「数におごることのない政治を行いたい」と抑制のある言葉で語っています。

民主党が国民の痛みや叫びを聞きとり、血の通ったきめの細かい政治を行ってもらいたいと願うのは私だけではありません。パブリック・リレーションズ(PR)がどのように機能するか楽しみです。

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