時事問題
2008.09.06
自民党総裁選〜新しい政治の構築に向けて
こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
福田首相の9月1日夜の突然の退陣表明により、政治の世界がにわかにかまびすしくなっています。この発表は、同じ日の1日午前に小沢民主党代表による、9月21日開催の民主党代表選への正式立候補表明を受けたタイミングで行われました。
北海道洞爺湖サミットのホストを果たしたばかりの福田首相の突然の辞任ニュースは世界中を駆け巡りました。昨年9月26日に就任以来わずか11カ月で、安倍前首相に続く辞任として国内にさまざまな反響を呼んでいます。
オープン性を強調
このような大イベントには、双方が有権者をどのように取り込むのかメディア戦略は極めて重要なものとなります。メディアは今回の辞任について、民主党代表選挙にぶつけるために、気色の悪くなった福田さんが首相を退任し、民主党の無風選挙と対称的な、色とりどりの候補者擁立によるオープンな選挙を内外に示すことを意図しているのではないかと報じています。
おりしも米国でも、11月4日の大統領選挙に向けた民主、共和党の候補者決定が同じタイミングで行われ、8月28日の民主党全国大会ではオバマ上院議員、9月3日の共和党全国大会ではマケイン上院議員が大統領候補として指名されました。指名受諾演説の3大ネットなどでの全米の視聴者数はそれぞれ3800万人を超えたとされています。
自民党は今回の総裁選挙ではオープン性を強調し、民主党との違いを浮き立たせ、代表選候補者が対抗馬のない小沢代表ひとりの民主党に対し、開かれた自民党を演出しようとしているようにみえます。候補者も麻生太郎幹事長のような「積極財政派」、与謝野馨経済財政相の「財政規律派」、小池百合子元防衛相の「上げ潮派」、中堅を標榜する、石原伸晃元政調会長、石破茂前防衛相、加えて中堅・若手を代表する棚橋元科学技術担当相、山本一太参議院議員などが立候補の意思を表明し推薦人集めを急いでいます。現状では、5名を超える候補者が争う様相を呈しています。
マニフェストを示す
さまざまな候補者が名乗りを上げることは、開かれた党を国民に示す意味では間違っていませんが、問題は他の候補者と比べてどのような政策を掲げるのかが鍵となります。北川正恭元三重県知事(早稲田大学院教授)の提唱で、マニフェスト(政権公約)選挙が普及し、2003年の衆院選では民主党がマニフェスト作成を宣言。その後他党にも浸透しつつありますが、これまで自民党は積極的にマニフストを掲げていません。
9月21日の臨時党大会で行われる民主党代表選挙の翌日に実施される、自民党総裁選び(10日告示、22日投開票)では、具体的な政策論争を展開し他の候補者との政策の違いをそれぞれ鮮明に打ち出すことが重要。さもないと国民はただの政治ショーとしかみなさず、自民党離れは加速するばかりとなります。候補者のマニフェストが期待されるところです。
いま国民が求めているのは、戦後日本のシステムの再構築。企業のリストラと同じように、同じ経営者(政党)が自ら思い切った構造改革を行うには無理があります。小泉政権後の自民党によるさまざまな改革に対する進捗は足止め状態。現在の状況は、年金問題や国家公務員制度改革などさまざまな具体的改革のために政権交替を行い、新しい枠組みによる改革でしか実現できないと、私たち有権者に思考転換を促していると見ることもできます。
このような中で、明確なメッセージを国民にわかりやすくタイムリーに送り、人々の心を一つにするためにパブリック・リレーションズ(PR)の果たす役割は大きいのです。