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2016.09.15
NHK大河ドラマ余談〜「関ヶ原を1分で終わらせた」三谷幸喜さんの脚本
皆さんこんにちは井之上 喬です。
400余年も前の今日(1600年9月15日)は、徳川家康率いる東軍と石田三成率いる西軍とで関ヶ原の戦いが行なわれた歴史的な一日でした。
奇しくも4日前の11日(日)にNHKの大河ドラマ『真田丸』第36回の「勝負」では、日本史上で最も有名な合戦の1つである「関ヶ原の戦い」が放送されました。
NHKの看板番組の制作費は?
しかし、「関ヶ原に」に関係するシーンは、真田家の忍びである佐助(藤井隆)が真田昌幸(草刈正雄)に「東軍が勝利した」と報告するだけで終わらせています。
ORICON STYLEによると、三谷幸喜さんの脚本に対してSNS上で「超高速関ヶ原」、「関ヶ原を1分で終わらせた」、「何この斬新すぎる大河ドラマは!」などといった書き込みとともに、余りにも異色なストーリー展開に衝撃が広がったといいます。
三谷さんの脚本では、信繁(堺雅人)や真田の人々が見ていないこと、体験していないことは、歴史上の重要な出来事であっても、あえてすべてを見せないようにしているとのこと。第4回「挑戦」で、「本能寺の変」を炎の中で鎧が崩れるイメージショットとナレーションだけで終わらせたのもその一環だったようです。
大河ドラマは朝の連続テレビ小説と並ぶNHKの看板番組。歴代瞬間最高視聴率は、53%を記録した『赤穂浪士』だったそうです。かつては30%超えが当たり前だった大河ドラマ(独眼流政宗、武田信玄、春日局、太閤記など)も、近年視聴率の点で苦戦を強いられているといわれます。
毎週金曜日の日経MJの2面(エンターテインメント)では、映画、CD、文芸単行本の週間ランキングと一緒に、テレビドラマの視聴率も掲載されています。テレビドラマでは、連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK総合)と真田丸(NHK総合)とが常時1位と2位にランキングされています。直近の視聴率はそれぞれ24.2%と17.3%でした(8/1-7日ビデオリサーチ調べ)。
大河ドラマの30%超えは、現実的にはなかなか難しいようです。特に近年は、本放送だけでなく、NHKBSプレミアムで同日の2時間前(18:00〜)に放送されたり、再放送や録画して都合の良い時間に見るといった多様な視聴スタイルもあるなど、視聴の選択肢が増えたことで、本放送の視聴率を下げている要因ともなっているようです。TV関係者よると、現状で17-18%の視聴率がとれれば、まずは合格点といえるとのこと。
また、こうしたNHKの看板番組の制作費がどれくらいか、気になるところです。これについても、前述のTV関係者から「NHKは年度毎の『収支予算と事業計画の説明資料』に詳細が公開されている。それを見ると番組1回当たりの制作費が分かる」と教えられました。
http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/yosan/yosan28/pdf/siryou.pdf
早速、平成28年度の説明資料を当たってみると、収支予算と事業計画について40ページを超える詳細情報が載っていました。
その7ページ目に〈ジャンル別の番組制作費〉が紹介されていて、ドラマ(大河ドラマ、BS時代劇、連続テレビ小説)の1回当たりの制作費が9.9〜58.3百万円となっています。下限の990万円は連続テレビ小説で、上限の5830万円は大河ドラマのそれぞれ1回分の制作費に相当するようです。
パブリック・リレーションズ(PR)活動において情報公開は、企業経営の透明性を示すうえで重要な要素となっています。NHKの「収支予算と事業計画の説明資料」を目にして、公共放送として適切な情報公開をしているなという印象をもちました。
大河ドラマの経済波及効果
日本銀行は定期的に大河ドラマ(新選組)の放送による経済波及効果を調査し、発表しています。
放送開始前の昨年、日本銀行松本支店は特別調査「長野県における大河ドラマ『真田丸』の放送に伴う経済効果」を発表しています。調査によると、県内・県外からの観光入込客数の増加効果は約113 万人、これに伴う観光消費増加額は約161 億円、経済波及効果は約200 億円となると試算されたそうです。
これは、2001年-2014年に放送された大河ドラマ(14本中11事例)を参考に観光入込増加客数を設定し、これに観光消費額単価を掛けて観光消費増加額を求めるなどして経済効果を算出するとのこと。
「真田丸」による観光消費増加額約161億円の内訳は、土産代や買い物代などが約53億円、宿泊費が約45億円、飲食費が約30億円、交通費が約21億円、入場料、娯楽費が約12億円を見込んでいるといいます。
観光入込増加客数は約113万人のうち宿泊客は約36万人、日帰り客は約77万人と推計しています。
その後、日銀松本支店は「上田城跡公園に開設された大河ドラマ館には当初の予定を大幅に上回る入館者が訪れている。また長野市松代町(真田宝物館)も前年比の7倍の観光客が来る日があるなど、これまでになかったくらいの観光客が来てお金を落としていることは間違いない」とコメントしているとのこと。
地方経済の視点から大河ドラマを視聴するというのも面白いものですね。