パブリック・リレーションズ
2007.02.23
PRパーソンの心得7 リラックスした集中状態
パブリック・リレーションズの実務家は常に覚醒していなければなりません。油断や一瞬の判断ミスが所属する組織やクライアントの存続を危うくすることがあるからです。この覚醒した状態を実現するのがリラックスした集中状態。今回はPRパーソンの心得7として「リラックスした集中状態」をお届けします。
戦いを制する平常心
「リラックスした集中状態」とは、心身が深くリラックスして、感覚器官が冴えわたり精神の集中力が高まっている状態のことを指します。リラックスと集中は一見すると正反対の状態であるように思えますが、リラックスとは、緊張から解き放たれた状態であり、自分の中にあるリソースを的確かつ最大限に活用できる集中状態を作り出すベースとなります。
江戸前期を生きた二天一流の創始者、宮本武蔵は『五輪書』水之巻で「兵法の道におゐて、心の持ちようは、常の心に替る事なかれ」と記し、戦いを制するには極限状態でも心中を静かにし、揺るぎない心に集中して平常心を保つことを求めています。
このように、戦いの場面で重視されてきた平常心やリラックスした集中状態。この心身の感覚が鋭敏に働くとされる状態を妨げる要因は何でしょうか。
それは自意識に他なりません。
武蔵が同書で「よい技をしよう、うまく動こうと思うからかえってできなくなる」と示しているように、うまく事が運ばないときに無理やり成功させようと躍起になると、よからぬ事を引き寄せる結果になります。
このような自意識は、恐れから生まれます。恐れには、何かを失う恐れ、失敗する恐れなど様々ありますが、恐れは不安感や猜疑心を育て、過度の緊張状態を生み出し、私たちが本来もつ力を封じてしまいます。
宇宙を治める自然の法則に身を委ねる
とはいえ、過度の緊張状態に陥ったり、結果を急いで浮き足立つことは誰にでもあります。そのような時わたしは、宇宙を治める自然の法則に身を委ねることにしています。
以前このブログでご紹介した本『原因と結果の法則』の中にある、「この宇宙を動かしているのは、混乱ではなく秩序です」というジェームズ・アレン(James Allen)の世界観。私は日々の生活の中で、この考え方を習慣として実践しています。
何かに身を委ねる行為により、自らをコントロールしようとする自我を取り除くと、心が穏やかになります。心が平和になると、自分の内側に集中力が高まっていくのを感じます。このようなリラックスした集中状態で物事に取り組むと、不思議に自分の能力を超えた力が発揮できるようになります。
自意識を弱めて自然と調和すると、何か不都合なことが起こった時でも自分の思いに捕われることなく、大局的かつ的確な物事への対処が可能となります。一方、現在起こっている困難なことも、自分の望まない状況も、長い目で見れば飛躍へのチャンスなのかもしれません。それ故に問題解決への希望を失うことなく、ポジティブに思考し、行動することが大切になります。これらの体験の積み重ねは、不測な事態における問題解決への自信につながり、学習効果を高めます。
加速学習分野の世界的権威であるポール・シーリィ(Paul Scheele)は、リラックスした集中状態を得る方法として「タンジェリン・テクニック」を紹介しています。その方法とは頭上30センチあたりにみかんを思い浮かべるというシンプルなもの。
ここに意識を持っていくと、適度に弛緩した集中状態が得られるというのです。この方法が有効なのは、「メタ(Meta:より高次の、?を超えて)」のレベルつまり高次元から物事を認知できるからではないかと私は解釈しています。「メタ認知」については後日このブログでお話したいと思います。
組織体のトップやクライアントに、危機的状況にある時にも冷静沈着に客観的判断を下して素早く行動することを促す。これは問題解決に向けたソリューションを提供する実務家に常に求められる要件です。それを実現するリラックスした集中状態は、特に危機管理をカバーするパブリック・リレーションズの実務家に求められる心の姿勢であるといえます。
変化の激しい環境にあって、心を平和な状態に保つことは並大抵のことではありませんが、自分なりの方法を見つけて鍛錬してください。不測の事態に万全に備えることはプロフェッショナルとしての当然の責務なのです。
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