パブリック・リレーションズ
2008.06.21
シリコンバレーの空間を日本に〜グローバル・イノベーターズ(GLIN) が始動
こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
以前、グローバルを視座に置いたイノベーションの創出についてこのブログで紹介しました。それを実現させるための組織、グローバル・イノベーターズ合同会社(GLIN)がいよいよ本格的に活動を始めることになりました。
産官学がグローバルなパースペクティブで統合的に連携し事業を推進するGLINは、日本を再生させその発展を通して世界への貢献度を高めていく、思いを共有した各方面で活躍する有志によって昨年12月に設立されました。わかりやすく言えば、その目的は日本にシリコンバレーの空間を創りだすことです。GLINには、さまざまな分野で第一線の個人や企業がかかわっています。
GLINのユニークな理念と事業概要
GLINの理念は、爆発的な進展を見るグローバル社会にあって、地球を持続させる上で不可欠の科学技術の重要性を認識し、内外の優れた技術シーズを発掘、その技術の事業化から市場展開を実現する専門家の活動の場を設定することで、日本と世界の経済社会の発展に寄与することにあります。
代表社員には、松田岩夫(参議院議員:前科学技術政策・IT担当大臣)さんが就任。GLINのコンセプトは、松田さんが20年にわたる通産官僚経験と25年にわたる政治家経験の末に辿りついたもので、日本の弱点となっているイノベーションとグローバルが基盤。
具体的には産官学が連携をとり、グローバル市場で戦える技術の発掘と企業の育成にあります。参加メンバーは、社員(株主)で顧問の日本IBM最高顧問の北城挌太郎さん、同じく堀場製作所創業者で同社最高顧問の堀場雅夫さんをはじめ、ngi group社長の小池聡さん、元コンパック日本法人社長で現在ベンチャー・キャピタル(VC)事業を運営する村井勝さん、同じく日本オラクル初代社長をつとめ、現在VCのサンブリッジ会長をつとめるアレン・マイナーさん、世界最大の半導体製造装置メーカー、アプライド・マテリアルズ本社上席副社長で日本法人会長をやっておられた岩?哲夫(現IMA会長)さんなど40名ほど。これらの中には、元通産省官僚で法曹界やビジネス界で活躍する人、会計士や著名な大学教授、そして日本人でシリコンバレーやボストンのビジネスの第一線で活躍し、成功を収めたベンチャー・キャピタリストや企業経営者もいます。いずれもプロフェショナルで厳しいグローバル競争を生き抜き、崩れゆく日本を何とかしたいと考えている人ばかり。
グローバル・イノベーターズの事業は大きく4つに分けられています。1つは、ベンチャー・キャピタル(VC)事業、2つ目は、テクノロジー・トランスファー(TT)事業、3つ目は、グローバル・マーケティング(GM)事業、そして最後の4つ目は、メンバーシップ事業です。
(詳しくは:www.g-innovators.com)
GLINは先日2つのVCファンド創設を発表しました。1つは、世界的なイノベーションを目指す画期的なVCファンドとなる「GLINファンド」です。2つ目は、ngi group株式会社との共同による「GLIN‐ngiエンジェルファンド」。この共同ファンドは、平成20年度に制度が拡充されたいわゆる「エンジェル税制」を活用する認定ファンド。
この中で「GLINファンド」は、同社の理念に基づき、世界の研究開発動向を分析し、新たな産業として発展する見込みのある領域を絞り込み、国内外の大学、研究機関などで該当する革新的技術の探索を行い、その事業化のための起業を主導するためGLIN 自らが運営主体となって創設するというもの。事業化を目指す革新的技術の発掘は、特別に構成された「探索会議」の助言を得て行います。そして事業化と起業支援についても、VB育成に豊富な経験・能力を有するプロフェッショナルが、長期的戦略をベースに発案から市場展開までの各過程において、直接かつ積極的に経営に参画する仕組みになっています。
技術的バックグラウンドとしてのGLINの特色は、「探索会議」にあります。
吉川弘之氏(産業技術総合研究所理事長)を議長に高度な知見と専門性をもつ委員として小宮山宏氏(東京大学総長)、末松安晴氏(東工大元学長、国立情報学研究所顧問)、中辻憲夫氏(京都大学物質・細胞統合システム拠点長)、審良静男氏(大阪大学免疫学フロンティア研究センター拠点長)、井上明久氏(東北大学総長)、岸輝雄氏(物質・材料研究機構理事長)が参画し、向こう数十年にわたる技術動向を視野に、統合的な探索を行うものです。
ちなみに私は、業務執行社員として、グローバル・マーケティング事業部門でビジネス案件の発掘とパブリック・リレーションズ(PR)が責任。現在約20件の案件を扱っています。
画期的なエンジェル税制
日本経済新聞は6月4日付け朝刊の一面で、今年の4月1日から、新たにエンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)が制定されたことを報じました。エンジェル税制とは、ベンチャー企業への投資を促進するためにベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度。具体的には、ベンチャー企業(設立3年未満)への投資額をその年の総所得金額等から控除できる制度です。
このエンジェル税制は、GLINの社員・顧問でもある北城さんが経済同友会代表幹事時代に松田さんたちと一緒になって奔走し実現させた画期的な制度。おおざっぱにいえば、控除対象となる投資額の上限は、総所得金額の40%か1千万円のいずれか低いほうですが、これにより起業したばかりのリスク性の高いベンチャー企業への投資が増大し、将来大企業に成長する企業の誕生が大いに期待されます。
前にも述べたように、GLINのもう1つのファンド、「GLIN‐ngiエンジェルファンド」はこの制度を活用した認定ファンド。日本においてはリスクマネーの供給が困難とされる創業初期のベンチャー企業に対して、個人がリスクを負って成長に必要な資金を提供することを可能とします。ちなみに、GLINの業務執行社員の一人でもある小池さんの率いるngi groupは、これまでmixiやインターネット関連事業分野で数多くの革新的なベンチャー企業の育成を手がけてきた企業。
シリコンバレーが世界的に有名になって30年経過します。シリコンバレーの特徴は、スタンフォード大学に代表される学問的・技術的な裏づけと豊富なベンチャー・キャピタル、起業精神に満ちた若い有意な人材、豊富な企業経験者、法律、会計に精通する専門家、そして数多くのパブリック・リレーションズ(PR)の実務家に支えられて全体の環境を作り上げています。
GLINも、組織内にそうしたシリコンバレー的な環境を創出したいと考えています。日本経済はこのところ精彩を欠きません。経済の凋落は社会をも不安定にしています。私たちは、崩れゆく日本の現状をどうしても転換させなければなりません。GLINは松田代表の思いと全社員の思いが一つになって実現した組織といえます。
皆さんのGLINへの温かいご支援を心よりお願い申し上げます。