パブリック・リレーションズ

2008.09.13

『体系パブリック・リレーションズ』発売開始〜エフェクティブ・パブリック・リレーションズ日本語版

『体系パブリック・リレーションズ』こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?

米国で、パブリック・リレーションズのバイブルといわれているエフェクティブ・パブリック・リレーションズ(Effective Public Relations:EPR)の日本語版(写真)がようやく完成しました。

邦題は『体系パブリック・リレーションズ』(日本広報学会・監修、ピアソン・エデュケーション、568頁)。本ブログ8月2日号にもご紹介したように、1952年の初版刊行以来、半世紀以上にわたりロングセラーを続けるEPR。その2006年発行の第9版の日本語版がこのたび完成し、全国大手書店で発売が開始されました。

本書は全体が4部17章で構成され、その内容はどの章もパブリック・リレーションズに関わる私たちにとって、PR戦略を新たに構築したり見直すうえで示唆に富んでいます。

私も6名の訳者の一人として、3つの章(第3章:組織体構築と第7章:理論的基盤・調整と適応、第16章:政府とパブリック・アフェアーズ)を担当しました。

トヨタ張会長の鮮烈なメッセージ

「トヨタ自動車に入社して最初の配属先で担当したのが、パブリック・リレーションズでした」。冒頭、目に入ってきたのは、日本広報学会会長でトヨタ自動車会長の張富士夫さんの推薦の言葉です。

張さんは、米国駐在時には組織体として企業市民の考え方やマスメディアへの対応、労使関係のコミュニケーション、そしてコミュニティの中での企業のあり方など現地体験を通してパブリック・リレーションズを学び習得されたようです。

またその言葉の中で、「組織体として倫理観をベースに経営者の立場でステークホルダーといかに双方向のコミュニケーションができるかを常に考えてきたことは、まさにパブリック・リレーションズそのものであり、マネジメントの一角をなすものです。」と、経営者にとってパブリック・リレーションズの重要性を強調すると共に、その位置づけを行っています。

2年がかりの翻訳作業

本書の訳者は、私のほかに、井上邦夫さん(東洋大学経営学部准教授)、伊吹勇亮さん(長岡大学産業経営学部専任講師)、北村秀実さん(関西学院大学経営戦略研究科特任准教授)関谷直也さん(東洋大学社会学部専任講師)、矢野充彦さん(グリーンヒル研究所代表、麻布大学兼任講師)の計6名。そしてワーキング・グループには、全体の用語や表現の統一など実質的な監修に尽力した皆見剛さん(井之上パブリックリレーションズ常務取締役)、矢野充彦さん(同上)、五十嵐正毅さん(早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程)の3名。

偶然なことですが、私が最初の原稿(第1章)に取り掛かったのは、ちょうど2年前の2006年9月中旬。米国での調査研究のために、オットー・ラビンジャー(ボストン大学名誉教授)やジェームス・グルーニッグ(メリーランド州立大学名誉教授)、そしていまや唯一現存する、本書原作者の一人であるグレン・ブルーム(サンディエゴ州立大学名誉教授)さん達と面談し、日本に帰国する飛行機の中でした。

パブリック・リレーションズ(PR)はあらゆる個人や組織体で活用されるものですが、体系パブリック・リレーションズは実務家、研究者、学生にとどまらず組織体の経営者にも読んでいただきたい本です。価格は8500円+税ですが、これから皆さんを強化する武器として考えれば、パブリック・リレーションズの幅の広さと奥行きの深さを具体的に味わうこともでき安い投資となるはずです。

これまでパブリック・リレーションズに適当な日本語訳は見つかっていません。あえていうならば、私は「戦略広報」がふさわしいと考えています。日本の企業体では近年、広報部門でコーポレート・コミュニケーションが用語として使われていますが、本書の33頁にも示されているように、パブリック・リレーションズの概念や職務は企業体におけるコーポレート・コミュニケーション(企業広報)の概念と同じであることがよく理解できます。

仕事の合間、休みを返上し莫大な時間を使ってそれぞれの役割を果たされた本プロジェクトにかかわった皆さん、本当にごくろうさまでした。とりわけ基本文献プロジェクト主査として全体の進行役を務め、プロジェクトの責任を果たされた矢野充彦さん、ありがとうございました。

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