時事問題
2011.09.05
野田内閣誕生 〜国際社会の目と代表選挙の在り方
こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
民主党の野田新政権が誕生しました。排除から融和へ大きく舵取りを行った野田内閣は9月2日に発足。
結党の精神に戻り、決戦投票では党内融和をはかり出直すことを同僚議員に訴えたことが奏功し今回の選出となりました。
これに先立つ8月29日、過去最多の5人の議員(前原・馬淵・海江田・野田・鹿野各氏)により争われた民主党代表選挙は、最終的に海江田、野田両氏による決戦投票の結果、野田佳彦氏が新党首に選出され、30日に国会で菅首相に代わり第95代新首相に指名されました。
民主党が政権を担当して3人目の代表で首相となったわけですが、政党支持率調査でも予想外の60%前後を示し、ダッチロールを続けていた民主党が、さまざまな学習をした結果その効果が現れてきたものと考えられます。
国際社会で失う信頼
9月1日の朝日新聞朝刊では、「毎年違う首脳が演説・・・日本だけ」とする見出しで日本の首相の頻繁な交代について報じています。
国連総会の首相演説では、193の加盟国でほとんどの国が毎年秋の国連総会の一般討論で演説する中、国家元首や政府首脳が3年続けて演説した国が約40カ国あったものの顔ぶれが変わったのは日本だけとし、「肩書きは同じなのに演説する人物が毎年異なる国はなかった」としています。
先日ホワイトハウスの報道担当者が、記者から日本の新首相の名前を聞かれて答えられず苦笑いをしていたテレビ映像を見ましたが、実に恥ずかしい思いをしました。
それにしても日本の政権の短命度は際立っています。1987年11月の竹下内閣から2011年9月の野田内閣までの約24年間に実に18名の首相が就任しています。
この間の米国大統領は、レーガン大統領に始まって現在のオバマ大統領で5名。これでは日本が官僚統治国といわれても仕方のないこと。
しかし日本の首相交代が日替わり弁当のように短いのはこの20数年に限ったことではありません。
ちなみに95代の野田首相に至るまでに、1885年の首相誕生から約125年の間で95人の首相が就任(再任含む)。その平均任期は一人1.3年でしかありません。
同じ時期の米国では、1885年のクリーブランド大統領から現在のオバマ大統領まで23名。つまり1代当たりの在任期間が米国は日本の4倍強ということになります。
日本が議会制民主主義のお手本にしている英国でも、首相就任は同じ時期に31名。日本の3倍の在任期間です。まずこの違いを正すことで、官僚主導から真の政治主導のためのインフラストラクチャーを整えることが可能になるものと考えます。
また日本の外交がうまくいかない大きな理由も、交渉相手となる日本の外務大臣の交代頻度の多さから来ているといえます。2009年1月に国務長官に就任したヒラリー・クリントンのカウンターパートとなる日本の外相は、最初の自民党麻生政権下の中曽根弘文外相にはじまり、すでに5名(臨時代理除く、岡田克也、前原誠司、松本剛明、玄葉光一郎氏)を数えています。これでうまくいくはずはありません。
政権与党の代表選挙の在り方
1998年に結党した現在の民主党の代表選挙は、2年に1回、西暦の奇数年の9月末日の任期満了に伴って行われていますが、任期途中の辞任などもあり今回の野田代表は9代目になります。
民主党代表の任期は、任期途中で代表が代わった場合には、新代表は前任者の残任期間を引き継ぐ仕組みとなっているようです。野田代表(総理)の場合、菅首相の退任に伴うもので、代表の任期は来年9月まで。
何事もなければ次の代表選挙の2013年の9月末までの2年間、任期が与えられることになります。
しかし野党時代ならいざ知らず、また諸外国と比べてもあまりにも短い代表任期に対する見直しの声も民主党内にあるようです。政権与党となった民主党では、事実上の総理を選ぶ、「政権与党の代表選」のあり方を考える検討委員会がスタートし、現在議論されています。
日本の政党の代表選挙は少なくとも4年に一回が妥当ではないでしょうか?国民は在任中に政局に走らず、じっくり仕事に取り組んでもらいたいと思っているはずです。
ちなみに自民党の場合、当初は総裁任期を2年と定めスタートしましたが、紆余曲折の後、2002年には任期3年とし現在に至っています。
その自民党にしても、1955年の結党以来正式に総裁が選出された1956年から2009年の谷垣禎一総裁選出までの約54年間で実に24名の総裁が代わっています。
ご存知のように、米国では民主党や共和党などの政党には代表選ともいえる大統領候補選挙が4年に1回。英国、ドイツなどもおおむね4年―5年に1回です。
日本では党の代表や総裁がこれだけ代われば首相も代わらざるを得なくなるわけで、いったいなぜこのような制度がこれまで放置されていたのでしょうか?
日本の政治制度改革と政治風土の変革は喫緊の課題といえます。これらの改革に取り組み、国民や他のステークホルダーの理解を得て速やかで無駄のない行動をとるためには、パブリック・リレーションズ(PR)の力が必要とされます。