時事問題
2010.05.05
「上海万博」開幕に思うこと 〜変化する重層社会中国でどのようにターゲットを捕捉するのか?
こんにちは、井之上喬です。
5月1日に「上海万博」が開幕しました。2008年の北京オリンピックに続く巨大プロジェクト。
246の国・国家機関が参加し、来場者目標は7,000万人(1970年開催の大阪万博は6,400万人)と史上最大規模の万博となる見通し。
国家威信をかけたこの一大イベントは中国政府にとって、1978年に鄧小平により始まった改革開放政策が約30年で結実したことを世界に示す絶好のチャンスです。
約30年前、日本に学ぶことから始まった中国の改革は、鄧小平に始まり、その後、胡耀邦、趙紫陽、江沢民、そして胡錦濤の5人の歴代の指導者によって行われてきました。
しかし日本のメディアは、連日にぎわうこの上海万博を途上国初のイベントとして報道していますが、そのうたい文句には違和感があります。
現在の中国に、共産党一党支配体制による特異な資本主義を見ることができます。今回の上海万博や東京モーター・ショーの19倍のスケールの「北京国際自動車ショー」、そして飛ぶように売れる高級車や豪華マンションなど。
フォーブス誌の保有資産10億ドル以上の「2010年世界の富豪ランキング」では、中国からは日本の22人の3倍近い64人(米国についで2位)がリストアップ。
北京や上海、深圳、広州、天津、大連、そして先週このブログで紹介した蘇州などの主要都市を見る限り、もはや中国が途上国とはいいがたいものがあります。
今や中国は、日本や世界経済に甚大な影響力を持つ国家に成長しました。
しかし中国の特徴は、55の民族が入り乱れながら歴史が形成されてきた重層社会にあるといえます。
広大な領土を持つ多民族国家中国は、極度の地域格差がゆえに、ビジネスでかかわる日本企業はこの重層社会の国で、どのようにターゲットを絞り込み捕捉し続けられるか頭を悩ませています。
マーケティング戦略上、顧客のセグメントや市場動向の把握は当たり前のことですが、中国社会のさまざまな格差やその変化度合は、そのスケールやスピードにおいてこれまで世界のどの国にも見られなかった凄まじいものです。
中国進出企業には、これらの変化を常にアップデートし、目標設定の確認を行う必要がありそうです。
そのためには、刻々変わる市場を正確に捉えるための調査は欠かせません。
そこでは、パブリック・リレーションズ(PR)による戦略構築とターゲットへのメッセージ発信が求められます。
そしてターゲット(市場やさまざまなステーク・ホルダー)からのフィードバックでその変化を捉え、戦略の見直しと修正が繰り返し行われることも求められるでしょう。
上海万博の会期は半年間。さまざまな交流を通して、中国の人びとが世界に目を向け、世界がまた中国を知るきっかけになれば素晴らしいことだと思います。