時事問題
2010.07.15
参議院選挙、民主党大敗 〜唐突な消費税提起が要因
こんにちは井之上 喬です。
昨年の政権交代後初の本格的な国政選挙となった第22回参院選は、皆さんが既にご存知の通り民主が大敗し、参議院で与党は過半数を大きく割り込んでしまいました。獲得議席は、民主44、自民51、みんな10、公明9、共産3、社民2、たちあがれ1、改革1と121議席を分け合うなかで、戦い済んでみれば自民とみんなの躍進がひと際目立つ結果となりました。
選挙戦では、9カ月にわたる民主党政権への評価や消費税率引き上げの是非などが争点となりました。政治と金、消費税、普天間問題など民主党を取り巻く環境は厳しいものがあったものの、改選前の54議席を大きく下回った惨敗振りに同党内で早くも執行部責任を問う声が浮上しています。
がたがたの民主党戦略
今回の民主党の敗因はひとえに、鳩山政権から菅政権への移行過程での党内のごたごたから始まっていると見ることができます。その最たるものが菅首相に始まった国民への10%の消費税提起です。
この問題にはメディアが反応し、消費税10%是認の自民党をはじめ他の野党も一斉に反対姿勢を見せるようになりました。
そして小沢前幹事長も反応、「昨年公約したマニフェストを守るべき」とした同氏の執行部批判が内部混乱を拡大し、メディア報道も併せ有権者には戸惑いを与えました。
つまり選挙戦略がちぐはぐで統合性に欠け、この段階で、民主党の過半数獲得の望みは絶たれたといえます。
大半の選挙結果が判明した12日未明に菅首相は記者会見し、自身の続投表明とともに「私が消費税に触れたことが、やや唐突に伝わった。十分な説明ができていなかった点は反省している」と述べています。
私たちパブリックリレーションズ(PR)の言葉でいうならば、民主党はインターナル・リレーションズ(企業ではエンプロイー・リレーションズともいいます)が欠落していたことが大きな要因であると思います。
企業に例えるならば、社長が極めて重要な経営戦略や事業戦略を役員、幹部社員に十分説明することなく定例記者会見で唐突に発表し、それが報道されて株価が暴落するばかりか、社員や取引き先まで混乱に巻き込むという結果になったといったことでしょうか。
それにしても、もう1人の当事者である小沢前幹事長は今回の選挙をどのように総括し、今後自身の党内におけるポジショニングや9月の党大会に向け、どのような戦略を練っているのでしょうか、気になるところです。
1票の格差が5倍超え
気になるといえば、1票の格差を報じた東京新聞(7/7夕刊)の記事。2007年の参院選の際に選挙区間の1票の格差(前回は最大格差4.86倍)について最高裁が「大きな不平等」と指摘にもかかわらず、是正されるどころかかえって格差が広がる結果となっています。
東京新聞(7/7夕刊)は、「鳥取県民を1票とすれば、神奈川県民は0.19票(筆者注:すなわち5.01倍の格差)。こんな選挙が正当といえますか」と“一人一票実現国民会議”の関係者の訴えを載せています。
議員1人当たりの有権者数は鳥取県(改選数1)の約48万8,000人に対し神奈川県は約244万3,000人で5.01倍。以下大阪府、兵庫県、北海道、東京都の順で鳥取県との格差が広がります。
仮に有権者1,064万2,000人を抱える東京都を鳥取県換算すると、なんと21.8人の議席が必要となります。
今回の選挙では、国会議員をひとりも持たない不利な状態からスタートした新党があります。そのひとつが改革派の首長連合、「日本創新党」です。
党首の山田宏前杉並区長をはじめ中田宏前横浜市長や斉藤弘前山形県知事らは地方行政で財政建直しの実績をもち、いずれも若くて実行力に富む候補者でしたが、選挙期間中のメディアとりわけTVの報道規制もあり、結果的に当選者を出すことはできませんでした。
もし1票の格差が是正され、東京都の定員が増えていれば、東京選挙区から出馬した山田候補は当選していた可能性もあります。
菅首相がインターナル・リレーションズにもっと気を使っていたら、1票の格差が是正されていたら、またネット選挙が本格的に解禁されていたらなどなど、いつも以上にさまざまなことを感じさせられた選挙戦でもありました。