時事問題
2010.08.09
65年目の広島、長崎 〜核戦争の恐怖を訴えることのできる唯一の国
こんにちは井之上 喬です。
早いもので8月、葉月です。
Wikipediaによると、葉月の由来は諸説あるようで、木の葉が紅葉して落ちる月「葉落ち月」「葉月」であるという説から、稲の穂が張る「穂張り月(ほはりづき)」という説や、雁が初めて来る「初来月(はつきづき)」とする説。そして南方からの台風が多く来る「南風月(はえづき)」といった説など諸説があるようです。
季節の移り変わりは日本の自然の美しさの源泉、そして日本文化の基礎ですから先人の感性に触れる機会はなくしたくないものです。
国連事務総長、米国駐日大使などが初参加
毎年のことですが盛夏の8月に思い起こすのは戦争と平和のことです。
6日には広島に、そして9日には長崎に原子爆弾が投下された原爆の日を迎えます。
被爆後65年を迎えた今年は、広島での平和祈念式典には初めて国連の潘事務総長、原爆投下国の米国のルース駐日大使。また核を保有する英国のフィッツトン駐日臨時大使、フランスのプノー駐日臨時大使が参列しました。
本日9日に行われた長崎での式典にも、初参加となる英・仏・イスラエルの代表を含め32カ国が出席しました。
この背景には、米国オバマ大統領が昨年4月にプラハで掲げた「核なき世界」の実現に向けた世界各国の機運が高まっていると見ることもできます。
広島で潘国連事務総長は、「核兵器が存在する限り、私たちは核の影におびえて暮らすことになる。核兵器のない世界という夢を実現しましょう」と世界に呼び掛けました。
しかし、現実に目を向けると地球上には現在2万発を超える核兵器が存在するといわれており、今回の広島の平和記念式典への米国駐日大使の参列に対して、米国内で謝罪は無用との批判もあるようです。
広島、長崎に原爆を投下したことで第2次世界大戦の終戦を早め、多くの命を救えた、とする考えが米国内に根強い歴史観として存在しているのも事実です。
パブリック・リレーションズ(PR)先進国の米国のこと、悪魔の爆弾といわれる原爆で多くの無辜(むこ)の市民をも巻き添えにした良心の呵責から、その正当性をPR技法を使い徹底して国民や国際社会に訴えたとしても不思議ではありません。
一方、この核なき世界を目指す国際的な機運の高まりは、唯一の被爆国である日本にとって主導的役割を果たす絶好の機会でもあります。
日本政府は今こそ菅首相を筆頭に、核なき世界の実現に向け主導的役割を担う時だと思います。そのためにはパブリック・リレーションズ手法を駆使し、いま核の傘にある日本が今後どのように国際社会に訴えていくのか、その戦略が求められています。
日本政府は世界平和の動きに敏感な対応を
広島原爆の日の前日である8月5日の日本経済新聞朝刊に「クラスター弾の全廃をめざせ」という社説がありました。
核兵器のような非人道的な大量破壊兵器とされる、クラスター爆弾の使用や製造を禁止する国際条約に108カ国が署名し、日本を含む38カ国が締結し条約が発効したとする内容でした。
社説によると今回の禁止条約は、クラスター爆弾廃絶を求めるNGO、ノルウェー政府や有志国が中心となり3年半で発効にこぎつけたとのこと。
その意義は大きいと思いますが、禁止条約には米国、ロシア、中国、イスラエル、インドなどが未加盟で、非加盟国のクラスター爆弾の保有数は世界全体の80%から90%に上るとの見方も出ているようです。
11月には第1回の締結国会議が開催予定。日本政府は米国やロシアなどに早期の条約締結を求めるべきである、と社説は訴えています。
終戦から65年、平和ボケといわれ続けるニッポン。戦争のない世界を実現するために国民一人ひとりが考え、それぞれの立場で実行することが必要だと思います。
パブリック・リレーションズはこうした動きを加速させることができます。
いつの時代も戦争は、規模の大小を問わず、子供や女性、お年寄りなど弱者をも巻き込み多くの犠牲を伴います。
私は小学校2年(昭和27年)ごろ、広島の爆心地に近いところに1年ほど住んでいました。クラスの友達にケロイド症の人が何人かいましたが、彼らはいまどうしているでしょうか。
暑い夏のこの貴重なひと時、原爆犠牲者に思いをはせ平和について改めて考えてみたいと思いました。