時事問題

2010.03.22

日本が絶滅危惧種にならないためには? 〜ガラパゴス化はまだましか

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

東京の桜のつぼみもかなり膨らんできました。会社近くの新宿御苑の桜の開花も間もなくです。
グローバル市場が急速に拡大する一方で、日本国内の市場は長期にわたる停滞で縮み傾向を強めています。これまで世界第2の経済大国として国内市場を見据えビジネスをしてきた多くの日本企業にとって、従来のやり方ではもはや生き残れなくなってきています。

そのよい例が携帯電話。インターネットを介したさまざまなサービスが国境を越えて提供される時代に、日本の携帯電話業界はガラパゴス化と揶揄されるような日本固有の規格に固執するあまり国際市場ではマイノリティにとどまっています。

電気自動車で急速充電器の国際標準化の動き

最近は自動車業界に関する報道が多く見られます。トヨタのハイブリッドカー「プリウス」の不具合や急加速問題に始まり、ホンダが発売した2人乗りのスポーツ型ハイブリッドカー「CR-Z」の好調な受注状況、日産自動車のカルロス・ゴーン社長が次世代「マーチ」のタイでの発表。

またタイヤ大手のミシュランの日本国内生産中止や現代自動車の日本での乗用車販売中止の発表など、日本からの撤退ニュースも流れています。

自動車は日本の基幹産業。すそ野が広い業界ゆえに日本経済に及ぼす影響も大きいものがあります。その中でも注目したいのが、電気自動車(EV)の急速充電器の国際標準・規格統一を目指す協議会発足のニュースです。

今月3月15日に発足したのは「CHAdeMO(チャデモ)協議会」。英語の「CHARGE=充電」と「電気のde」そして「MOVE=動く」を組み合わせた造語だそうで、「車の充電をしながらお茶でも」といった意味も含まれているようです。普及に向けて少しおしゃれ気分も入れてみようと考えたネーミングでしょうか?

CHAdeMO協議会は、トヨタ、日産自動車、東京電力、富士重工を幹事会社に本田技研、スズキ、マツダなど乗用車メーカー大手や自動車部品メーカー、ローソン、三菱商事、東芝など国内の流通、電機などの企業に加えABBやボッシュなどの海外メーカー、そしてオブザーバーとして経済産業省など24団体を含めた158社・団体が参加。CHAdeMO は“オールジャパン”として国際標準化をめざして発足したもの。

電気自動車は走行中の二酸化炭素(CO2)の排出量がゼロで、現在のエコカーの主流であるハイブリッドカーを凌ぐエコカーとして位置づけられ、現在は三菱自動車のi-MiEV(アイ・ミューブ)など日本勢が先行していますが、米国GM、日産、ダイムラーなども2010年の市場投入を予定しており、内外企業入り乱れての競争になることが予想されています。

電気自動車普及のための課題は、1回の充電で100Kmから160Kmの距離しか走れないことです。タウンカーとしては十分かもしれませんが、本格的な普及のためには、一回の走行距離を伸ばし、ガソリンスタンドのように街中に充電インフラを整備することは必須となります。

それも現在のような200Vの電源で、フル充電するのに約7時間もかかるようなシステムではなく、今回の急速充電器のように30分程度で電池容量の80%程度まで急速充電できるような急速充電システムが必要となってきます。
このようなシステムが、ガソリンスタンドや高速道路のサービスエリア、コンビニの駐車場などで整備が進めば、電気自動車普及に弾みがつくと期待されているのです。

新産業創出に国家的な取り組みを

この取り組みは、鳩山首相が表明しているCO2の25%削減目標達成のための具体的な方策としても、海外にも大きくアピールできる点でも大いに注目されています。しかし、技術的にどんなに世界をリードしていても、それが世界標準になると限らないことは、前述の携帯電話をはじめ、さまざまな分野でこれまで日本が悔しい思いをし、経験してきたことです。

今回の急速充電器についても、ジャパン方式が国際標準になれば日本メーカーにとっては新たなビジネスを拡大するうえで圧倒的優位に立てます。しかし一方では、ドイツのダイムラー、米国のGM、フォードなどもそれぞれの方式で標準化を目指しており、国際標準化機構(ISO)などでも規格統一、標準化に関する議論が始まっています。

特に欧州と米国の動きには、過去の経験からみても注視すべきだと考えます。いかに技術が優れていてもスタンダードを勝ち取らなければ、新しいビジネス、巨大産業の創出は困難です。これからは技術的優位性と必要性をアピールする啓発活動やロビー活動を含めたパブリック・リレーションズ(PR)活動が重要になってきます。このような場合、広告で目的達成することには手法や費用の面から見ても無理があります。

前述のように、日本市場だけのビジネスで採算がとれていた時代は良いのですが、これからはそうはいきません。携帯電話でも日本型の高機能化追求よりもiPhoneのようなスマートフォンによる高機能化やさまざまなフリーのサービス提供モデルは、あっという間に大きなうねりとして日本にも上陸。

さらには中国やインドでもこの流れは加速し世界規模の大きなビジネスになっていますが、ここでも日本メーカーはこれまでの経験や技術力を生かせず苦戦しています。

こうしてみると電気自動車の急速充電器の世界標準化の動きは、単に一つの産業界の話ではないことが分かるはずです。世界規模の新しい産業、ビジネスを創出するうえで日本がどのような役割を果たしていけるかの試金石になるのではないでしょうか。

日本はこれまで、ものづくりで世界をリードしてきました。しかしどんなに良い技術、製品でも消費者に受け入れられないような技術や製品はビジネスとしては成り立ちません。これからは世界中の消費者に向けてものづくり技術とそれを生かしたサービス、そのインフラも含めてシステムとして提案していく必要があると思うのです。

特に、グリーン・エネルギーや新幹線、リニア・モーターなど輸送システムの海外進出、先端医療、安全性の高い原子力など、将来1億3千万人の国民を食べさせていくことができるような有望な産業を育てていくには、政府主導の産学官連携がこれまで以上に重要になってきます。

優れた技術を基盤に、ある国向けには少しデザイン自体を変える、またある国向けにはサービス内容に工夫を加えるなど、よりきめ細やかなビジネス戦略が必要になってきます。いまの日本企業・日本人にはまだそれができる基盤があるはずです。いま日本に最も求められているのは、“世界一じゃないといけないのですか?”ではなく、“世界一を目指しましょう”の精神で、政府が先頭に立って旗を振ることだと思うのです。

目的達成のために企業トップが自ら語り、グローバル市場での成功を得るために、日本企業にはいまこそPRを戦略的に駆使することが求められています。さまざまなパブリックやステークホルダーとのリレーションシップ・マネジメント(良好な関係性の維持)であるパブリック・リレーションズ(PR)は不可欠な手法なのです。

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