時事問題

2009.11.16

オバマ大統領初来日 〜パブリック・リレーションズの視点

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

オバマ米国大統領が11月13日、大統領就任後初のアジア歴訪の最初の国として日本を訪問しました。テキサス陸軍基地での銃乱射事件の追悼式出席で来日が遅れたことにより、14日から始まるシンガポールで開催のアジア太平洋経済協力会議(APEC)初日の首脳会議を欠席しての来日。日程は一週間で、日本の後はシンガポール、中国、韓国を訪問する予定です。

13日は鳩山首相との首脳会談。翌日の14日はサントリーホールで約1500名の出席者を前にアジア外交の基本政策について演説を行いました。世界で成長著しいアジア地域で中国の国際的影響力が増大する中、影響力低下がみられる米国は、オバマ大統領のアジア訪問の最初の地東京で「米国はアジア太平洋諸国の一つ」であることを内外に強く示しました。

アジア外交の中核:日米関係

鳩山首相とオバマ大統領の会談は今回で2回目。9月に国連総会出席のために訪れたニューヨーク以来。予定より長い、約一時間半にわたった会談で両首脳は共同記者会見を行ないました。

この中で首相は日米同盟について、「日本外交にとってすべての礎。世界環境の変化によって、深化させ、建設的で未来志向の日米同盟を作りたい」と述べています。一方大統領は、「日米同盟は、アジア太平洋地域の安定と繁栄のための基軸。日米は対等なパートナー」であることを強調。民主主義を共有する両国の関係維持こそが地域の安定・繁栄にとって不可欠であることを宣言しています。

共同会見では主に次のことが確認されました。まず、2010年の日米安全保障条約改定50年に向け、同盟深化のための新たな協議を開始。また、米軍普天間飛行場移転問題では、鳩山首相は早期解決を表明。閣僚級作業部会を設け協議に入る。次に両首脳は「核兵器のない世界」を長期的視野にたって目指すことで一致。大統領は、広島、長崎両市への訪問について、将来訪問できたら「非常に名誉なことだ」と語っています。そして温室効果ガス問題については、2050年までに80%削減することで合意。

戦後60年以上経た日米関係。米ソ冷戦時代に締結された日米安保が、新しい21世紀のグローバル・ビレッジにふさわしい、世界平和に根差した地域の安全保障に変わることが期待されています。日米安保条約の見直しの必要性については、とくに政権交代後の米国でも論じられてきていること。

鳩山首相は就任後繰り返し、「対等な日米関係」を強調しています。日本の国益保持にとどまらず、世界平和と繁栄のためにどのような指導力を日本は発揮するのか、日米関係は時代の変化に合った同盟を強化する方向で一致しているものの、今後双方の新政権によるたゆまない対話と努力が求められるところです。

民主主義国家では、政権交代は重要な意味を持ちます。国民の支持を得た新政権が、新しい政策を打ち出すことに相手方は異論をはさむことはできません。それが民主主義のルールだと思うのです。民主主義は米国が世界に誇るもの。同じ民主主義を共有する、英国やフランス、ドイツは米国にどのように対応しているでしょうか。日本の政府には、惑わされることなく、自らの政策を明確に打ち出すことが求められています。

東京でアジア政策演説

オバマ来日に先立つ9日(ワシントン時間)、アジア歴訪の最初の訪問国に日本を選んだオバマ大統領はAPEC初日を欠席し、東京でアジア政策演説を行うことを報じています(NIKKEI NET:11/12 23:45)。

来日翌14日、サントリーホールでの演説には、各方面から招待されたさまざまな顔が見られました。11月14日の朝日新聞夕刊には、これら招待客の一部が紹介されていましたが、被爆地長崎市長や沖縄宣野湾市長、福井県小浜市長、拉致被害者家族、俳優、学者そして学生や子供などその顔ぶれは多彩。多くの招待者がそのスピーチに感銘を受けたことを報じています。

大統領就任演説もそうであったように、パブリック・リレーションズ(PR)の視点でオバマ大統領のスピーチを分析すると、実に多くのパブリックに対してメッセージを送っていることが改めてわかります。そしてその後の報道内容を分析することで、双方向性を担保していることです。彼のスピーチに共通するものは、どのような民族や文化そして政治環境にあっても人間の尊厳を常に重視していることです。

オバマ大統領が日本との関係で触れたことの中で、とりわけ私に強いインパクトを与えたのは、環境問題解決のために、環境技術で世界の最先端を走る日本との協働を真剣に呼び掛けていたことです。日本はこの分野を成長戦略の主柱に据え、政府、産業界、国民が一丸となって、一日も早く戦略的な取り組みを行うことが明日の日本の確実な繁栄を保証するものであると私は考えています。今世界は技術開発に向かって一斉に走り出しています。時間的な猶予はないのです。

米国の力が相対的に弱体化する中で、一つ対応を間違えると世界は危険な方向へ進みかねません。その中でキーワードは「民主主義」であるといえます。双方向性を持つパブリック・リレーションズは民主主義社会の中でしか生きていけません。絶対主義のなかではプロパガンダになるからです。

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