時事問題

2009.10.19

鳩山政権発足一カ月 〜変革への試練

こんにちは、井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?

国民の圧倒的多数で総選挙に勝利し、9月16日に誕生した鳩山政権が今月16日で一カ月を迎えました。60-70%の高い支持率を維持しながら国民の期待を背負う、鳩山政権の概観が見えてきました。新政権が早急に手をつけるべき課題は何かが見えてきた一カ月でもありました。

それにしても今回の政権交代が、明治維新以来の「革命」や戦後のGHQによる制度改革に匹敵するとも言われるゆえんは、バブル崩壊後の長引く不況と未曽有の経済危機で、自民党一党独裁に対する国民の意識が大転換したことによるものとされています。

試行錯誤

鳩山由紀夫首相は就任早々、国会での所信表明をまたず、国連演説で「温室効果ガスを2020年までに90年比で25%削減する」とする方針表明を行いました。加えて核廃絶・非核三原則堅持などの発言は、国際社会から熱い拍手で歓迎されました。

新政権が世界に存在感を示したのは主に外交面。国連演説やピッツバーグでの20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)に出席。早々と中、米、韓、露などの首脳と会談を行い、一定の成果を上げています。岡田外相とのコンビネーションにより、これまでの官僚主導に頼らない外交を進めようとしている点も評価されているようです。

一方、国内では、就任した閣僚がそれぞれ個性的な動きを見せています。前原国土交通相は、八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の建設中止表明や民間人を登用したJAL再生タスクフォースの設置。また日本の成長戦略を支えるであろう、羽田空港の国際ハブ化表明。原口総務大臣は地域主権や番組内容への不当介入防止のためのFCC(米連邦通信委員会)的な組織(通信・放送委員会)の設置検討など、矢継ぎ早の政策を発表しています。

しかし地元民や県知事からの反対や来年度の予算案概算要求などの折衝で、担当大臣関の齟齬が見られるなど試行錯誤を繰り返しています。また最近、鳩山首相が指導力を発揮する場面が少ないせいなのか、改めて懸念させられるのは首相直属で総合調整をはかるはずだった「国家戦略局」の姿がいまだに明確になっていないことです。

現実には菅直人副総理兼国家戦略相が担当する戦略局は一体何をするのか不明の状態が続いています。菅副総理の仕事は企業でいえば「経営企画室」で、企業の中枢で戦略構築を行う重要な役割を担う部署。

国家戦略室をめぐっては、まず権限をより強化し、各省庁への指揮命令を直接行うことを可能にするための国家戦略「局」への格上げが目的とされています。「国家戦略局」設置法案は、来春の通常国会で提出される見通しとなっていますが、そこで具体的に何を行うのか国民の関心は高まっています。

赤字国債増発か公約の修正か?

10月17日朝刊の朝日新聞社説では、10年度の「概算要求の総額を今年度当初予算の88.5兆円以下に抑えるよう指示していたものが、ふたを開ければ95兆円にものぼった」と政権公約実現のために各省庁が盛り込んだ数字が過去最大としています。翌18日、仙谷由人行政刷新相は、10年度予算概算要求が09年度当初予算(約88兆5000億円)に比べ、約6兆5000億円上回ったことに対して、現在の95兆強の概算要求額を92兆程度に圧縮することを表明しています。

経済危機で歳入も当初見込まれた46兆円から40兆円を割り込むことも予想される中、マニフェスト(選挙公約)に掲げられた項目すべてを実施することに無理が生じています。赤字国債増発への舵切りを行ってでも100%成功させようと考えるのか、将来の負担を和らげるために公約の修正を行うのか、いま新政権は難しい判断を迫られています。

そんな中の16日、米政府が2009年会計年度(08年10月?09年9月)の財政赤字が1兆4170億ドル(約129兆円)で史上初めて1兆ドルの大台に乗ったと発表。その赤字幅は対前年度比で約3倍強に膨らみ、国内総生産(GDP)の10%にも及んでいます。
米国の巨大赤字は、昨年9月のリーマン・ショックに端を発した未曽有の金融危機や戦後最長の景気後退に対処するために導入した金融安定化策や景気対策に伴った大規模な経済対策の実施に加え、 所得・法人税減少で歳入が縮小したことによるとされています。

日本に限らず、舵とりが極めて難しい中での改革には時間と痛みが伴います。弱者を保護しつつ成長戦略を描くことで国民に希望を持たせることは政治の役割であるといえます。

いま国民やメディアには忍耐が求められているのかもしれません。国家予算を新しく政権を担った側(これまで野党として政府に十分なアクセスできなかった)が、わずか一カ月でパーフェクトに現状把握し組み立てることが簡単ではないことは明白です。

大切なことは、パブリック・リレーションズ(PR)の手法を駆使し、プロセスを明らかにし、きめ細かなフィードバックで状況把握を行い、さまざまなパブリックに情報を発信することです。そういえば、選挙戦であれほど叫ばれていた霞が関の「埋蔵金」は見つかったのでしょうか?

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