時事問題

2008.07.12

洞爺湖G8サミットに学ぶもの 〜クリーン・エネルギーを今すぐ

こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?

7月7日から3日間にわたって開催された、「北海道洞爺湖G8サミット」が閉幕しました。主要8カ国(G8)に、新興国などあわせた過去最多の22カ国の首脳が集まったサミットは、世界で頻発する異常気象や食料危機を受けた地球・環境サミットとなりました。G8の枠組みが、この様な地球規模の課題に十分に対応できるのかが問われたサミットでもあったといえます。

あぶりだされたのは先進国と途上国との間のギャップ。最終日の9日、G8に中国、インド、ブラジルなど新興国8カ国を加えた主要排出国会議(MEM)では、G8が掲げた「50年まで温室効果ガス排出量を半減」とする長期目標に賛同した国は、韓国、オーストラリア、インドネシアの3カ国。その他の新興国の多くの反応は、「現在の温暖化をもたらしたのは先進国」とこの提案を受け入れず、先進国の「過去責任」と自らの「成長する権利」を重ねて強調しました。

脱石油と代替エネルギー、

地球温暖化の元凶は石油エネルギーに代表される化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)。石油価格の高騰と異常気象による食糧危機は、石油資源や外貨の乏しい、アフリカ、アジアの途上国へ計り知れない打撃を与えています。危機的状態は途上国に限らず、先進国にも、急激なコスト高によるインフレ不況が蔓延する恐れもはらんでいます。

人類がエネルギーを初めて利用するようになったのは、50万年前の「火」の発見に始まります。1万年前には農耕、牧畜による「牛馬」の利用、さらには「風力や水力」などの自然エネルギーが活用されます。16世紀には「石炭」が登場。やがて19世紀中ごろ、米国で石油採掘技術の開発による「石油」の大量生産が開始。1950年代、中東やアフリカでの相次ぐ大油田の発見とともに、エネルギーの主役は石炭から石油へと変わりました。大量生産による安価な石油はエネルギー革命をもたらし、あらゆる動力源となっていきます。

1970年代の2度にわたる石油ショックは、世界中にエネルギー不安をもたらし、当時石油依存度70%超の日本も、単一エネルギーである石油への依存を減らすために原子力や天然ガスなどの代替エネルギーの導入を始めます。最近では、太陽光エネルギー、風力エネルギー、エタノールに代表されるバイオ燃料などの利用も進んでいるものの、政策不在で民間ベースの開発スピードは決して速くないのが現状です。

一方、世界の人口増加はエネルギー問題にも深刻な問題を投げかけています。1830年の10億人から、1930年は倍の20億人。1980年には44億人、2003年には62億人。そして、今世紀半ばの世界人口は90億人以上に達すると予測されています。将来途上国が発展し、1人当たりのエネルギー消費量が先進国と並ぶようになったとき、世界のエネルギー消費量がどのくらいになるのか、考えるだけでも気が遠くなります。

現在、大気中への二酸化炭素(CO2)の放出は自然が吸収する量の2倍を超えているといわれています。化石燃料を燃やし続けた「つけ」は、北極海の氷の消滅や氷河崩落など、生態系にも深刻な影響を与え、石油・石炭に代わる代替エネルギーの開発はまさに、国際社会共通の喫急の課題となっているのです。

日本にとって千載一隅のチャンス

現在日本の石油依存度は、前述の70%超から、46.5%(ちなみに石炭21.1、天然ガス14.9、原子力11.8、水力3.0、地熱0.1、新エネルギー等2.6各%:いずれもエネ庁2005年度速報値)とその比率を落としているものの、石油価格の上昇は投機の対象ともなりOPECのコントロールさえ不能にしかねない状況にあります。

1998 年末から1999 年初にかけて1バレル、10 ドルを割り込んでいた原油価格は、10年後の現在、1バレル150ドルにせまっています。世界中の投機資金は流入を続け、将来1バレル200ドルまで上昇するとさえいわれています。
石油価格高騰により、従来コスト高だったクリーンな代替エネルギー開発を加速させることができます。日本には、代替エネルギー開発では世界の最先端をいく技術があります。

まさに日本にとって千載一隅のチャンスがあるといえます。このチャンスを生かし、周到な戦略構築を行い、持てるリソースを統合的に投入することによって、将来とてつもない新エネルギー大国になることも夢ではありません。戦後日本の奇跡的な発展は、国民の意思が一丸となって一つの目的に向かって突き進んだからです。

これまで日本は数々の逆境を克服してきました。日本の公害技術や省エネ技術は世界一。GDP1人当たりの1次エネルギー供給におけるエネルギー効率は、日本を1.0とするとドイツは2.41、米国2.08、英国、フランスそれぞれ1.43、1.36とその省エネ率は極めて高い水準にあります(資源エネルギー庁エネルギー白書2006版)。

埋蔵資源に頼ることのない、クリーンな再生可能なエネルギーは最終的には太陽光、風力、バイオマス、水素エネルギーと絞り込まれてきます。多くの科学者は、この中でも将来最も有望なのが水素エネルギーだと考えています。

水素は水から電気分解して抽出する方法と、ガス(天然ガス、プロパンガスなど)からつくり出す方法があります。いずれもその生産において技術的には解決されているようです。酸素と化学反応してエネルギーを発生させる水素。私の関心は水素エネルギーの開発・実用化です。無尽蔵な海水から得る製法は大いに期待できるものです。

聖書に「新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れねばならない」(ルカ5-38)とあるように、「新しいことを始める時には、新しい枠組み」が必要です。そして何事もそうですが、新しいことを行うにはパブリック・アクセプタンスが重要となります。国民の理解と受容なしに進めることは困難を極めます。それらを支援するのがパブリック・リレーションズ(PR)の役割でもあります。

以前このブログ(08年1月4日号「岐路に立つ世界」)でも、PRパーソンにできることがあることをお話ししました。あれからわずか6か月、情勢は悪化の一途をたどっています。私たちは、次の地球を生きる私たちの子孫のためになんとしても、2酸化炭素の元凶である化石燃料依存社会から脱却しなければなりません。いま日本には、コペルニクス的大転換が求められているのです。

書籍

注目のキーワード
                 
カテゴリ
最新記事
アーカイブ
Links

ページ上部へ