アカデミック活動

2015.11.13

世界の中の日本を考える〜「21世紀はいつから始まった?」

皆さんこんにちは井之上 喬です。

東京の紅葉も見どころとなってきました。神宮外苑のいちょう並木や新宿御苑の色鮮やかな紅葉は心を癒してくれます。

今週は、世界の中の日本、について考えさせられる話しに接しましたのでご紹介したいと思います。

NY市立大学の霍見教授を招いた3年ぶりの講演

最初のお話は、私が副会長を務めるグローバルビジネス学会の第36回セミナー(11月10日)における講演です。この日の講師は、日本に警鐘を鳴らし続けてきた稀有の学者として知られるニューヨーク市立大学名誉教授の霍見芳浩(つるみ よしひろ)さんでした。

写真:メインテーブルの中央が霍見芳浩教授。左はグローバルビジネス学会の小林潔司理事長で右は筆者。

2012年の夏にご講演をいただいて以来のお話でした。テーマは「21世紀情報社会に求められる思考と行動-―日本の政治行動と世界から日本はどのように見られているのか」。

「日本の商業メディアを通じてはわからない世界のこと」を最近の安倍首相訪米、米国議会での演説の評価にも触れながら、御年80歳とは思えないエネルギッシュなお話をいただきました。

会場では参加者に、講演のテーマにもなっている「21世紀は、いつから始まったのか?」との問いかけから始まりました。

あなたはどう答えますか?「それは2001年でしょう」と答える方も多いと思います。

しかし霍見さんの答えはこうでした。「過去の大きな分水嶺を見てみると、20世紀は1889年のパリ万博でそれまでの軽工業から、重化学工業への大きな変化が起こり、その象徴となるのが万博に合わせて作られたエッフェル塔」。

それでは21世紀の始まりは「1989年11月9日のベルリンの壁の崩壊!20世紀の構造が文字通り壊れ新しい時代に突入していった」と明確な回答を出していました。

そして21世紀の日本については、霍見さんは早くから警告を発していますが、司馬遼太郎さんが『日本は国際社会や一国が置かれた環境など一切考慮しない伝統をもち、さらには、外国を考慮しないことが正義であるというまでにいびつになる』と警告したように、21世紀のグローバル時代、情報社会で世界から孤立していると改めて強く警告しています。

つまり世界から好かれていないし、信用されていない、と手厳しい判断で「誰と組むかの選択肢に日本が入っていない」と私たち日本人の肌感覚では感じられない、世界の中の日本の実態に警鐘を鳴らしていました。

「世界経営者会議」にみる新しいビジネスモデル

霍見さんの講演と同じ11月10日から2日間にわたり、日本経済新聞社などの主催による「世界経営者会議」が開催されました。

写真:ABB(スイス企業)が開発したロボット「YuMi(ユミ)」を紹介するウルリッヒ・シュピースホーファーCEO

第17回となる今回のテーマは「未来の扉を開く突破力」で、世界のそうそうたる企業経営者が顔をそろえ講演をされたのを記事でご覧になった皆さんも多いのではないでしょうか。

私がその中で興味を持ったのは、世界の四大会計事務所の1社であるKPMGグローバルストラテジーグループ統括パートナーのニコラス・グリフィン氏の講演内容です。

グリフィン氏は「ビジネスの世界は、産業セクター間がぶつかり合い、これまであったような循環的な変化ではなく、技術革新(イノベーション)による全く新しいビジネスモデルが成長のために必要になっている」としています。

氏はそのなかで、積極的に新しいビジネスモデルを生み出す、M&A(合併・買収)など色々な手法があるが、日本企業にとって異業種との協業(コラボレーション)が成長のために考えるオプションではないかと、直前に明らかになったシスコとエリクソンのコレボレーションを例に挙げ、日本企業の世界での成長戦略の1つにコラボレーションという手法が有効ではないかとの考えを示していました。

奇しくも同じ日の日本経済新聞には、「日本企業の海外M&A初の10兆円乗せ」の見出しで、日本企業による海外企業のM&Aが9年ぶりに過去最高を更新し、10兆円を突破したとの記事がありました。

世界市場で成長していくためにはこれまでの日本企業にない、新しいビジネスモデルで市場を創出することにドライブがかかっているように見えます。

M&Aで規模を追求する、そして新しい選択肢として日本企業の優れた技術力を生かした国際的なコラボレーションという選択肢もあるのかもしれません。

2020年の東京オリンピックは、日本のビジネス界にとって大きな分水嶺になる可能性を秘めているとも言えます。世界から孤立するのではなく、世界からコラボレーションのパートナーとして選ばれる日本企業になる。

今はまさにダイナミックな新しいグローバルーション世紀にふさわしい大潮流の中にあるのかもしれません。そんな今こそ国を構成する一人一人に日本人としてのソフトパワーが問われる時代だと痛感しました。

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