アカデミック活動

2005.11.25

前NTTドコモ会長、大星公二さんを講師に迎えて。

こんにちは。井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?

先週、早稲田大学の私の授業「パブリック・リレーションズ概論」に去年に引き続いて前NTTドコモ会長の大星公二さん(現NTTドコモ、シニア・アドバイザー)を講師としてお招きしました。副題を「次世代のリーダーのために」とするこの授業で、「パブリック・リレーションズと企業」をテーマに、ドコモの成功を例にとり企業の社会的役割とリーダーシップについてお話しいただきました。

大星公二さんは、当ブログ8月1日号で取りあげた、私の長年の友人であった高崎望さんの学生時代からの友人で、高崎さんの紹介で10数年前に初めて出会い、今では親しくさせていただいている方です。

大星さんは、92年にNTTからエヌ・ティ・ティ移動通信網(現NTTドコモ)を創業し社長・会長として、その売上げを7年間で約4倍、時価総額において世界3位にまで引き上げた稀代の経営者です。在任中の大星さんは、持ち前の壮大なスケール感と常識にとらわれない発想力、そして素早い決断力と実行力で、リスクをとらない経営者が多い日本のビジネス界で際立った光を放っていました。

当日の講義のなかで大星さんは、自ら育て作り上げたドコモの成功について、将来の市場変化を適切に予測し、必要と感じたときにはスピーディに戦略転換をはかり、つねに差別化を意識し実行したことにあったとしています。

また、人事面における新規採用試験に際して書類なしの面接中心の試験を行った結果、採用された女子学生の比率が47%にまでのぼり、入社後の女子社員の役職昇進が同期中一番早かったことなど、既成概念を打破した大星さんの経営手法が披瀝されました。

そして企業の役割については「企業は社会の公器である」との言葉に集約されるように、企業にとって一番大切なのは消費者、従業員とその家族などのステークホールダーであり、よりよい商品やサービスの提供をとおし社会に貢献することで、結果的に企業の利益は後からついてくると語り、これからの企業活動にとってのパブリック・リレーションズの重要性について語りました。
またリーダーシップについて「知識と情報から問題を抽出し、解決法を導き出し、それを実行すること」と語り、大学では「知識と情報から問題を掘り起こし、自分で考えて答えを導き出す訓練を重ねることが後の宝となる」と自分で思考し、行動することが真の成長を促してくれると説きました。

大星さんは「ノブレス・オブリージュ」(高貴な身分に生まれたものとして自覚すべき責務=選ばれた人の責務)の精神についても語り、第一次世界大戦中の英国で、多くの貴族が国と正義を守るため率先して出征し戦場に散ったことを例にあげ、「選ばれた人は他人に対し、より多くの責任を持っている」ことを強調しました。

そして企業経営において「iモード」を例に、「社運をかけた大きな決断をしなければならない場面もある。しかし失敗を恐れていては前に進めない。しり込みしていてはスピードが要求されるこのグローバル社会の波についていくことはできない」として、ここ一番というときはトップが直接かかわり、必要とあればどこにでも自ら足を運ぶ徹底した現場主義が大切であることも語ってくれました。

また、情報技術(IT)の発達とインフラが整備されたことで、これまでの特権階層による情報や知識の独占から、誰もが情報へアクセスできるいわゆる「ユビキタス社会」の到来によるチャンスの拡大についても語りました。

講義後の質疑応答では学生からの質問が相次ぎ、競争が激化するグローバル社会を乗り切るファクターとしてハングリー精神の大切さにも触れました。物質的に豊かな日本社会で成長の起爆剤となるハングリー精神を育てるには、「知る喜びを知ること」、つまり知的欲求を刺激することで、物事を追及するハングリー精神を養うことができるのではないかという自身の見方を示しました。

90分にわたる講義は、熱気溢れる中で予定時間を大幅に超えて終了しましが、大星さんの自由な発想とダイナミズムとをふんだんに感じさせてくれる、学生にとって有益で印象深いものとなりました。

大星さんをみていつも思うことがあります。それは、彼のような人物が経済産業省の大臣となり、日本の産業の将来の舵取りをおこなえば、確実にしかも速いテンポで日本がより良い方向に変わっていくのではないかということです。

大星さん、どうもありがとうございました。今後のご活躍をお祈りします。

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