About Public Relations

パブリックリレーションズとは

最短距離で目標や目的の達成を可能にするパブリック・リレーションズ(PR)

井之上パブリックリレーションズでは、「パブリック・リレーションズ(PR)とは、個人や組織体が最短距離で目標や目的に達する、『倫理観』に支えられた『双方向性コミュニケーション』と『自己修正』をベースとしたリレーションズ活動である」と考えています。

また、経済、政治、文化において急速にグローバル化が進行する中で、民族や文化、言語、宗教、国境を超えてステーク・ホルダー(利害関係者)とのリレーションシップ・マネジメントを実践するパブリック・リレーションズはグローバルビジネスの基盤ともなります。

PRを成功に導く3つのキーワード

倫理観

岩波書店の『哲学・思想辞典』によると、倫理学は古代ギリシャのソクラテス(前470/469~前399)にその萌芽がみられ、「……人間はただ生きることではなく、よく生きることだ」としています。ソクラテスの孫弟子アリストテレスも、人間のよい生き方を問題にしましたが、人間の善や幸福を探求する哲学に初めて「倫理学」という名を与え、人間の「見る」「なす」「作る」の3つの働きに対応させて、哲学を「理論学」「実践学」「制作学」に区分し、倫理学をこの中の「実践学」に属すると分類・規定しています。

今日の哲学を「理論哲学」と「実践哲学」に大別し、倫理学を実践哲学に位置づけているのは、この分類に由来しています。その後、中世のキリスト教(アウグスチヌス、トマス・アクイナス)を中心とした倫理思想、近代初頭の倫理思想、近代イギリス倫理思想(ホッブス、J. S. ミル)そして近代フランス(ルソー)、ドイツ(カント、ヘーゲル)の倫理思想へと、歴史とともに変遷していくことになります。

倫理観について現代のパブリック・リレーションズでは、ジェレミー・ベンサムの功利主義(utilitarianism)「最大多数の最大幸福」とマイノリティ(貧しい人や弱い人)に対して義務感をもって手を差しのべなければならないとするエマニュエル・カントの義務論(deontology)との補完関係の上に成り立っていると考えられています。
私たち人間は本質的に「かかわる」存在である。それゆえ、人間の最も深い体験は他者との関係で、他者とかかわることで私たちはいまの自分自身を創り上げているといえます。このことは、個人が集合する組織体にもあてはまります。

パブリック・リレーションズになぜ倫理観が欠かせないかといえば、個人も組織体も、他者やパブリック(一般社会)との関係を築くうえで、普遍的な倫理的価値観をシェアし実践することが、結果として最短距離で目的や目標の達成を可能にする大きな要素になるからです。
不祥事が繰り返される日本社会においては、倫理観に基づく思想をもち行動することは、ときには回り道にみえても、長い目でみれば、お互いが利益を享受し持続的に発展できるサイクル構築の近道となるのです。

双方向性コミュニケーション

コミュニケーションによる情報の流れには、一方向性と双方向性があります。一方向性は文字どおり、情報発信者が相手に情報を与えることを意味し、双方向性は、情報発信者と情報受信者の情報のやりとりが双方向の形をとります。

米国で歴史的発展を遂げたパブリック・リレーションズを、4つのモデルに分類したジェームス・グルーニッグは、一方向性のコミュニケーションに対して、双方向性コミュニケーションを非対称性と対称性の2つに類型化しています。 また、グルーニッグによれば、非対称性の双方向性コミュニケーションは、組織体(情報発信者)がパブリック(一般社会=ターゲット)を説得、同意させるための手法で、パブリックからのフィードバックも発信された情報の効果を測るために用いられるとしています。

一方、対称性の双方向性コミュニケーションは、情報発信者とパブリックの相互理解を目的とした手法で、双方が情報発信者兼受容者になり、フィードバックも相互理解促進のために用いられます。

両者とも情報流通は双方向であり、前者は情報発信者が有利となるように情報受信者に影響を与え変容させていくのに対し、後者は、互いに影響を与え合い、双方が変容していく点に大きな違いがあります。

パブリック・リレーションズに最も適した手法は、後者、つまり、バランスのとれた対称性双方向性コミュニケーションにあるといえます。
パブリック・リレーションズは、最短距離で目的(目標)を達成する手法である。ターゲットとするパブリックと良好な関係を築くことが、結果的には、よりスムーズに目的を達成させることを可能にします。つまり、双方が対称性のある双方向コミュニケーションをとおして互いを知り、倫理観に支えられ、双方が必要な修正を行い歩み寄り、双方にとってよい関係を醸成することが、パブリック・リレーションズを成功に導く鍵となるのです。

対称性をもった双方向性コミュニケーションを実現するには環境も大切。西欧社会ではキリスト教の影響から、組織のヒエラルキーなどを超えて、個人として自由に意見交換できる土壌がありますが、日本の組織では、階層意識が強く、双方向性コミュニケーションの妨げになることもあります。個人の意識がフラットな状態で、つまり対等な関係で情報交換、意見交換できなければ、グルーニッグが述べている双方向性コミュニケーションは成立しないのです。その実現には、階層意識を取り除き、互いに意見を自由に言い合える環境づくりが求められます。

自己修正

対称性の双方向性コミュニケーションにより効果を可能にするもう1つの要素が「自己修正」という概念です。

米国のパブリック・リレーションズの専門家は、双方向性コミュニケーションをとおしたフィードバックの結果、必要と思われるときには多くの場合「変化(Change)」させたり、「調整(Adjust)」するとしていますが、ここでいう「自己修正」は、表面的に相手に合わせる変更ではなく、より深いところで自らを変えていくことを意味しています。

自己修正を機能させるには、自分の状況はもちろんのこと、相手の状況をよく知っておくことが重要。そのために双方向性コミュニケーションを確立し、ターゲットからの反響・反応をフィードバックし、自己修正の材料にすることが必要となります。
また、パブリック・リレーションズに求められている自己修正は、倫理観に支えられていなければなりません。たとえば組織体の場合、法律に触れないからといってむやみに市場や社会環境を混乱させることは、仮にそれによる目的達成が可能であったとしても、企業の社会的責任や持続的な繁栄を考えた場合、よい結果をもたらすことに決してなりません。組織体として倫理観をもち、必要なときに自己修正が機能することにより、企業としてのレピュテーション(品格・評判)や高いコーポレート・ブランドの確立が可能となるのです。

今後の企業にはパブリック・リレーションズの本来の姿である高い倫理観に支えられた、双方向性コミュニケーションと自己修正をベースに行動する柔軟性をもった活動がますます重要となってきます。

競争優位を確立するパブリック・リレーションズ戦略の構築に不可欠なPRライフサイクル・モデル

パブリック・リレーションズ(PR)は最短距離で目的/目標達成を可能にする21 世紀最強のリアルタイム・ソフトウェアである。リアルタイム性を持ち最短距離で成功に導くPR戦略の構築に不可欠となる具体的手法、「PRライフサイクル・モデル」を以下に紹介します。

PRライフサイクル・モデルの概要

「PRライフサイクル・モデル」(図)は、さまざまなパブリック(ターゲット)やステークホルダーとのリレーションシップ・マネジメント(良好な関係性の維持・発展)に欠かせないプロセスの体系であり、あらゆるPR戦略構築の基本となるものです。このモデルは、環をなす継続的な活動であり、総合的PR戦略だけでなくプロジェクトベースのPR戦略を策定する際にも活用できます。

PR会社にとってクライアントは企業に限定されるわけではなく、その対象は国家(政府関連機関)であったり、団体あるいは極端な場合、個人(例えば選挙キャンペーンにおける候補者)であったりもします。また、その活動エリアも国内にとどまらず海外も包含しており、グローバルに対応できるモデルです。

また、PRライフサイクル・モデルは図に示すように環をなす継続的な活動であり、そのサイクルは「自己修正機能」によって、スパイラル的に高次元化するモデル。展開の出発点は、組織体(公共機関や企業、NPO・NGO法人、各種団体など)があらかじめ掲げている「ゴール」(全体目標)で、中・長期的な視点に立った継続的で戦略的なPR活動により達成されるべき目標(目的)となります。

1. リサーチ&シチュエーション・アナリシス

パブリック・リレーションズ活動の出発点は、組織体の国内外における現状を把握・理解するための「リサーチ&シチュエーション・アナリシス」となる。特に戦略的なPRプログラムの構築には、十分なデータ収集と分析が担保されなければならない。それらのデータに基づいて組織体自体が競合会社と比較してどこに優位性があるのか、差別化できる要因は何かなどのプラス面、逆にウィークポイントは何かといったマーケットでのポジショニングを明らかにするほか、マーケティング活動やコミュニケーション活動のレビュー、メディアでの取り上げられ方などポジティブ(肯定的)あるいはネガティブ(否定的)なパースペクティブ(見通し)を確認する。

2. PR 目標(目的)の設定

「リサーチ&シチュエーション・アナリシス」で収集した基礎データに加え、経営目標とマーケティング目標をベースに、「PR 目標(目的)の設定」を行う。

パブリック・リレーションズの目標は、中・長期的な視点に立った継続的で戦略的なコミュニケーション活動により達成されるべきゴールである。企業であれば、年間売上高を10%増にするとか、新製品を100万個販売するといった目標は、それぞれ経営目標でありマーケティング目標ではあるが、ここで取り上げるPR目標とは異なる。パブリック・リレーションズは、組織体(企業)あるいはその事業活動や製品・サービスに対する認知や好感度を対象(ターゲット)となるパブリックをはじめとして関連市場や業界、広く社会に高めていくためのコミュニケーション・ベースの総合的なリレーションズ活動であり、結果的に「ゴール」としての経営目標やマーケティング目標の達成に寄与できるものでなければならない。

企業の置かれている状況によって設定すべきPR目標が異なってくるのは当然のことである。しかし、PR目標には発信すべき情報として「企業理念」、「経営目標」などのほか、競合企業との差別化を図るために強く打ち出すポイント、優位性を印象づけるためのメッセージの策定が含まれるが、倫理観ベースのコンプライアンスを意識することが肝要である。

3. ターゲット設定

PR目標の設定に続いて、具体的に対象(ターゲット)を設定することになる。対象(ターゲット)の設定は、何(PR目標)を、パブリック(一般社会)の誰(対象:ターゲット)に対して、双方向でコミュニケートしていくかという図式を完成させることであり、「PR戦略の構築」以降の方向性を決定することである。そして、設定すべき対象(ターゲット)は2種類に区別される。第1は「ビジネス対象(ターゲット)」であり、第2は「コミュニケーション・チャンネル」である。

ビジネス対象(ターゲット)

ビジネス対象(ターゲット)は多くの場合、組織体(企業)が提供する製品やサービスを実際に購入する層のことであり、PR的な視点からすれば「発信する情報を確実に伝えるべきパブリックの中の最終対象(ターゲット)」ということができる。PR活動の主体が国や地方自治体であれば、ビジネス対象(ターゲット)という呼称は適切ではなく、そのサービスを受ける国民や市民ということになる。

ビジネス対象(ターゲット)として先ず顧客があげられる。これは、現在の顧客だけでなく将来的に顧客となりうるポテンシャル層も含まれる。ほかには、製品やサービスを流通・販売するディストリビュータ(販売代理店、小売店)やビジネスパートナー(出資企業・業務提携先企業など)も対象となるし、金融・証券市場から資金調達を行うことをPR目標に掲げている企業では、投資家(機関投資家・一般投資家)なども対象(ターゲット)となる。

一方、株式公開予定のない私企業にとって、投資家はビジネス対象(ターゲット)の範疇に入れる必要はないし、直販方式をとっている企業ではディストリビュータはビジネス対象(ターゲット)にはなりえない。つまり、ビジネス対象(ターゲット)となるのは企業の業態やPR目標によって可変的なものとなる。複数のビジネス対象(ターゲット)を設定した場合には、そのプライオリティ(優先順位)もあらかじめ考慮しておく必要がある。

コミュニケーション・チャンネル

コミュニケーション・チャンネルとは、情報提供者(企業や組織体、各種団体など)が発信するメッセージやニュースをより広範な対象(ターゲット)に効果的に伝達する増幅機能をもつメディアや組織、人(インフルエンサー)を意味する。
そのなかでもメディアはコミュニケーション・チャンネルとして重要である。例えば、発行部数が980万部の読売新聞(朝刊)に組織体の情報が記事として掲載されることになれば、日本全国で980万を超える読者に回読され、その情報に接する可能性を持つことになる。また、NHK、民放5社のテレビネットワークは全国を網羅し、重大なニュースは瞬時に全国を駆けめぐり、その視聴覚に訴える影響力は極めて大きい。加えてオンラインメディアも新興のコミュニケーション・チャンネルとして対象となる。

これらのメディアが報道する内容については、社会的な信頼度は高く、世論形成に与える影響も大きい。しかも90%以上のメディアが東京に一極集中しており、きわめてコストパフォーマンスの高いメディア・リレーションズ展開を可能としており、コミュニケーション・チャンネルとしてメディアが重要視される所以となっている。しかし、これらのメディアへの情報発信は一方的なものであってはならない、メディアからのフィード・バックにより必要な際にはいつでも修正できるように、双方向な流れと関係をメディアとの間で構築・維持しておかなければならない。

4. PR戦略の構築

PR目標と対象(ターゲット)の設定ができると、いよいよ戦略の構築に入る。PR戦略を構築することにより、何(PR目標)を、誰(対象(ターゲット))に対して、どのような方針(戦略)でコミュニケートしていくのかという、パブリック・リレーションズ活動の骨格が形成されることになる。

PR戦略を構築することは、設定したPR目標を、倫理観を支えに対象(ターゲット)に対してコミュニケートするための方針を確立させることであり、これによって、次のプロセスである「PRプログラムの作成」の具体的内容が決定され、さらに次の「インプリメンテーション」への流れを方向づけることになる。

5. PRプログラムの作成

PRプログラムは、PR戦略を実現するための具体的戦術であり、個々の活動項目がプログラムに該当する。つまり、PRプログラムはPR戦略によって方向づけられ、その内容は構築されたPR戦略によって千差万別である。

PRプログラムの作成にあたっては、次の5つの点に留意しなければならない。

第1は、具体的で実現性のあるプログラムを作成することである。また、実行すべき内容が具体的で明確なプログラムであっても、実行することが不可能であったり、過剰な困難を伴うものであっては現実的なプログラムとはいえない。実行内容が明確で実現可能なプログラムであることを念頭におきつつ作成しなければ、有効なPRプログラムとはならない。

第2は、PRプログラムの実施スケジュールである。PR戦略に沿ったプログラムは複数のプログラム群であることが一般的である。最も効果的な結果を得るためにプログラムの優先順位を決め、優先順位の高いプログラムを中心に実施のタイミングと時期の調整を考慮しておかなければならない。

第3は、予算計画である。パブリック・リレーションズ活動全体の予算を前提として、PRプログラムはその予算枠の中で最大限有効な結果を得られるという観点からプランを練る必要がある。

第4は、組織体(企業)とアウトソーシングする場合のPR会社など外部コンサルタントとの役割分担である。PRプログラムの個々の内容を実行段階で誰が担当するかを明確にしておくことは、スムーズにプログラムを実践していくためには不可欠な要件となる。

第5は、企業内であれば経営トップと広報担当責任者、外部コンサルタントとの関係で言えばクライアント企業との間のコミュニケーションシステムの確立である。グローバル化の進展に伴い、企業の本社機能と支社機能が国境をまたぐことはめずらしくなくなっている。そのためPRプログラムの実施に際して、実務家と経営トップやクライアント企業との間のコミュニケーションが混乱しないように必ず双方の窓口を明確にしておく必要がある。つまり、常に双方向の環境を維持することが重要となる。

6. インプリメンテーション(実行)

インプリメンテーションとは、PRプログラムの実行である。例えばメディア・リレーションズであれば、プレス・リリースを定期的に配布したり、ニュース・バリューの高いトピックスについて記者会見を催して発表したり、プレスツアーを組んで新規の設備(研究・開発センターや工場など)を取材してもらうなどさまざまなプログラムが計画される。インプリメンテーションで重要なことの第1は、実施スケジュールに沿って、また設定された予算枠の中で確実にPRプログラムが実行されることである。

第2は、PRプログラムを計画どおりに実施した結果が、その効果が期待値以下であった場合、すぐにその原因を分析してカウンタープラン(対応策)を立案してカバーすることである。例えば、記者会見を開催したが、その後の記事の掲載が期待値以下であった場合、即座に個別インタビューを実施したり、特定のメディアを選んでブリーフィングを行うなどの方法でカバレッジを回復させていく。プログラムは多岐にわたっているために、状況の変化によってすばやく必要な修正を行わなければならない。

7. 「自己修正機能」の源泉となる情報の分析・評価

そして、これら一連の活動の締めくくりが「活動結果や情報の分析・評価」となる。PR戦略に基づいたコミュニケーション活動の結果が、あらかじめ設定したターゲットや業界、社会に対し、どのような効果および影響をもたらしたかについて公正に分析・評価する。

分析評価には、ステークホルダーへのヒアリングやインターネット調査、報道分析(井之上PRではコンピュータ分析手法のCARMAを使っている)などさまざまありるが、発信した情報をフィードバックすることで「自己修正機能」が有効に機能することになる。

書籍

注目のキーワード
                 
カテゴリ
最新記事
アーカイブ
Links

ページ上部へ