2012年05月22日
原発ゼロの今、エネルギー問題を考える
~“シェールガス”は本当に革命を起こすのか
こんにちは井之上 喬です。
かなり蒸し暑い日が多くなり、最高気温が25度を超す夏日が東京でも記録されるようになりました。五月病の季節、体調管理には十分留意したいものです。
今年も夏の暑さが気になるところですが、夏場の需要期を控えた電力事情も気になるところです。
5月5日深夜に北海道電力の泊原発3号機が定期検査で発電を停止、日本国内のすべての原発が停止しました。1970年以来、42年ぶりとのことです。
■高値でも輸入拡大のLNG
原発ゼロの状況を踏まえ、原発が再稼働しない前提で5月18日に政府は今年の夏の電力需給見通しと節電対策を発表。
節電の数値目標は、需給状況が最も厳しい関西電力管内では15%以上、九州電力管内が10%以上、北海道と四国電力管内が7%以上となっており、需給に比較的余裕のある中部、北陸、中国電力管内にも5%以上の節電目標を求め、需給に余裕が生まれた場合は関西に融通するとしています。
東北、東京電力管内の数値目標は設定されていません。また、関西、九州、四国、北海道電力の管内では需給がひっ迫し計画停電が避けられない場合を想定して、計画停電の準備を進めることにしています。
政府は節電対策と同時に、電力供給力を高める取り組みとして1000キロワット以下の小口電力の取引活性化をめざし、6月中にも「分散型・グリーン売電市場」の創設も正式に決定しました。
工場などの自家発電の余剰電力を電力会社が買い取りやすくし、電力不足を少しでも緩和しようとの狙いです。
その一方で、昨年の福島第一原発事故以降、電力需要を賄うために天然ガス(LNG)や石油、石炭などを燃料とする火力発電所の稼働率が上がっていますが、そのなかでもLNG火力発電所が二酸化炭素の排出量が比較的少ないことから、原発代替電源の主役になっているようです。
財務省の貿易統計で見ても2011年度(平成23年度)のLNG輸入量は8318万トン、前年度比で実に17.9%の伸びを示しています。輸入先はマレーシア、オーストラリア、インドネシア、ブルネイ、ロシアからが中心でこの5カ国で輸入量の約80%を占めています。
価格も当然のことながら上昇傾向で、2011年4月の輸入平均価格が100万英国熱量単位(BTU)当たり約13ドルであったものが、12月には18ドルという高値で購入しているということで、エネルギー源安定確保の面で大きな懸念材料になっているとも言えます。
■米国での石油化学大型投資復活はシェールガスに
そんな中で最近、メディアで注目されているのが“シェールガス”です。多くのメディアが、シェールガス革命と題し取り上げていますが、シェールガスとは泥や砂が固まってできる頁岩(けつがん=シェール)にとじ込められた天然ガスで、米国で特殊な水の高圧注入で岩盤を砕き回収する技術が確立し、2008年ごろから生産が本格化し今では米国の天然ガス生産量の20%超を占めるまでになっています。
五大陸にまたがる推定埋蔵量は世界の年間消費量の約60年分に達するとも言われているようです(日本経済新聞などの解説を参照)。
そしてシェールガスの生産急増で米国の天然ガス価格が、2012年4月には100万BTU当たり2ドルまで下落しているというから驚きです。
その恩恵で米国では家庭のガス料金の値下げが実現、また産業界では圧倒的な価格競争力を背景に、シェールガスに含まれるエタンを原料とした大型の石油化学投資が復活し雇用創出にも大きな期待が寄せられているようです。
大型の設備投資を決めた1社に米石油化学大手のダウ・ケミカルがあります。テキサス州フリーポートで年産150万トンと世界最大規模のエチレンプラントを2017年操業開始予定で建設すると発表しています。
日本経済新聞の記事の中からダウ・ケミカルのジム・フィッタリング副社長の興味深いコメントを紹介します。「シェールガス革命が“本物”だと判断したのは10年の暮れ。それからわずか2カ月で投資計画をまとめ、2011年4月に発表した」。
なんという経営のスピード感でしょうか。
エネルギー問題に苦しむ日本にとって、この圧倒的に価格が安いシェールガスを日本にも、とする動きも急速に高まっているようです。
三井物産、三菱商事、住友商事などの大手総合商社、東京ガスなどがシェールガスの日本への輸入で基本合意したと発表していますが、米国政府が認可に対し慎重な姿勢を見せているようです。
4月末の日米首脳会談でも野田総理の対日輸出要請に対しオバマ大統領は大統領選挙への影響もあるのか明言を避けたとの報道もあります。
一方では、シェールガスの採掘時に発生する地下水の汚染などの環境問題も指摘されていますが、2000年代に登場したばかりの新エネルギー、シェールガスの米国の動向が注目されます。
シェールガスの開発が始まっている中国、アルゼンチン、南アフリカなどの動きも注視したいところです。
エネルギー問題は、わが国にとって古くて新しいそして永遠のテーマかもしれません。原発ゼロの今こそ、より現実的なエネルギー問題に関する国民的な議論とともに、政府の大胆なエネルギー政策と積極的で戦略的なエネルギー外交を望みたいものです。
たまたま日曜日(5/20)のテレビ朝日「報道ステーションSUNDAY」で、元東京都職員で若干31歳の鈴木直道夕張市長が開発を試みる、石炭層から採集される炭層ガス(天然資源のメタン)の可能性について紹介されていました。
この夕張市の試みに対して番組取材を受けた経済産業省のお役人が、まだ経済性がみえない、と冷ややかなコメントを発したのにはがっかりさせられました。
原発無きエネルギー源を自前で開発することは国家戦略上重要なこと。再生エネルギーの開発も含め日本が取り組まなければならないのは代替エネルギー源の必死の確保です。
喫緊のエネルギー問題を国家的な課題とし、大きな運動にしていくためには、パブリック・リレーションズ(PR)は欠かせない手法です。
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2012年04月30日
2012年は天文の“ゴールデンイヤー”
~5月21日の金環日食、通勤時間帯で観測
こんにちは井之上 喬です。
ゴールデンウィーク(GW)が始まりました。5月1日、2日に休暇を取ると4月28日から5月6日までの9連休。なかなか長期休暇を取らない日本人にとっては、年末年始、夏休みに並ぶバケーションの機会です。
私もそうですがカレンダー通りの皆さんも多いかと思いますが、それぞれが休みを有意義に使いたいものです。
ゴールデンと言えば、2012年は天文ファンにとっては“ゴールデンイヤー”。「金」が付く天文現象が続くとても珍しい年だそうです。
まずはあと1カ月を切った5月21日(月)の「金環日食」を皮切りに、6月6日(水)の「金星の太陽面通過」、8月14日(火)には「金環食」が日本でも観測できるとのことです。
■首都圏近郊での金環日食は173年ぶり
1カ月を切り直前に迫った金環日食ですが、書店や家電量販店、そして身近なコンビニエンスストアでも金環日食観察用のサングラス、日食を撮影するための様々なカメラ機材などの特設コーナーが目立ちます。
今回の金環日食は、日本国内では1987年9月23日の沖縄金環日食以来の25年ぶりのようです。
しかし首都圏近郊で金環日食を観察できるのは、なんと1839年9月7日以来、実に173年ぶりになるそうです。
ちなみに今後、日本で観測できる日食は、2030年6月1日の北海道での金環日食、2035年9月2日の能登半島から新潟、長野、群馬、栃木などの皆既日食、2041年10月25日の大阪、名古屋など中部日本での金環日食ということだそうです。
日本各地での金環日食が観測できる時間帯は、鹿児島で食の最大が7時22分、大阪が7時29分、名古屋が7時31分、東京が7時34分。
今年の金環日食が注目される大きな要因として観測できる帯状の地域が、九州南部から近畿南部、関東まで広範囲にあること。また、大都市が含まれることもあり「国内史上、最も多くの人が見られる金環日食」とも言われています。
■体験学習で科学少年を増やす
この一大天文ショーに対して文部科学省は、金環日食を自然や科学への関心を深める好機とし、正しい観測方法などを解説する資料を各都道府県の教育委員会などに配布しているとのこと。
その中には金環日食が始まる時間帯が午前7時30分前後と登校時間に当たることから、直接太陽を見て目を痛めないように注意することも盛り込まれているようです。
また、埼玉県などの小中学校では、始業前の金環日食の観測会を計画しているところもあるようですが、体験重視の学習は面白い試みといえるかもしれません。
金環日食のような大きな自然現象を実感して、科学に興味を持つようになり、「一生の仕事にするきっかけになった」、と言う体験談は科学分野だけでなく、さまざまな分野で活躍している多くの方々から伺います。
パブリックリレーションズ(PR)の観点からみても、企業が営んでいる事業を多くの人に知ってもらうとともに、その事業自体を通した社会貢献活動を通じその事業分野に興味を持ってもらう。
こうした活動を通して、新しい人材を発掘し産業の継続、発展のために企業責任を果たすCSR(企業の社会的責任)活動がいま注目されています。
東日本大震災から1年以上が経過、未曽有の1年を自ら経験した日本企業にとって、企業規模の大小を問わず新たな企業価値の創造が不可欠となっています。
その大きな1つにCSR活動があることは疑いありません。世界に通用する、日本で創案される新しい形のCSR活動。 新しいCSRにおける「ジャパンモデル」を考える1年かもしれません。
何となく下向きな感じのニッポン、金環日食を機会に思考を上向きに、明るくするきっかけにしたいものです。
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2012年03月26日
100周年を迎えたワシントンの桜
~桜が内外で拡げる絆の輪
こんにちは井之上 喬です。
春分の日(3月20日)を過ぎたものの冬の寒さが続く関東地方。気象庁は、関東地方の「春一番」について今年は2000年以来12年ぶりに観測されない年になったと発表しています。
関東地方の「春一番」の条件として、立春から春分の間の日に日本海に低気圧があって強い南寄りの風(8m/s~)が吹いて気温が上昇することが挙げられていますが、今年はこれらの条件をクリアすることができなかったようです。
また、桜の開花も遅れる見通しで、東京都心(靖国神社)の開花は3月30日~31日と予想されています。前回のブログでは、3月恒例となっている“春闘”を採り上げましたが、今回もこの時期の恒例の一つである“桜”の話題をいくつかお話します。
■100周年を迎えたワシントンの「桜」
今年は、日本から米国の首都ワシントンに桜が贈られてから丁度100周年となります。
ポトマック川沿いの池「タイダルベースン」付近に3770本植えられている桜は、1912年3月27日に日米友好のシンボルとして旧東京市長であった尾崎行雄がワシントンに贈った桜を植樹したのが始まりといわれています。
尾崎行雄は、日本の議会政治の黎明期から戦後に至るまで活躍した政治家で「憲政の神様」と呼ばれた人。第1次大隈内閣(1898年6月30日から同年11月8日)では文部大臣を務め、その後1903年(明治36年)から1912年まで東京市長を歴任しています。
朝日新聞(3月19日夕刊)は、「今年の桜祭りは例年より期間を延ばして5週間を予定。雅楽師の東儀秀樹さん、アイドルグループのAKB48らを招いたイベントがある。東京電力福島第一原発の事故で被害にあった福島県川俣町の山木屋地区から、若者の太鼓クラブが参加する」と報じています。
また、ワシントンは例年にない暖かさで、満開時期は平年の4月4日から大幅に早まり、主な行事が行われるのは3月25日の開会式以降に集中するため、折角の桜が散ってしまうのではないかと関係者は気をもんでいるそうです。
開花が遅れそうな日本とは対照的に、アメリカ東海岸は今年、記録的な暖冬でワシントンの桜は現時点で早くも満開。先ず日本の桜が満開を迎え、ワシントンの桜が続くという例年の流れが今年は逆。何か日米外交でいつも後手に回っている日本政府の対応を象徴しているようですね。
ワシントンの桜は今や日米友好のシンボル。日米両政府の関係性が以前に比べて希薄化するなかで、100年前の日米友好の証であるワシントンの桜がどのように有効に活用されるのか、パブリック・リレーションズ(PR)の専門家として興味をそそるところです。
■桜並木を復興のシンボルに
東日本大震災の被災地で復興のシンボルとしてさまざまな形態で桜の植樹が拡がっています。岩手、宮城両県の被災地で進められているのが「桜植樹プロジェクト」。これは津波の最高到達地点に桜並木をつくろうという計画です。
昨年の東日本大震災で多くの桜が壊滅的な打撃を受けたなかで、宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区の10本の桜は津波に耐え、震災直後の昨年4月、見事に花を咲かせ被災地の多くの人々を元気づけました。
この10本の桜を街の復興のシンボルにと地元の人たちが「なとり観光復興プロジェクト」を立ち上げました。強い遺伝子をもつ10本の桜から苗木を育て、名取川沿いに仙台空港までの10キロを3000本の桜で飾ろうというプロジェクトです。
ほかにも、岩手県陸前高田市では1万7000千本の植樹計画が、宮城県気仙沼市や石巻市など5市町でも同様の計画が進行中だといいます。
もうひとつの桜の話題は、ルミネ有楽町店で3月22日~3月25日の間、実施されたSakura Project。これは全国47都道府県から「桜」を集め、それらを約8mの一本の「桜の木」にして、開花の条件の異なる桜を満開に咲かせようとする試み。
昨年3月には人気TV番組「情熱大陸」でも紹介され、プラントハンターとして活躍する西畠清順さん(1980年生まれ)が指揮をとり、3月22日には見事にすべての桜を一本の木として満開に咲かせました。まさに「花咲爺(お兄さん)」の再来ともいうべき出来事でした。
日本の象徴的な花、「桜」。内外で絆の輪を拡げています。明日の3月27日は、日本から米国の首都ワシントンに桜が贈られてから丁度100年に当たります。マスメディアがこの件についてどのように報道するのか、今から楽しみです。
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2012年02月27日
うるう年の今年を“潤う”年に
~あらためて考えさせられた説明責任の重要性
こんにちは井之上喬です。
ひと雨ごとに暖かくなってくる感じがします。もうすぐ春ですね。
今回のブログでは最近の新聞記事から興味深かった2つのトピックスを紹介します。
最初は、うるう年についてのお話。そして二つ目は民主党前原誠司政調会長に対する、産経新聞の「言うだけ番長」表現にかかわる記者会見出席拒否問題です。
■2012年2月は29日が末日
今年は4年に1度の閏(うるう)年。ウィキペディアによれば「閏(うるう)とは暦の上で1年の日数や月数が普段の年(平年)よりも多いこと、または1日の秒数が普段の日よりも多いことである。またはその余分な日・月・秒のこと。暦と季節とのずれを調節するために入れられる。“うるう”という読みは、閏と潤を混同して“うるおう”という読みがなまったものとされる。」とあります。
地球は約1年で太陽を1周、正確には1年と約6時間で1周、つまり4年経つと約24時間のズレが生じ、そのため4年に1度、うるう年を設けて調整する、ということだそうです。
ただし、より正確には1年のズレは6時間より約11分短いため、100で割り切れる年はうるう年にしないという例外をつくり、さらに例外の例外として400で割り切れる年はうるう年にするとし、これが日本を含め多くの国で使われているグレゴリオ暦。
16世紀ローマのグレゴリウス13世の時代に出来たルールが今に生きているというから驚きです。
日本経済新聞2月25日付け朝刊のニュースクールにはわかりやすく、かつ詳しく解説されているので、興味のある方はご覧になってみてはいかがでしょうか。2月29日誕生日の人の年齢の数え方も解説されています。
4年に1度のうるう年は経済面でも、夏のオリンピック開催、アメリカの大統領選挙などがある年と重なり、好景気になる年とも言われています。
2011年は東日本大震災、タイの大洪水、欧州の経済危機と予期せぬ大きな出来事が頻発した年でした。今年は文字通り、うるう“潤う”年になることを祈りたいものです。
■品格ある表現とは?
二つ目のトピックは民主党前原誠司政調会長が、同氏に誹謗的な記事を書いた産経新聞記者の定例記者会見への出席を拒否したとされる記事。
この問題は産経新聞が、これまでたびたび前原氏の発言に対して「言うだけ番長」と記載し批判的な記事を書いていたことに起因しています。同紙で前原氏を、言うだけ番長と揶揄したことに対し、前原氏が抗議し、2月23日の会見に産経新聞記者を締め出したもので、会見出席拒否は各方面に波紋を起こしています。
「会見取材拒否 前原さん、それはない」。これは朝日新聞の2月25日朝刊の社説の見出しで、同紙はこの問題を取り上げていました。
その中では、「公党、とりわけ政権与党の政策責任者が、報道された内容を理由に、特定の社を会見から締め出すなどということを、なぜやるのか。前原氏はみずからの説明責任の重さを自覚して、速やかに「産経排除」を撤回すべきだ」と書いています。
また産経新聞はこれまで、前原氏の言動に関し「言葉ばかりで、結果が伴わない人」との意味を、漫画「夕やけ番長」(梶原一騎氏原作)をもじって、「言うだけ番長」と表現してきたとし、前原氏が民主党代表を務めていた平成18年に起きた「偽メール事件」も念頭にあるとしています。
同紙がこれまで前原氏に対して「言うだけ番長」と表現した記事は、十数回に上っているようですが、日本は漫画文化の国。今回のように特に相手を揶揄するときに、表現が大人気ないと思われるものも少なくありません。
表現する側がそうした漫画などに使われている言葉やイメージを援用し、揶揄を交えて掲載することがどこまで許容されるのか難しい問題だとも思われます。しかし今の時代は書く側にも一定の品位が求められてくるのではないでしょうか。
ひとつの基準は、「もし自分がこうした表現で批判された場合どのように感じるか?」といった視点も大切だと思うのです。
公的な立場にある人の説明責任については私の著書『「説明責任」とは何か』(PHP新書)で実際の例も含め触れていますが、今回のケースでももし報道された内容が間違いや不適切であるならば、排除するのではなく会見などの場を使い国民に正々堂々と明確な理由を率直に説明する必要があります。
朝日新聞の社説には、以下の印象的な言葉が引用されています「こんな政治家の振る舞いがあるたびに、社会で広くかみしめられてきた言葉がある。『私は君の意見には反対だ。だが、君がそれを主張するする権利は、命をかけて守る』先人の、この名言を前原氏に贈る」とあります。
また、今回の前原氏の行動に対し、産経新聞は同氏に「猛省を促しコメントの撤回を求める」としています。皆さんはどう思われますか?
パブリック・リレーションズ(PR)の1つのプログラムに、メディア・トレーニングがあります。企業トップなどのスポークス・パーソンに、いかにして記者と良い関係を作るかをテキストと記者会見のシミュレーションなどを通し実感してもらうためのものです。
メディア・トレーニングの中で、私が経営する井之上パブリックリレーションズが重視する、言ってはいけないポイントの1つに、“その件に関してはノーコメントです”が挙げられます。
記者会見にしても個別のインタビューにしても、相手とのコミュニケーションが成り立ってこそ初めて機能しますが、ノーコメントを押し通すことは、片方がキャッチ・ボールを止めることになり、その時点でコミュニケーションが成り立たなくなるからです。
PR会社の重要な役割の1つに、相手との関係構築のプロセスで、人と人とのコミュニケーションのキャッチ・ボールが上手く行くための双方向のコミュニケーション・マネージメントが重要であることを改めて確信しました。
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2012年01月09日
今年は美術展の当たり年
~中国からも門外不出の至宝が日本へ
こんにちは、井之上 喬です。
皆さんはどのような新年を過ごされましたか?
私は、東京の自宅で映画を見たり好きな本を読んだり、のんびりした正月を過ごしました。
また新年7日には久しぶりに「七草粥」をいただきました。皆さんもご存じのとおり、「せり」、「なずな」、「ごぎょう」、「はこべ」、「すずな」、「すずしろ」、そして「ほとけのざ」といった春の七草を使ったおかゆが七草粥。飽食のあとのおかゆは胃袋を休めるのにも格好の食べ物といえます。
日本で七草粥の習慣が始まったのは古く、平安時代の文献にその記録が残っているといわれます。もともとは中国で無病息災を祈る行事だったようですが、実は現代の栄養学的に見ても大変健康によい食事だそうです。あっさりさっぱりの七草粥からは、お節料理とは違った新鮮な季節感を味わうことができます。
さて、2012年は美術展の当たり年のようです。昨年末の日経MJのコラム欄「オトナ行動学」(12/23)で「専門家によれば12年は美術展の10年に1度の当たり年」と紹介されていました。
「10年に1度の当たり年」となったのは、昨年の大震災の影響で延期になった企画が復活したことも一因となっているようです。それにしても日本に居ながらにフェルメールやセザンヌ、レンブラント、ルーベンスらの作品が見られるのは嬉しいことです。
■中華文明の粋を凝縮
年頭を飾るのが日中国交正常化40周年と東京国立博物館140周年を重ねた特別展「北京故宮博物院200選」(東京国立博物館・平成館:1/2-2/19)。
故宮とは主に中華文明の美術品や装飾品、資料などを収蔵・展示する博物館のことをいい、北京の故宮博物院には約180万点のコレクションが収蔵されています。この特別展は、それらの貴重な文物から約半数が国宝級といわれる選りすぐりの名宝200点が出品。
圧巻は中国・北宋時代(960~1127年)の絵巻で、神品と讃えられこれまで中国国外で公開されたことのない門外不出の『清明上河図』(せいめいじょうかず)。
全長約5メートル、縦24センチの画面のなかに郊外の川べりの風景や荷を満載した船、街道、大小の店、行き交う馬やかごなどが墨と淡彩で描かれ、その様は中国の風俗画の最高峰といわれています。なお、『清明上河図』の公開は1月24日迄です。
昨年12月、私の経営する会社(株式会社井之上パブリックリレーションズ)の中国事業支援室が、中国セミナー「中国最新メディア事情」を開催しました。その際に講師として招いた朝日新聞国際編集部次長の野嶋剛さんの著書に『ふたつの故宮博物院』(新潮社2011)があります。
「故宮は不思議な博物館である。まったく同じ名前の博物館が、中国(北京)と台湾(台北)にそれぞれ存在している。」と野嶋さんは著書の冒頭で語っています。
故宮の収蔵品の一部(約70万点)を台湾に移送することを決定したのは、当時の中華民国総統であった蒋介石でした。毛沢東率いる中国共産党に敗れ、中国大陸を追われた総統は、1949年に収蔵品とともに台湾(国立故宮博物院)へ逃れたのです。
同書では、戦争と政治に引き裂かれた「故宮」の運命をたどり、日本展の実現に執念を燃やした司馬遼太郎や平山郁夫のエピソードなど水面下の動きを紹介しています。
同書に綴られたふたつの故宮の歴史的秘話に触れることで、「北京故宮博物院200選」がさらに味わい深いものになるのではないでしょうか。
■本命はフェルメールか?
それでは故宮展以外の「10年に1度の当たり年」における主な美術展をいささか僭越ながら私の独断と偏見でいくつか紹介します。
●「ボストン美術館―日本美術の至宝」(東京国立博物館:3/20-6/10)
日本にあれば当然、国宝指定を受けるべき『平治物語絵巻』など歴史的名作に加え、長谷川等伯、尾形光琳といった日本美術の秀作約90点を展示。
●「セザンヌ―パリとプロヴァンス」展(国立新美術館:3/28-6/11)
この作品展には、「近代絵画の父」と呼ばれるセザンヌの画業を、彼が作品を残したパリとプロヴァンスとを対比し、芸術的創造の軌跡を捉えようという試みが見られます。
●「マウリッツハイス美術展」(東京都美術館:6/30-9/17)
オランダのマウリッツハイス美術館からフェルメール(2点)をはじめレンブラント(6点)やルーベンスなど17世紀に黄金時代を迎えたオランダとフランドル絵画の名作約50点を公開。なかでも青いターバンを巻いた少女の何か訴えるような表情を描いた『真珠の耳飾りの少女』は、いまから大きな話題となっています。

昨年、東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催されたシュテーデル美術館収蔵「フェルメール『地理学者』とオランダ・フランドル絵画展」へ行き、彼の作品『地理学者』や『牛乳を注ぐ女』を見て感動したことを憶えています。この夏は、『真珠の耳飾りの少女』に私も会いに行こうと思っています。
●「出雲大社大遷宮特別展「出雲―聖地の至宝」(東京国立博物館:10/10-11/25)
また、今年は出雲ゆかりの神話が記された『古事記』が編纂されて1300年の節目の年。そして、来年は出雲大社正遷宮の年にあたります。こうしたタイミングで催される「出雲大社大遷宮特別展にも興味津々。是非出向きたいと思います。
そのほかに「大英博物館―古代エジプト展」(東京・森アーツセンターギャラリー:7/7-9/17)、「リヒテンシュタイン華麗なる侯爵家の秘宝」(東京・国立新美術館:10/3-12/23)、「ベルリン国立美術館展―学べるヨーロッパ美術の400年」(国立西洋美術館:6/13-9/17)などが楽しみです。
元来、日本で開かれる美術展の集客力には定評があるようです。英国の美術専門紙「The Art Newspaper」が毎年発表している、世界の美術展の入場者数ランキング(1日あたり)では、日本国内で開催された美術展はベスト10の常連となっています。
ちなみに2009年特別展のランキングでは、「国宝 阿修羅展」(15,960人/1日)を筆頭に、「正倉院展」、「皇室の名宝」、「ルーヴル美術展」と上位4位までを日本の美術展が独占した実績があります。
こうした世界的な美術品や文化遺産に接して知識を広げていくことは、グローバル・ビジネスに関わるビジネス・パーソンやパブリック・リレーションズ(PR)の実務家にとって大切なことです。
私もできるだけ時間を見つけて歴史的な出会いをするために、これらの美術館へ足を運ぼうと思っています。
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井之上パブリックリレーションズ(井之上PR)は2011年5月12日に地方自治体など公的機関向けに「ツイッターマニュアル」を無償で提供することを発表しました。ご興味のある公的機関の皆様は是非、お問い合わせください。詳しい情報はWebサイトでご覧になれます。
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2012年01月02日
新年にあたって考えること
~日本は本気で変革をしなければならない
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
2011年の日本は、私たちの心に深く刻まれた大きな出来事がありました。東日本大震災や福島第1原子力発電所事故など長い苦難の中に日本はありました。
一方世界でも、1月のチュニジアから始まったアラブの民主化革命は、エジプト、リビアへと拡大。新しいコミュニケーション・ツールとしてのフェース・ブックやツイッターの出現が民衆レベルの運動を後押しして政治を変えうることを示しました。
また3・11の大震災と福島原発事故は、世界に対して今後の日本の取り組みへの関心を高め、日本の経験を自国の政策に反映させようとさえしています。
しかし日本は、国内はもとより世界の期待に応える確固たるプロセスを示し、解決の道を歩むことが出来るのでしょうか?
新年にあたって、日本の再生にとって重要な2つの課題についてお話したいと思います。これら2つの課題に共通するテーマは「外部環境の変化への調整・適応」です。
米国の生理学者W・B・キャノンは、生物体にはホメオスタシス(恒常性維持)機能があるとし、組織体は外部環境の変化によって自らを維持するために「調整」「適応」が求められていると説いています。
■原発なき社会をどう実現させるか?
最初の課題はエネルギー問題です。
エネルギー資源のない日本は世界最大級のエネルギー輸入国。エネルギー問題が、日本にとってきわめて重要であることはこのブログでもたびたび主張してきました。
近年急速にクローズアップされてきたCO2問題は原子力発電の危険性に覆いを被せ、国家プロジェクトとして原発を推進してきたのも事実ですが、日本のような地震大国で原子力開発が進められてきたこと自体信じ難いことです。
しかし、外部環境が激変する3・11から10ヶ月経た今、除染活動を含め原発事故への対応がいまだ困難を極める状況にあっても、政府に原発推進への肯定的な姿勢が見られるのは何故なのでしょうか?
「電力の確保がないと企業活動に致命的な影響を与える」と産業界が原発推進の大合唱をしているのでしょうか?
電力確保は、現在東京都の猪瀬副知事の天然ガス火力発電所建設(百万KW級:原発1基相当)に見られるように、他の火力発電に切り替えるなど方法は考えられるはず。
ドイツを始め多くの先進国で原発廃止宣言が行われる中、福島原発でこれほどのダメージを受けた日本が何故原発存続に固執するのか理解に苦しむところです。
第2の福島事故が起きたら、日本が再起不能状態に陥ることぐらい危機管理の視点で考えれば当たり前のこと。大震災以降、原発事故再発の可能性が高まったことを外部環境の見直しによって真摯に受け止めなければなりません。
国内での原発事故対策に汲々としている日本が一方で、政府が原発輸出に肯定的な姿勢を示していることへの内外の不信感も高まっています。
今必要なことは、まず原子力発電所の廃止宣言。そして国家の総力を挙げて火力も含めた他のエネルギー開発を工程表と共に発表すること。
そして廃止される原発の具体的工程表を明確にし、国内にとどまらず、広く国際社会に訴えることが求められているはずです。
新たな経済成長と健全な日本社会を維持するために、あらゆるリソースを注入し、新エネルギーの開発に国家的課題として取り組む必要があるのではないでしょうか。
今年の7月からスタートする、太陽光、風力、バイオマスなどの「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が大きな契機になることを期待しています。
■まず自らがリストラを行う
2つ目の課題に国家公務員改革が挙げられます。
私は昨年10月に、朝霞国家公務員宿舎建設問題をきっかけに立ち上がった財務省の「国家公務員宿舎の削減のあり方についての検討会」(座長:藤田幸久 財務副大臣)の委員に任命された際、日本の官僚システムを身近にすることができました。
パブリック・リレーションズ(PR)の専門家として、度重なる検討会を通して確信したことは、日本の再生は「国家公務員制度改革」なしには実現し得ないということでした。
とりわけ3月11日の大震災と福島原発事故以降、疲弊していく日本にとって、その抜本的改革なしに再生はあり得ないと考えるに至りました。
長い鎖国から解き放たれた明治維新は、日本が強力な中央集権体制で近代化を急ぐ中でさまざまな矛盾を抱え込み、外部環境の変化に対応することなく第2次大戦へ突入し、完全な敗北を期すことになります。
焦土から立ち直った戦後の日本は、1980年代初めには近代工業化社会(機械文明)で世界の頂点に立つものの、その後新しい時代に適応することなく90年代以降、米国の復活と新興国の台頭を許し、いまだにダッチロール状態を続けています。
とりわけ激変する経済環境の中で、日本の民間企業は幾度となく生き残りのための組織改革を行ってきました。度重なるリストラは今もなお、組織に帰属する一般人や日本社会に多大な苦しみを与えています。
国民や民間企業、あるいは一部の地方自治体は、明治時代から幾多の変節を経て、数々の自己調整を行い今日に至っていますが、中央官庁における官僚、官僚制度は、さまざまな外部環境の変化に対して一体どのように調整・適応してきたのでしょうか? 問題はこの点にあります。
1000兆円もの今日の財政赤字は政治の責に帰するべきことは明白であるものの、明治時代からの官僚制度に対する調整・適応がなされなかったことが大きな原因となっていることも否定できません。
現在の日本は、企業を例にとると「破綻企業」の状態。
倒産を避けるために企業がやるべきことはまずリストラで、最初に手をつけるのは、工場や遊休地、本社屋、保養所、社宅・社員寮などの不動産や有価証券の売却。
これらに手をつけることなしに、株主であり顧客でもある国民への増税は、製品価格を引き上げ顧客に赤字を負担させるようなもので、顧客の理解を得られないばかりか、買い控えで倒産に追い込まれることは必定。
いま、世界はさまざまな問題を抱えながらも前進する課題先進国日本の動向を注視しています。
2012年は、日本を始め、台湾、ロシア、フランス、中国、韓国、米国など世界の主要国でリーダーが選ばれる年。とりわけ日本では9月の民主党の代表選挙と自由民主党の総裁選挙。また11月には米国大統領選挙と日米両国でトップ・リーダーが選出されます。
混沌とする社会が長く続くと、強力なリーダー出現への願望が強くなります。選挙で選ばれたリーダーがリーダーシップを発揮するのは当然のこと。民主主義を後退させないためにも忍耐強く選挙で選ばれた強いリーダーの出現を期待し、一日も早く国家のリストラクチャリングが実現されなければなりません。
課題先進国日本がこれらを解決することで、「ジャパン・モデル」を世界に示すことが可能となるはずです。その実現にパブリック・リレーションズ(PR)は欠くことができません。
年頭にあたりこの2012年が、どのような困難な条件下に置かれたとしても、希望を捨てず、未来に向かって進む力が皆さんに与えられますよう、心からお祈り申し上げます。
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2011年12月19日
♪もういくつねるとお正月・・・・・♪
年末年始の過ごし方百景
こんにちは、井之上 喬です。
あっという間に師走も半ばを過ぎて、そろそろ新年の足音も聞こえてきます。私の幼い頃、この時期になるとこんな唱歌を良く耳にしました。
「もういくつねるとお正月
お正月には 凧あげて
こまをまわして 遊びましょう
はやくこいこいお正月」
「もういくつねるとお正月
お正月には まりついて
おいばねついて 遊びましょう
はやくこいこいお正月」
この『お正月』は、『荒城の月』『箱根八里』『花』などの代表作を残し23歳の若さで夭逝した天才作曲家、瀧廉太郎(1879-1903)の作品です。正月を待ちわびる子供たちの心境が歌いあげられた名曲です。
兄弟や友だちと家の近くの広場で凧をあげたり、こまをまわして遊んだことを懐かしく想いだします。唱歌『お正月』の登場から一世紀以上たった現在、現代の日本人は年末年始をどのように過ごしているのでしょうか。今回のブログで取りあげてみました。
■年末年始休暇の平均は6.8日
「2011-20112年末年始の過ごし方」(フォートラベル調べ)によると、年末年始の休暇日数の平均は6.8日で、昨年と比較して0.1日増。最も多い休暇日数は「6日間」(29.8%)で次いで「7日間」(18.4%)、「5日間」(12.5%)の順でした。
私の経営する会社(井之上PR)も、12月30日(金)から1月4日(水)までの6日間がお休みで、多数派ということになりますね。
また、年末年始の過ごし方について「予定が決まっている」と回答した人は82.1%で、「予定が決まっていない」と回答した人は17.9%でした。
予定が決まっている人のうち最も多い過ごし方は「自宅中心で過ごす」の38.7%。次いで「海外旅行」(23.1%)、「帰省」(18.8%)、「国内旅行」(10.9%)、「仕事・その他」(5.6%)、「日帰り旅行」(2.8%)の順。全体的に昨年とほぼ同じ結果が得られ、震災の影響は本調査においては見られなかったようです。
海外旅行の行き先は、「アジア」(58.3%)、「ヨーロッパ」(20.9%)、「北米」(10.0%)の順で、「アジア」中では特に「韓国」「台湾」「タイ」が人気となっています。出国のピークは12月29日で、帰国は1月4日になりそうです。
■年末年始アラカルト
下記は30代~40代の既婚女性を中心としたアンケート調査(対象は千趣会がサービスするベルメゾンデッセの会員785名)で、今どきの家庭が年末年始をどう過ごしているか窺い知ることができます。
●紅白歌合戦を見るのは3人に2人(2010年大晦日)
大晦日に紅白を「見る」(たぶん見るを含む)と回答したのは64.8%で、「見ない」と「たぶん見ない」を大きく上回る結果となりました。「見ない」は9.0%でした。
●約8割が年越し蕎麦を食べる
大晦日に「年越し蕎麦を食べる」が81.0%で「食べない」は6.1%。他の人は、アレルギーや好き嫌いなどの理由から蕎麦以外のもの(うどんやラーメンなど)を食べると回答。
●年賀状を出す枚数は30枚以下が最多
年賀状を出す枚数は30枚以下が34.0%で最も多く、31枚~50枚が23.2%、51枚~100枚が22.4%で100枚以上が8.0%でした。逆に1枚も出さない人は4.3%でした。
●過半数の家で『鏡餅』、『しめ飾り』をする
4人に1人がお正月の飾りはしないと答える一方で、「鏡餅」(58.1%)、「しめ飾り」(52.7%)は半数以上の家で飾られています。
●8割以上がお正月におせち料理を食べる
お正月におせち料理を食べるのは82.3%を占めました。おせちやお重を自分で作ると答えた人が半数を超え、市販品を100%購入するのは13.9%にとどまりました。
好きなおせちのトップ5は、栗きんとん、数の子、黒豆・豆、伊達巻き、そしてかまぼこの順になりました(この部分はフォートラベル調べから)。
私はなかでも、数の子が好きですが、おせち料理を食べて正月を実感するなど日本の風物詩はなかなかのものですね。
もう一つだけ年末の話題を紹介します。
皆さんもご存知のように財団法人日本漢字能力検定協会では毎年、世相を表す漢字一字を全国から公募して12月中旬に京都・清水寺で発表しています。そして、今年は「絆」が選ばれました。
今年5月の私のブログで、大震災を通して、日本人が古来有していた人と人との絆(Kizuna)の大切さや人間のつながりが生きていく上で如何に必要かを私たちに気づかせてくれたことを書きました。
また、09年1月のブログで絆づくりは「関係構築活動」であり、パブリック・リレーションズ(PR)そのものだとも紹介しました。
世相を表す漢字一字として「絆」を応募した人たちのなかで、どれだけの人が「絆づくりはパブリック・リレーションズ(PR)」と気がついてくれたでしょうか。気になるところです。
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2011年12月06日
平安時代に遡る日本最古の年賀状
~携帯年賀メール増加の中、やはりうれしい年賀状
こんにちは、井之上 喬です。
師走に入り皆さんもそろそろ年賀状の準備をはじめる頃かと思います。私の会社(井之上PR,日本PR研究所)でも年賀状のデザインが決まり、印刷を進めるようなタイミングです。
年賀状の起源についてははっきりしないものの、以前北海道新聞がその起源について、「年始のあいさつは奈良時代までさかのぼる。平安時代には公家社会にその風習が広まって、書状でもあいさつが交わされた。平安期の学者、藤原明衡が著した手紙の模範文集『雲州消息(うんしゅうしょうそく)』には年始あいさつ状の文例があり、これが現存する最古の年賀状といわれている。」(2000年12月2日付)としています。
今回のブログでは日本の年末年始に彩りをそえる、伝統的な生活習慣ともいうべき年賀状の「むかし」と「いま」を紹介します。
■第1回年賀はがき賞品、特等は「ミシン 」
「日本の郵便制度は1871年(明治4年)に前島密によって確立された」と学んだのは、たしか中学校の歴史の授業だったかと思います。前島は、ヨーロッパとイギリスの郵便制度を視察した後、これを基に日本の郵便制度を考案しました。
1873年(明治6年)には郵便制度は国有化され、政府の独占事業となりました。同じ年に
「郵便はがき」が登場し、年賀状の普及に多大な影響を与えることになります。
現在同様に、12月に投函された年賀状が元日に配達されるようになったのは1899年(明治32年)の「年賀特別取り扱い」が始まってからでした。明治の終わりから昭和初期にかけ、年賀状の取扱量は増え続けます。
今では、年賀はがきといえば当たり前になっている「お年玉くじ」。この制度が始まったのは、1949年(昭和24年)のことです。このアイデアは、官が考えたのではなく、京都在住の民間人によるもの。
「年賀状が戦前のように復活すれば、お互いの消息もわかり、うちひしがれた気分から立ち直るきっかけともなる」と考えたようです(年賀状博物館Web)。
ちなみに第1回のお年玉付き年賀はがきの賞品は、特等がミシンで1等は純毛洋服地、2等は学童用グローブ、3等は学童用こうもり傘だったとのこと。
その後、年賀状の取扱量は日本経済の拡大とともに増加し、特に1980年代の後半からの年間取扱量は35億通を超え、最盛期を迎えました。
■年賀状は1月7日までに
日本郵政は、今年2011年の元旦に全国で配達された年賀状は約20億8千万通で、昨年より0.4%減少したと発表しています。電子メールで新年のあいさつを済ます人が増えていることも要因となっているようです。
2009年にモバイルマーケティングデータ研究所が主体となって実施した「年賀状メールに関する利用実態調査」で年賀状には何を使って送ったかについて質問したところ、男女とも「年賀ハガキ」が最も多く(男性48.1%、女性57.3%)、次いで「携帯メール」という回答でした。
「携帯メール」では男性が文字と絵文字の携帯メールが31.2%、女性ではデコメが55.0%、文字と絵文字の携帯メールが35.8%という結果でした(いずれも複数回答)。
因みにこの調査の有効回答は1,717人で、男女比は44:56、そして年齢的には19歳以下が約23%、20代が約31%、30代が約25%で40代以上が約21%という構成。
受け取った年賀状については、男性では「年賀状ハガキ」が57.8%と最も多く、次いで「携帯メール」が39.7%、「パソコンメール」が2.5%。女性では「携帯メール」が54.4%と最も多く、次いで「年賀状ハガキ」が45.1%、「パソコンメール」が0.5%という結果でした。
携帯年賀メールが増加する中、日経MJ(11月23日)に、「もらってうれしい年賀状―はがきが85%」という見出しの記事が紹介されていました。これは、メディアインタラクティブが全国15~59歳の男女500人を対象とした調査です。
はがきがうれしいが85%に対し、「メール」がうれしいと回答したのはわずか4.8%。
また、もらってうれしかった年賀状は「手書き」が58.6%で最多。つづいて「近況報告が入っているもの」が47.4%で「どの年賀状も(もらえば)うれしい」が44.4%で年賀状が届くのを楽しみにしている様子が窺えました。
これら2つの調査を通して携帯からの年賀メールが増加していく傾向がみられるものの、まだまだ年賀はがきの人気は高いようです。
年賀状は発送時期で投函日の表現が変わります。1日以降の投函になる場合は、「元旦」という文字を入れずに投函日を書きます。また、年賀は通常1月7日までのことを指しますので、それ以降に出す場合は「寒中見舞い」、立春を過ぎたら「余寒見舞い」として出します。
文面には、新年明けて晴れ晴れした相手のことを考え、不祝儀ごとは書かないのが決まりごとのようです。
こうした年賀状の決まりごとを知るにつけ、いまさらながらに年賀状と日本文化との深い関わりを感じます。年賀状を送る中心的な手段がたとえ「はがき」から携帯メールやスマホメールに替わったとしても、こうした年賀状文化は引き継がれていくべきことだと思います。
一般的に年賀状を出す相手は、親族や友人・知人、そしてさまざまなビジネス関係者など。これは年賀状というコミュニケーション・ツールを使い個人が行う、年1回のパブリック・リレーションズ(PR)活動とみることもできます。
私も年末には会社と個人の年賀状書きに忙殺されます。ひとことでも書き添えることにしていますが、なにせ数が多く省いてしまうことも多々あります。もらってうれしかった年賀状に「手書き」という調査結果がありました。今年はせめてできるだけ添え書きを増やしたいと思いました。
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2011年11月28日
古典落語の天才、談志さんの死を惜しむ
~限られた時間・分量で如何にメッセージを凝縮するか
こんにちは井之上 喬です。
先週は週半ばの水曜日が勤労感謝の日で休日。米国などでもサンクス・ギビングディーThanksgiving Day)で多くの会社がお休みです。収穫の秋そして働くことへの感謝の心は共通ですね。
その勤労感謝の日、落語家の立川談志さんが75歳で亡くなっていたとの報道がありました。談志さんが長年喉頭がんと闘っていたことをご存知の方も多いのではないでしょうか。
■型破りの天才
談志さんに対するあなたのイメージはどのようなものですか。彼にはその型破りな行動や言動に、毒舌、反体制、トラブルメーカーなどさまざまなイメージを持たれていますが、古典落語の第一人者としての実力は誰もが認めるところでした。
独演会はいつも満席で。天才の称号にふさわしい人がまた一人いなくなったのは本当に残念です。
報道によると1997年に食道がんが見つかり、晩年は糖尿病、喉頭がんを患うなどしましたが、談志さんの希望で声帯の摘出手術はしなかったようです。
噺家が声を失うことは自分を失うこと。命より大切な声帯を守り高座、落語への執念を見せた談志さんの苦悩が伝わってきます。
談志さんは、1983年には立川流を名乗り病に倒れるまで勢力的に活動しました。彼は、「個」を全面に押し出し落語界に独自の世界を築いたのでした。
日経新聞11月25日朝刊に、評論家で談志さんを古くから知る矢野誠一さんがその追悼文に「この人の多彩な活動によって、落語という存在を閉鎖社会から抜け出させ、社会的に認識させたことは高く評価されていいだろう。」と政界進出を果たすなどその舌鋒で多方面に影響を与えた談志さんの死を惜しんでいます。
戒名は生前に談志さん自身がつけた「立川雲黒斎家元勝手居士」(たてかわうんこくさいいえもとかってこじ)。談志さんの名調子がもう生で聞けないと思うと残念でなりません。
■5分間に凝縮し面白くまとめる
山藤章二さんが描く味わいのある談志さんのイラストがついた、CDを聞き直してみようかと思っています。
ユニークな落語関係の本に「5分で落語のよみきかせ」がPHP研究所から出版されています。演芸研究家、落語作家である小佐田定雄さんの作品ですが、小学生に読み聞かせをすると大いに受けると聞いたことがあります。
おそらく5分程度に面白さを凝縮することで、子供たちにも落語の面白さや深さが理解できたのではないでしょうか。
5分といえば最近、面白いテレビ番組に出会いました。NHK教育テレビEテレの「0655」と「2355」です。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが0655は、毎週月曜日から金曜日の午前6時55分から7時までの放送。1日のはじまりをつくる5分番組で「日めくりアニメ」「おはようソング」などの楽しいコーナーで、あなたを送り出します。
一方2355はというと、同じく毎週月曜日から金曜日の夜11時55分から零時までの放送で、1日の終わりにほっとひといき。NHKのホームページには、2355は、見ると気持ちよくリラックスできるおやすみ前にぴったりの5分番組と紹介されています。
出演者を見ると、0655のオープニングはボブ・マーリーの名曲を真心ブラザーズが見事にアレンジ、ほかにもデーモン閣下、爆笑問題など、また2355にもおやすみソングを担当する小泉今日子はじめ細野晴臣、蒼井優など錚々たるメンバーが顔をそろえ5分間という短い時間にさまざまなメッセージを凝縮しています。
5分間を1つのユニットにメッセージ発信を行なうことの快さがこの2つの例にはあるのかもしれません。
パブリック・リレーションズ(PR)でも限られた範囲内でしっかりとメッセージを発信することはとても重要です。
その最たるものがプレス・リリースではないでしょうか。見出しがあってリードがあって、本文があって閉めに至るまでの、わかりやすさと分量は、多忙な記者や編集者が読んでくれるかどうかの決め手になります。分量はできればA4で2ページ以内にまとめたいところです。
リレーションシップ・マネジメントであるパブリック・リレーションズの関係構築先にコア・コンピタンスとなるメディア・リレーションズがあります。
メディアとのコミュニケーション・ツールともなるプレス・リリースにもう1度心を配ってみようと思いました。
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「中国最新メディア事情」セミナーのご案内
インターネットやツイッターの爆発的普及により、中国のメディアは大きな変貌の時を迎えています。私の会社(井之上パブリックリレーションズ)では、日々変化する中国経済とメディア事情に精通した日・中お二人のジャーナリスト、アジア通信社社長の徐静波氏と朝日新聞国際編集部次長の野嶋剛氏をお招きして「中国最新メディア事情」セミナーを企画いたしました。両氏の豊富な取材経験に基づいた最新の中国メディア情報と中国市場における日本企業のメディア・リレーションズに対するアドバイスは、現地での事業成功の大きなカギとなると考えております。ぜひこの機会にご参加ください。
■詳細・お申込み:http://www.inoue-pr.com/
■日時:2011年12月5日(月)14:00~17:00
■会場:丸ビルホール&コンファレンススクエア
8F Room 1 東京都千代田区丸の内2-4-1丸ビル
■参加費:6,000円(税込)
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2011年11月21日
熱が何度あったら会社を休みますか?
~ネット上に氾濫する医療・健康情報
こんにちは、井之上喬です。
先週は風邪気味で少し早めに帰宅するなど体調を気遣って過しました。今週末から海外出張の予定もあり大事をとったかいもあって大分回復してきました。皆さんも風邪には十分お気をつけください。
こうした体調のこともあって、日刊工業新聞(11/15)のいまどき職場百景アンケート「風邪引いた!熱が何度出たら会社休みますか?」というコラム欄に引かれました。
私が育った時代では無遅刻、無欠勤、そして皆勤がサラリーマンの美徳とされていました。最近の職場の様子はどうか、わが身と比べて他の人たちがどのような対応をしているのか、気になるところです。
■会社を休む全体平均は38.1度
このアンケートによると「少しくらいつらくても頑張る!」という回答が多数を占め、いまでも勤勉性で知られる日本人の気質が反映されていました。
「熱が何度になったら会社を休むか」という質問に対して36.5度で会社を休むという回答が2%で続いて37度が12%、37.5度が24%、38度が29%で一番多く、38.5度が14%、39度が12%、そして何度熱が出ても休まないが7%を占めました。全体平均は38.1度でした。
年代別平均をみると、30歳代以下は37.7度で、40歳代が38.4度、50歳代が38.1度、そして60歳代が38.3度という結果になっています。
37度台の熱で会社を休むのは30歳代以下だけで、この結果を捉えて「若い人は軟弱」と見るか、ビジネス最前線で責任ある業務をこなしている40歳代は「体調が悪くても容易に休めない」という日本の労働環境を問題と見るか、皆さんはどんな感想を持ちましたでしょうか。
もちろん、平熱には個人差があります。また、インフルエンザであれば他の人にうつしたら迷惑をかけるのでとか、風邪が長引かないように早めに休んで完治させるためといった理由で会社を休むケースも多々あり、いちがいに熱の高さだけで判断すべきではありませんが、面白いデータとして読むことができました。
■約9割が「喉の痛み」で風邪を自覚
続いて小林製薬による「風邪の自覚症状」に関する調査です。調査は今年8月、全国の20~50歳代の男女824人を対象に実施したものです。
この調査によると、「風邪をひいたと自覚するのはどれですか」の質問で、87.5%が「喉の痛み」と答えています。次いで「発熱」が59.6%、「せきが出る」が57.5%、「鼻水が出る」が55.8%、「寒気がする」が52.9%、「頭痛」が42.6%で「鼻がつまる」が41.7%という結果でした(複数回答)。
当然、風邪の自覚症状についても個人差がありますが、皆さんの場合はどんな症状を自覚されるのでしょうか。今回、私の風邪の自覚症状は熱も、喉の痛みもなく「寒気がする」といった状態でした。
もうひとつ、Twitterのつぶやきを利用して風邪に関するつぶやきを自動的に抽出・集計して、風邪の流行情報を提供し、注意を促す情報サイト「カゼミル+」(エスエス製薬が11月15日に開設)に興味を持ちました。
同社は「つぶやきから算出した都道府県別の今日の『カゼ話題度』や週間予報に基づき、気温や湿度の変化を考慮したこの先1週間の『カゼ話題度予測』などを見ることができます。」と紹介しています。
このように風邪を引いた際に、風邪に関するさまざまな調査データや知識にアクセスでき、特にインターネット上では、風邪にとどまらず医療や健康に関する膨大な情報が存在していることに改めて驚かされました。
しかし同時にこうしたネット上の情報から、自分の症状を的確な知識を持たずに自己診断して、症状を軽く考えたり、逆に悲観的になったり、情報の利用の仕方によっては思わぬトラブルに発展することも懸念されます。
私たちの日常生活の中で、医療や健康に関する情報をいかに共有し有効に活用していくか、この面においてもパブリック・リレーションズ(PR)の役割が求められています。
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「中国最新メディア事情」セミナーのご案内
インターネットやツイッターの爆発的普及により、中国のメディアは大きな変貌の時を迎えています。私の会社(井之上パブリックリレーションズ)では、日々変化する中国経済とメディア事情に精通した日・中お二人のジャーナリスト、アジア通信社社長の徐静波氏と朝日新聞国際編集部次長の野嶋剛氏をお招きして「中国最新メディア事情」セミナーを企画いたしました。両氏の豊富な取材経験に基づいた最新の中国メディア情報と中国市場における日本企業のメディア・リレーションズに対するアドバイスは、現地での事業成功の大きなカギとなると考えております。ぜひこの機会にご参加ください。
■詳細・お申込み:http://www.inoue-pr.com/
■日時:2011年12月5日(月)14:00~17:00
■会場:丸ビルホール&コンファレンススクエア
8F Room 1 東京都千代田区丸の内2-4-1丸ビル
■参加費:6,000円(税込)
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井之上パブリックリレーションズ(井之上PR)は5月12日に地方自治体など公的機関向けに「ツイッターマニュアル」を無償で提供することを発表しました。ご興味のある公的機関の皆様は是非、お問い合わせください。詳しい情報はWebサイトでご覧になれます。
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日本パブリックリレーションズ研究所(JPRI)では、東日本大震災で風評被害の深刻な影響を受けた観光業界、とりわけ自治体観光局や観光関連団体に対し、「風評被害を避けるための情報発信方法」の無料相談を5月25日より開始しました。詳しい情報はWebサイトでどうぞ。
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2011年11月10日
最速「ペタコン」京に見るCSR活動
~CSRは本業の延長線上で
こんにちは井之上喬です。
暦の上では立冬を迎え、いよいよ年末年始に向けあわただしさが増してきました。
皆さんの冬のイメージは、どのようなものでしょうか。炬燵に入って食べるみかん、スキーやスケートなどウインター・スポーツ、お正月などさまざまですね。
そんな楽しい冬のイメージの一方で、良く使われる言葉に“冬の時代”というのもあります。今週は、タイの洪水の影響で企業業績が悪化しているニュースや、オリンパスの信じられない損失隠しなど企業経営をめぐる暗い話題が多かったと思います。
■気が遠くなる、「10ペタフロップス」
そんな中できらりと光っていたのが、世界最速のスーパー・コンピュータ「京」に関連した話題。11月2日には理化学研究所(理研)と富士通が、京が10ペタフロップスを達成したことを発表しました。
京は文部科学省の「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」計画のもと、理研と富士通が共同開発。
2011年6月の国際スーパーコンピューティング会議で8.162ペタフロップスを達成しTOP500リストで世界1位にランクされたのは記憶に新しいところです。
今回は目標であった10ペタフロップスを達成するとともに、88,126個と気が遠くなりそうな数のCPU(中央演算処理装置)などで構成するシステム全体が29時間余り無故障で動作し、世界最大級の超大規模システムの安定性を世界に実証することになりました。
ちなみに京が達成した10.51ペタフロップスとは、毎秒10,510兆回の浮動小数点演算数だそうです。10ぺタは10の16乗です、ゼロが一体いくつ並ぶのでしょう。
■私たちの日常生活との関わりも
京は2012年6月の完成、11月の供用開始に向けて開発がすすめられていますが、試験利用環境として一部を提供しており、今後、さまざまな分野での利用と成果が期待されています。
その中には、次世代半導体材料のナノ電子デバイス材料の開発、病気の原因となるタンパク質活性部位へ結合して発病を防ぐ化合物を予測しての新薬開発、エネルギー変換効率が高い太陽電池開発、大規模地震防災予測計画や人工構造物の耐震設計への貢献、高精度な気象予測情報の提供など、私たちの日常生活にも大きな貢献が期待されています。
違う視点で見ると京は、日本のものづくりの集大成ともいえるもので、沈滞気味の日本の産業界に射す1条の光といったところでしょうか?来週には秋のTOP500が発表されるとのことです。京の結果に期待したいものです。
京に関する富士通関係者の言葉で印象に残っているのが、「ICTで社会を支えたい。事業を通して世の中の役に立ちたい」ということです。
これはまさしくマーケティングの第一人者であるフィリップ・コトラーの「本業の延長線上でのCSRが理想」と合致するものです。
パブリック・リレーションズ(PR)の世界でも、CSRの重要性はますます大きくなっています。
今後、真のグローバル化を進めなければならない日本企業にとって、CSRのためのCSRではなく、本業に根ざしたCSR活動を世界で展開することを考えるのに今はまさに絶好の機会ではないでしょうか。
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2011年10月24日
充実の秋をお過ごしですか
~読書の秋も電子書籍化?
こんにちは井之上喬です。
神無月も残すところ1週間になり秋本番と言ったところでしょうか。
食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋、読書の秋・・・皆さんはどのように今年の秋を過ごしていますか。
駅の案内などを見ても紅葉の名所へ誘うようなポスターが目につきます。東京近辺では箱根、日光、奥多摩、谷川岳などなど多くの紅葉の名所があります。みなさんの身近なところにも、ある瞬間、目にもまぶしい紅葉を見られるスポットがあるかもしれませんね。いつもと違う目線で少し周りの景色に気を配ってみてはどうでしょうか。
山登りが好きな友人の話しを紹介します。
北アルプスに登るのが特に好きだそうですが、「学生のときは穂高岳に初雪が降った、というニュースを聞いてその日の夜行列車に乗って紅葉を見に穂高に出かけることを何年か続けた」とのこと。
その理由は、前穂高岳、奥穂高岳、北穂高岳に囲まれた涸沢カールでのナナカマドの燃えるような赤とダケカンバの黄色、そして緑の葉が織りなすべストの紅葉の風景に出合うためだそうです。友人によれば世界一の紅葉だ、とのことです。
それにしても衝動に駆られ、すぐ現地に見に行くような場所を持っている人はうらやましい限りです。
■秋の夜長には読書
あまり遠出ができない我々にとって、身近な秋の1つに読書の秋があります。今あなたはどんな本を読んでいますか?
トーハンの発表による2011年上半期べストセラー総合は、1位が「謎解きはディナーのあとで」(東川篤哉)、2位が「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海)、3位が「KAGEROU」(齋藤智裕)、また4位が「老いの才覚」(曽野綾子)、5位が「くじけないで」(柴田トヨ)。
以下、「モンスターハンターポータブル 3rd PSP版スタートダッシュブック カプコン公認」(Vジャンプ編集部)、「モンスターハンターポータブル 3rd ザ・マスターガイド」(電撃PlayStation編集部)、「心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣」(長谷部誠)、「救世の法 信仰と未来社会」(大川隆法)、「モンスターハンターポータブル 3rd 公式ガイドブック」(ファミ通書籍編集部)が10位までの顔ぶれとなっています。
11位から20位までには、「バムとケロのもりのこや」(島田ゆか)、「9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方」(福島文二郎)、「伝える力『話す』『書く』『聞く』能力が仕事を変える!」(池上彰)、「放課後はミステリーとともに」(東川篤哉)、「デフレの正体 ――経済は『人口の波』で動く」(藻谷浩介)、「日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか」(竹田恒泰)などがランクされています。
あなたのお気に入りの1冊はありましたか?
我々の世代にとって本とは、非常に大切な存在でした。お気に入りのカバーや栞を使い、1冊1冊に込められたメッセージと真剣に対峙したような気がします。今の皆さんはどのように読書を楽しんでいるのでしょうか。
■電子書籍が本格化
ところで皆さん毎日の通勤電車の車内を思い浮かべてみてください。これまではラッシュアワーの狭い空間で新聞を畳みながら記事に目をやる人が多かったですが、今は沢山の人が携帯電話やスマートフォンを器用に操作しながら情報を得ています。
10月20日の日本経済新聞朝刊の1面トップ記事の見出しは『アマゾン、日本で電子書籍』。インターネット通販で世界トップの米国アマゾン・ドット・コムが年内にも日本語の電子書籍を購入できるWebサイトを開設、日本でも電子書籍市場が本格的に立ち上がるだろうとの記事でした。
アマゾン・ドット・コムはPHP研究所をはじめとし小学館、集英社などの出版大手と提携することで電子書籍事業参入を考えているようです。
日本でも電子書籍配信サイトはあります。ソニーが運営するReader Store(コンテンツ数2万8000点以上)、紀伊国屋書店のBook Web Plus(同2万点)、大日本印刷、NTTドコモなどのhonto(同5万点)、シャープのガラパゴスストア(同3万6000点)、楽天のRaboo(同2万点)、凸版印刷、インテルのBookLive!(同3万5000点)など。
書籍のインターネット通販で国内での実績を持っているアマゾンの日本で進出は、市場の拡大と同時に一気に電子書籍ビジネス業界は生き残りをかけた競争の時代に突入するとみられています。
市場拡大の大きな要因には、電子書籍データを取り込む端末の多様化も見逃せません。アマゾンは自社の端末「キンドル」を投入するほか、ソニー、パナソニック、シャープなども専用の端末を出していますが、電子書籍普及のカギはiPhoneやアンドロイドなどのスマートフォンが握っていると考えられます。
電子書籍化に保守的であった日本の出版界も、従来のコミックだけでなく文芸書やビジネス書、そして新刊を電子書籍化するなど、紙から電子出版への移行は避けられないと覚悟を決めたようです。
また、新聞社や雑誌社も紙からオンラインへの移行が急速に進んでおり、PRの現場での情報発信の方法も大きく様変わりしています。
パブリック・リレーションズ(PR)においてはメディアの果たす役割は非常に大きく、伝えたいメッセージを新聞や雑誌、テレビ、書籍、インターネットなどを通し最終的な受け手に的確に発信していくことが重要です。
特に若い人たちの間では当たり前になっている電子情報。この大きな波に乗り遅れないようにPRパーソンとしての感性を研ぎ澄ましたいところです。
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2011年10月17日
技能五輪に見る若き技能後継者の「モノづくり力」
~金メダル数が海外大会では40年ぶりの2桁
皆さんこんにちは井之上喬です。
今回は「技能五輪」についてお話します。皆さんは「技能五輪」についてどのぐらいご存知ですか?
技能五輪は、モノづくりで日本経済が驚異的な成長を遂げていた私の中学・高校時代、日本人参加者の活躍がTVや新聞で大きく報道されるなど、国民的関心事でした。
「技能五輪」とか「技能オリンピック」とか呼ばれるこの国際技能競技大会(World Skills Competition)の第1回大会が催されたのは1950年。スペインの若手技能労働者から声が挙がり、隣国のポルトガルが受ける形で両国からそれぞれ12人の選手が集い、技能を競ったことに始まるとされています。
その後、参加国も出場選手も増加し、若い技能労働者(参加資格は一部職種を除き22歳以下)の祭典として発展していきます。1979年のコーク(アイルランド)大会以降は、ほぼ2年に一度開催され、単に技能を競うばかりでなく、参加国の職業訓練の振興と参加者の国際親善・交流の役割も果たしてきました。
■「メード・イン・ジャパン」を世界に
日本が参加したのは1962年のバルセロナ(スペイン)大会から。その時はスペインに次いで国・地域別の金メダル獲得数で2位の成績でした。その後、9大会(1963年~1971年)連続で金メダル獲得数1位に輝き「メード・イン・ジャパン」を世界に知らしめました。
これまで「技能五輪」は、日本でも1970年(東京)、1985年(大阪)と2007年(静岡)の3回開催されています。
今年、第41回技能五輪国際大会は英国ロンドンを会場に51の国や地域から約1000人が参加し10月5日から4日間の日程で46の競技が行われました。
日本選手団は39職種に44人の選手を派遣。日本は従来から得意とする「メカトロニクス」や「CNC旋盤」といった機械・製造分野だけでなく「ITネットワーク管理」などの競技職種で金メダル11個を獲得し、前回大会(2009年カナダ・カルガリー)の6個を大きく上回り、モノづくり日本の底力を世界に示したのです。
海外大会で日本が2桁の金メダルを獲得したのは1971年のマドリッド(スペイン)大会以来40年ぶりの快挙でした。
今回第1位となったのは韓国で13個の金メダルを獲得。韓国にとっては17回目のトップの座となります。
こうした成果に李明博(イ・ミョンバク)大統領が祝福のコメントを発表したり、入賞者には賞金と勲章が授与され、国家技術資格試験や兵役なども免除されるなど、国を挙げた支援と無関係ではないようです。
またこれまで上位にランクされていないブラジルが4位に急浮上。中国が初参加でいきなり銀メダルを獲得するなど、韓国ばかりでなく新興国がモノづくりの人材育成を国策として取り組む姿勢が印象づけられる大会でもあったようです。
■技術立国に不可欠な技能の継承
東日本大震災と福島原発事故後の日本の製造業は、事業継続への対策の遅れや電力不足、国内消費の低迷、そして円高などの要因で海外シフトを加速させています。
しかし、大震災からの復興を遂げて日本経済を立て直していくためにはなんとしても産業空洞化は防がなくてはなりません。
産業のベースとなるのがモノづくりの力。科学技術がどんなに進んでも、モノづくりの力はイノベーションの原点として欠かすことができないからです。
昨年6月、菅政権の下で日本の復活を目指して7つの戦略分野の具体策を盛り込んだ「新成長戦略」が閣議決定されました。そのひとつが科学・技術・情報通信立国戦略。
一方、日本の産業界は、かつての経済成長を支えた団塊世代の大量退職期とも重なり、熟練工から若手への技能継承に真剣に取り組むべき時期を迎えています。
残念ながら科学・技術・情報通信立国戦略を掲げる政府には、イノベーションを支える技能の人材育成についてどのような展望を描いているのか、そのフレームは見えてきません。
海外大会では40年ぶりに金メダル獲得数を2桁に乗せた日本にとって、この勢いをいかに持続させるかが課題といえます。
いまやモノづくりが繊細で、我慢強く、研究心旺盛な日本人に適していることは、国民的合意。より多くの若者が「技能五輪」での頂点を目指すことで日本のモノづくりのすそ野は大きく拡がってきます。
しかし企業に任せきりの現在の体制では、日本の若者のモノづくり力は韓国にますます差をつけられ、新興国に追い立てられるのは必至。国と企業が一体となって取り組むオールジャパン体制が求められるところです。
一方で「技能五輪」に関するマスメディアの報道は10月11日が新聞休刊日だったこともあってか、記事の扱いに勢いがありませんでした。全国紙では2紙が地方版扱い、産業紙では日刊工業新聞が1面トップで伝えている以外はあまり大きなスペースを割いておらず、折角の快挙にもかかわらずほとんどの国民に情報は伝わっていません。
BRICSの台頭は、モノづくり日本の将来を方向づけました。それは日本が常に付加価値の高い製品を世界に送り出すことでしか生き残れないということです。
日本がモノづくり大国を目指すかどうかは、国民的合意の中で政治がこの問題にどのように取り組むかにかかっています。
こうした環境づくりにパブリック・リレーションズ(PR)の専門家の果たす役割も大きいと思います。
20世紀の米国の繁栄はモノづくりとは無縁ではありませんでした。米国の若者が金融街で起こす抗議デモは、モノづくりを放棄し、ひと握りの人々にしか利益をもたらさない金融大国米国がたどるべき当然の帰結としか私には思えてなりません。
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2011年10月10日
スティーブ・ジョブズ、早すぎた巨星の死を悼む
~日本の再生に多くのヒントを残したその足跡
皆さんこんにちは井之上喬です。
今日は体育の日で休日、3連休では秋を感じる体験をした方も多いのではないでしょうか。
仕事の関係で先週末は関西に足を伸ばし、秋晴れの空とクリーンな空気を体いっぱい吸ってきました。
そんな10月5日、アップルの前CEOスティーブ・ジョブズ氏が56歳の若さで急逝しました。約7年前に患った膵臓癌が原因でした。
ジョブズ氏は1976年、友人のスティーブ・ウオズニアックとシリコンバレーの自宅ガレージでアップルコンピュータ(現アップル)を創業。
アップル社は、IBMやDECなどのコンピュータ・メーカーが当時世界市場を支配していたころ、個人が家庭でもコンピューターを気軽に操作できるように、世界に先駆けてパソコン「アップルII」や「マッキントッシュ」を発表。革新的旋風を巻き起こしました。
アップル設立から35年にわたり世界の情報産業界をリードしてきた彼の死に際し、オバマ米大統領は「もっとも偉大な米国の革新者の一人だった」とその逝去を惜しむ声明を発表。
同世代の友人でありよきライバルであったビル・ゲーツ氏や孫正義氏など世界の多くのリーダーが彼の急逝を惜しみ、その生前の輝かしい功績をたたえました。
彼の死はまた、エレクトロニクスを巡る1つの時代の終焉を強く感じさせてくれました。
■繊細で妥協しないカリスマ
アップル社は、創成期にあった1980年から、私が経営する井之上パブリックリレーションズ(井之上PR)が約7年間、クライアントとして仕事をしたことがある、私にとっては想い出深い会社です。
アップルが日本法人を設立する際には、当時九段南にあった井之上PRの一室に「アップル・ジャパン設立準備オフィス」を設けるなど、アップルの情報拠点としてパブリック・リレーションズ(PR)をはじめ広範にわたる支援を行いました。
8月29日号のこのブログでも紹介しましたが、ジョブズ氏は「とんがったカリスマ青年」として、常にパソコン業界の渦中にあって話題を振りまいていました。
ジョブズ氏はその強烈な指導力で、2010年3月に時価総額で小売大手のウォルマートを抜き、5月にはマイクロソフト、そして今年の9月には巨大石油メジャーのエクソンモービルを抜き、3571億ドルで世界一の公開企業(FTSE9月14日現在)に育て上げたのです。
驚異的な成功の秘密は、彼のカリスマ性とともに、その妥協しない開発精神にあります。小さな会社がのし上がっていくには、他と同じことをやっていては成功しません。彼にとっては他社が容易に追従できない革新的な製品開発が絶対でした。
その精神が、パソコンに始まり、デジタル音楽販売、多機能携帯電話のスマートフォン、コンピューター・グラフィックス(CG)映画やIT関連分野などでの新製品や新サービスを生み出したといえます。
■日本再生にジョブズから学ぶこと
ジョブズ氏の訃報に先駆け10月4日千葉の幕張メッセでは、電機やIT(情報技術)の国際見本市のCEATEC(シーテック) Japan 2011が開催されました。2011年のテーマは「Smart Innovation 未来を作る最先端技術」。
これまでのCEATECは、最新のフラットパネル・テレビなど家電製品の展示会といったイメージでしたが、今年は家電製品のイメージはかなり薄れているようです。
クライアント企業のオンサイト・サポートで現地に出かけたスタッフの言では、会場ではスマートフォンやタブレットPCの展示に加え、EV(電気自動車)関連や環境、スマート・エナジーに象徴されるエネルギーに関連する展示が多かったようです。
その一方で、海外からの出展は残念ながら年々減少傾向にあり、もはや国際見本市というより日本企業を中心にした、国内展示会的な印象さえもたれつつあります。
今年単独で出展した海外企業で目立ったのはインテルとアナログ半導体大手のMAXIMの2社。サムスン、LGなどの韓国勢、台湾のHTCなどフラットパネルTVやスマートフォンで世界をリードする海外企業の出展は円高もあってか残念ながらありません。
こんなところにも日本のエレクトロニクス、そして日本の地位低下の影響が表れているのかもしれません。
日本企業の特色は、「どこも似たような製品を追求している」とされていることです。独創的・革新的な技術や製品展示があまり見られず、横並びの競合他社との戦いは価格競争に巻き込まれ、日本企業の低収益性の要因のひとつになっています。
そんな中で、CEATEC 2011に出展した海外企業の首脳のひとりからの勇気づけられる話があります。海外勢が撤退する中での今回の出展について次のような心強いコメントを残しています、
「EVやスマート・エナジーなどの分野で、日本の技術は世界をリードしている。その日本で我々の技術をアピールし、日本企業と連携をとり世界戦略を推し進めるための投資は当然のことだ」。
スティーブ・ジョブズは、カリスマ経営者として機能面だけでなく、デザイン面など消費者がわくわくするような商品を開発する創造性とともに、新製品発表などの機会では聴衆の心を惹きつけるスピーチの巧さや高いプレゼンテーション能力も持ち合わせていました。
トップのストリーテリングで重みを持つのは、その言葉にどれだけ説得性があるかです。ストリーテリングは、その人あるいはその企業だけにしかない個性的かつ独創的な話ができて初めて説得力を持ちます。
いま日本の再生を考えるとき、私たちは改めて彼の残した大きな足跡に学ぶ必要があることを感じます。日本再生の多くのヒントが彼の歩んだ人生の中にあるのではないでしょうか。
アップルがパソコン・ブームを起こし、日本メーカーが追従しPC事業を始めた80年初頭、彼は当時最も輝いていたソニーについて、いつも深い尊敬の心を持って語っていました。それは「いつかアップルをソニーのような創造的な会社にしたい」ということでした。時代の変遷を考えずにはいられません。
私には若いころのジョブズがあまり好きになれませんでした。とんがった青年の立ち振る舞いに対してなのかどこかに危なっかしさを感じていました。
しかしそのイメージを一掃してくれたのが、2005年6月12日にスタンフォード大学の卒業式で行った彼のスピーチです(http://www.youtube.com/watch?v=OaMT8fZpEXA)。
そのスピーチではじめて彼の生い立ちやその生きざまを知ることができました。彼は自分の人生を振り返りながら感動的な話をしたのです。
彼はスピーチの1年前に癌で余命3-6ヶ月の宣告を受けるなどさまざまな体験を語りました。そして、人生の中でどんな経験でも、無駄なものは何もないこと、だから今をしっかり生きなければならない、何よりも重要なことは、自分の心と直感に従って生きる勇気を持つことだと語りかけたのでした。
どのようなときにも自らを信じ、56年の生涯を駆け抜けたスティーブ・ジョブズ。
私たちはこれからあなたが残した足跡を通して、日本再生のために多くのことを学んでいくことでしょう。ご冥福を心よりお祈りします。
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「中国最新メディア事情」セミナーのご案内
インターネットやツイッターの爆発的普及により、中国のメディアは大きな変貌の時を迎えています。私の会社(井之上パブリックリレーションズ)では、日々変化する中国経済とメディア事情に精通した日・中お二人のジャーナリスト、アジア通信社社長の徐静波氏と朝日新聞国際編集部次長の野嶋剛氏をお招きして「中国最新メディア事情」セミナーを企画いたしました。両氏の豊富な取材経験に基づいた最新の中国メディア情報と中国市場における日本企業のメディア・リレーションズに対するアドバイスは、現地での事業成功の大きなカギとなると考えております。ぜひこの機会にご参加ください。
■詳細・お申込み:http://www.inoue-pr.com/
■日時:2011年12月5日(月)14:00~17:00
■会場:丸ビルホール&コンファレンススクエア
8F Room 1 東京都千代田区丸の内2-4-1丸ビル
■参加費:6,000円(税込)
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井之上パブリックリレーションズ(井之上PR)は5月12日に地方自治体など公的機関向けに「ツイッターマニュアル」を無償で提供することを発表しました。ご興味のある公的機関の皆様は是非、お問い合わせください。詳しい情報はWebサイトでご覧になれます。
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日本パブリックリレーションズ研究所(JPRI)では、東日本大震災で風評被害の深刻な影響を受けた観光業界、とりわけ自治体観光局や観光関連団体に対し、「風評被害を避けるための情報発信方法」の無料相談を5月25日より開始しました。詳しい情報はWebサイトでどうぞ。
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2011年10月03日
「自由の鐘」が60年ぶりに日比谷公園に復活
~パブリック・リレーションズとの歴史の重なりを思う
皆さんお元気ですか、井之上 喬です。
皆さんは、1776年にアメリカ合衆国13州の独立宣言の際に、アメリカのみならず全世界の人々の自由を願い、打ち鳴らされた「自由の鐘」(Liberty Bell)のことをご存知ですか?
この鐘は現在でも米国ペンシルベニア州の都市フィラデルフィアの独立記念館前のパビリオンに展示されています。
今日は、約60年前に日本に建設され、そして復活した「自由の鐘」のお話です。
■マッカーサー将軍が提案
今回ほぼ60年ぶりに復活した「自由の鐘」は日比谷公園にあります。フィラデルフィアと同様に青銅製で高さ約1メートル、直径約1.2メートル、重さ約1トンある実物大で、レプリカではなく実用として仏パッカード社がNo.56号として製造した由緒あるもの。
終戦直後、連合国軍総司令官だったマッカーサーの提案を受けた米国の市民有志が、自由の恩恵を受ける社団法人日本新聞協会に鐘を寄贈しました。
新聞協会は日比谷公園内に塔を造り、鐘とともに東京都に寄贈して、1952年10月24日に安井誠一郎都知事(当時)により除幕式が行われました。
この「自由の鐘」の日本における誕生については、塔の正面に嵌められた碑文に次ぎのように刻まれています(和訳を参照ください)。

自由な国の自由な国民に捧げる(和訳)
フィラデルフィアの独立記念館にある名高い自由の鐘の複製は、ダグラス・マッカーサー将軍の提案により、アメリカ人の有志によって日本の人々に贈られたものである。
この贈り物はアメリカ合衆国財務長官のジョン・ウェズレー・スナイダーによって授与の手配がされた。
鐘の寸法、音色は1776年にアメリカ合衆国の独立で鳴り響いた実物の鐘と同じものである。自由の鐘はアメリカ人だけでなく、人類全体の自由の象徴となっている。
この象徴の前に立つ時、アメリカ合衆国の憲法制定者と同じように、自由の信念を自由を手にした国民と共に分かち合い、共に人々に捧げる機会を得ることだろう。
しかしその後、中心部の振り子が失われたこともあり、鐘の音色を響かせることが久しく絶え、鐘を吊るす塔(高さ約7.6メートル)全体も老朽化で傷んでいました。
こうした状況を偶然目撃した安藤広重浮世絵美術館(東京都板橋区)のオーナー高田明氏は、昨年末、復活に賛同する仲間とともに「自由の鐘」修復募金委員会を結成し、修復資金づくりのために千円募金活動を開始しました。
今年4月には修復に必要な寄付も集まり、この10月1日、打ち初め式典が催されたのでした。
長年つきあいのある経済ジャーナリスト(元朝日新聞編集委員)阿部和義さんが、「自由の鐘の会」会長となっている関係もあり、今回私の会社のスタッフがプレス対応を手伝いました。
打ち初め式では、3・11や9・11の犠牲者への思いを馳せつつ、相手の心に訴えるような重厚な鐘の音が日比谷公園に響き渡りました。
YOMIURI ONLINEが打ち初め式のリハーサル時(9/30)の映像と鐘の音を収録し、ネットで配信しています。「鐘の音」を下記URLから聴くことができます。
http://www.yomiuri.co.jp/stream/press/movie.htm?id=26051&feed=26051
■自由あってのパブリック・リレーションズ
20世紀初頭に米国に登場・発展したパブリック・リレーションズ(PR)は、日本の民主化政策の一環として戦後GHQ(連合国総司令部)により導入されたものです。
日本でのパブリック・リレーションズの誕生、ここでもマッカーサー将軍が登場します。私の中では「自由の鐘」とパブリック・リレーションズの歴史が重なってきます。
1952年、「自由の鐘」の除幕式が行われた頃の日本のパブリック・リレーションズ業界はその発展史のなかで、極めてアップダウンの激しい特異な時期の最中にありました。
51年に日経連は戦後初の「経営視察団」を米国に派遣し、ヒューマン・リレーションズやパブリック・リレーションズを調査。この年は、PR関係書の出版も盛んで、PRの普及に拍車のかかった時期でした。
しかし翌年の1952年になるとサンフランシスコ講和条約が締結・発効し、GHQが日本から去り、占領政策の再検討の機運と財政の窮乏のために広報活動は急速な下降線を描くのでした。
私が提唱する、倫理観や双方向性と自己修正機能を内包するパブリック・リレーションズは、民主主義と自由競争原理の働く社会で真価を発揮するもので、その発展には言論の自由をはじめ人身の自由、信教の自由など、どれも欠かせない要素となっています。
いわば自由は、パブリック・リレーションズの生命。こうした想いで復活した「自由の鐘」の音を聴くとき、パブリック・リレーションズの明るい未来を感じるのは私ばかりではないでしょう。

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2011年09月26日
中国メディアの最新事情
~中国市場では「見える活動」が重要
こんにちは井之上 喬です。
9月23日(金)は秋分でした。「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉がありますが、これで残暑も和らぎ凌ぎやすくなってくるのでしょうか。
さて今回のブログでは、「中国メディアの最新事情」をお届けします。私の会社(株式会社井之上パブリックリレーションズ:http://www.inoue-pr.com)では、昨年7月に設立40周年を迎え、これを記念して『井之上喬のエグゼクティブのためのPR講座』を本年 6月から毎月1回のペースで開講しています。
9月のPR講座にはゲスト講師として徐静波さんを迎え、特別セッションを組みました。今日の話はこのセッションからの情報です。
在日20年を超える徐静波さんはアジア通信社代表取締役社長。日本語の中国経済専門紙「中国経済新聞」編集・発行人で中国語版日本ニュースサイト「日本新聞網」( http://ribenxinwen.com/ )編集長(井之上PRとの協働事業)。
中国共産党全国代表大会および全国人民代表大会の取材を中国政府から認められた只一人の在日記者として、徐さんは日中で著名なジャーナリストです。
■ネット人口は6億人、ツイッター3億人
いま中国のメディアで最も影響力の強いのがインターネット。インターネット人口はなんと6億人といわれています。中国ではネットメディア相互間の記事リンクは当たり前で(日本では著作権の問題で不可)、話題性のある記事はあっという間に中国全土に拡散します。
ツイッターも3億人が利用しているそうです。徐さんによれば、7月に浙江省温州市で乗客ら40人が死亡した高速鉄道事故の際は、生中継に近いかたちでツイッターによる現場報告がなされたようです。
政府のネット規制があったにもかかわらず、規制から逃れやすいツイッターを使った情報発信がメディアの役割を果たしたといいます。
中国ではテレビをよく観るのは在宅の老人。新聞などの紙媒体は、都会紙(日本での夕刊紙)は読まれているものの、中国共産党中央委員会の機関紙である人民日報は、ほとんど読まれていないのが実情。
だから日本企業がTV媒体を使うときなどは、日本と異なったTV事情を考慮しなければターゲットの補足を誤ると語っています。
徐さんの目から見ると、日本と中国は隣国で長い歴史的関係を有しているにもかかわらず、日本人の中国人の思考法や価値観に対する理解は遅れている、というよりも全くできていないようです。
そのことは昨年、中国市場でトヨタ車約69万台をリコールした際の事例を聞かされ、納得させられました。
徐さんによると、「中国車はリコールをしない」。中国ではリコールをする車は、欠陥車と見られるために、問題が発生した車をこっそり修理して戻す習慣が根強くあるようですが、トヨタのように日本車は顧客の安全を第一に考え欧米車と同様、すぐリコールをしているそうです。
けれど事前の説明が十分されないトヨタ車のリコールは、中国国民には品質の悪さが原因と受け取られたようです。「生命を大切にする、生命に対する責任感」というリコールの背景にある企業理念が伝わらず、安全技術に欠陥があるから回収するといった誤ったイメージを与えているとしています。
中国市場でパブリック・リレーションズ(PR)活動を行う場合は、こうしたメディア事情や中国人の価値観、商習慣などを理解したうえで戦略づくりすることが重要となります。
■中国市場でのPRはどうすればよいのか?
これまでのところ、日本製品に対する中国人消費者のイメージは一般的に高く、例えば、ソニーブランドを持つことは中国人にとっても誇りであるようです。
その要因として、先ずは品質が優れていること、日本企業のサービスの良さやトラブル対応の良さ、といったことが挙げられます。但し問題は、中国製品の2倍以上ともいわれる価格です。2倍の価格でも価値があることをPRを通してしっかり伝えていかなければなりません。
また徐さんは、「中国において多くの日本企業はCSR分野で貢献しているものの、それをPRしている日本企業はほんどない。米国企業は積極的にPRしている」。
そして「良いことをして、それを口にしないというのは日本の美徳かもしれないが、中国では『見える活動』が大切」とPRへの取り組みが欧米企業と比べてきわめて希薄であると徐さんは語っています。
つまり、日本企業はCSRや自社製品の付加価値性を欧米企業のように積極的にPRを通してしっかり中国社会や市場に伝え、理解を求めていくことが不可欠となっているとしているのです。
ところが私が見る限り、日本企業は、欧米企業に比べ圧倒的に広報の人材が不足しているにもかかわらず、これまでのところPR会社に業務を委託するといった姿勢は一部を除いてあまり見られません。
徐さんによると、「日本企業の現地法人のトップは、本社の課長クラスであるため重要な経営やマーケティング・マターに対する決定権が無く、メディアからの取材に対応できず逃げ回っている」といった笑えないような現実があるとしています。
周知の通り中国は、従来の安く豊富な労働力と広大な土地を提供する加工生産基地から、生産したものを自国で販売する、さらには「メイド・イン・チャイナ」ブランドで欧米へ輸出する国に変貌し、世界第2位の経済大国へと成長を遂げています。
日本にとって古くて新しい中国。今年7月23日の高速鉄道事故のマスメディアの報道にはこれまでとは少し違ったオープンな姿勢が認められました。
こうした中国におけるメディア報道の新たなフェーズを迎え、当社の中国事業支援室では、中国進出企業の広報担当者を対象に今年11月、徐静波さんと中国での駐在経験のある日本人ジャーナリストを講師に迎え「中国メディアの最新事情セミナー」を計画しています。
セミナーの講演内容や日程などが決まりましたら、このブログを通して皆さまにお知らせしたいと思っています。
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2011年08月22日
節約志向を強める「レジャー白書2011」
~「ポジティブ・オフ」運動が余暇市場を変えるか
こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
先日、愛媛県弓削島から夏季休暇を終え東京に戻りました。毎年8月私は亡き母のふるさと弓削島に行きます。今年96歳になった叔母やいとこたちと弓削で出会うと少年時代にタイムスリップしたようです。
愛媛県の東北部、広島県境に位置し瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ上島町は2004年に弓削町・生名村・岩城村・魚島村の4町村が合併誕生。
その中で弓削島と、佐島、生名島(やり投げの村上幸史選手のふるさと)は橋で結ばれていて、サイクリングやウオーキングが楽しめます。町役場がある弓削島には昨年まで国民宿舎の「弓削ロッジ」がありましたが、今年5月にはそのロッジが町営となり新たにインランド・シー・リゾート「FESPA」(http://fespa.jp)として新築オープンしました。
さて昨年8月23日のブログでは、「有給休暇を使い切る国別ランキング」を採り上げましたが、そのとき紹介した調査は、ロイターと調査会社イプソスが24カ国の約1万2500人を対象に実施したものでした。
1位はフランスで何と89%、次いでアルゼンチンが80%でハンガリー78%、英国とスペインが77%でここまでがベスト5。70%以上の国はサウジアラビア、ドイツ、ベルギー、トルコ、インドネシアと続いています。そして肝心な日本は33%で最下位となっていました。
今回は今月3日に日本生産性本部が発表した「レジャー白書2011」から日本の余暇市場についてお話します。さて、日本人はどんな余暇の過ごし方をしているのでしょうか。
調査は今年1月、全国15~79歳の男女を対象にインターネットで実施し、3,728人から回答を得たものです。したがって、ここには東日本大震災の影響は反映されていません。
■余暇市場は前年比2.1%減
「レジャー白書2011」によると、2010年の余暇市場は消費者の節約志向を反映し前年比2.1%減の67兆9,750億円と2年連続で70兆円割れという結果になりました。
消費者の支出金額を部門別に見ると、全体が低迷する中で伸長したのは映画などの趣味・創作部門(6.3%増)と観光・行楽部門(1.0%増)だけでした。
一方、スポーツ部門はゴルフ練習場やスキー場の不振が目立って1.4%減。娯楽部門はパチンコやテレビゲーム市場の縮小が響いて4.7%減という結果でした。
余暇活動への参加人口では、トップ4までは前年とまったく同じ。1位は「ドライブ」の6,290万人で、高速道路の料金値下げ効果が現れています。2位は「国内観光旅行」の6,150万人、3位は「外食」の6,040万人、4位は「映画」となっています。
前年より順位を上げたのは5位(前年6位)の「動物園、植物園、水族館、博物館」です。昨今の動物ブームや動物園などが魅力的な施設作りをした結果なのでしょうか。
もうひとつは13位(同16位)の「学習・調べもの」で、小惑星探査機「はやぶさ」が帰還した後の科学ブームが後押ししたようです。
■「ポジティブ・オフ」運動とは
フランス人のほとんどが、夏季に連続1ヵ月ほどの休暇を取るといいます。
フランスの法律(マティニョン法)により、毎年連続して2週間までの有給休暇が付与されています。有給休暇の消化率が24カ国中で最下位の私たち日本人にとってなんとも羨ましい話ですね。
日本でもこうした海外の事情を反映してか、先月に観光庁が内閣府、厚生労働省、経済産業省と共同して「ポジティブ・オフ」運動を提唱しています。
この運動は、休暇を取得して外出や旅行を楽しむことを積極的に促進し、休暇(オフ)を前向き(ポジティブ)にとらえて楽しもうという趣旨のものです。
また、「ポジティブ・オフ」運動は、その趣旨に賛同する企業・団体により実施されるもので、観光庁は賛同企業が既に70社を超えたことを8月8日の段階で明らかにしています。
この運動は東日本大震災で被災を受けた地域へのボランティア旅行などの社会貢献活動や地域経済の活性化、そして今夏の家庭や企業の電力需給対策にも繋がっています。
以前、日本人は諸外国から「エコノミックアニマル」と呼ばれたことがありました。「経済上の実利ばかり考える動物」といった意味合いで、この言葉は1969年の流行語にもなりました。
男性も含めた「育児休暇」や「子の看護休暇」、「介護休暇」なども制度化され、「エコノミックアニマル」と呼ばれた当時よりは随分休暇は取りやすくなってはいますが、欧米と比べるとまだまだ遜色があります。
観光庁が長期的に休暇を楽しむライフスタイルやワーク・ライフ・バランスの実現を目指すこの休暇改革への取組みは、国民のニーズや時流にミートし、評価できる施策だと思います。
もうひとつ夏休みにちなんだ話題に触れたいと思います。8月14日の朝日新聞(朝刊5面)の「夏休み『帰省』4割 過去最高」という記事に目が留まりました。
今年の夏休みをどう過ごすかについて明治安田生命保険がインターネット調査(20-59歳の男女1,102人)したところ、1位は「自宅でゆっくり」(59.2%)で、2位が「帰省」(40.2%)。2006年の調査開始以来、「帰省」は最高のポイントを示したとのことです。
帰省の目的は「親・兄弟に会いたい」(83.5%)が最も多く、次いで「墓参り」(52.6%)、「実家でくつろぐ」(33.2%)という順でした。
この調査には日本人の家族の絆を大切にする姿勢が認められます。こうしたところにも東日本大震災の影響が表れているようです。
さて、皆さんはどんな夏休みを過ごしましたか?
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*8月20日付の読売新聞「論点」(11面)に、私が執筆した「安心与える戦略広報を-原発事故の情報提供」が掲載されました。
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2011年08月15日
終戦記念日に思う
~「絆(kizuna)」がつくる戦争のない世界
こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
今日は終戦記念日。今年も8月15日を亡き母のふるさと愛媛県の弓削島で迎えています。
1941年12月8日の日本軍による真珠湾攻撃に始まり、45年8月6日の広島、8月9日の長崎への原爆投下を経て、66年前の8月15日、日本はポツダム宣言を受諾し戦争は終結しました。
毎年8月になると悲惨な戦争体験が風化することのないように、メディアもさまざまな形で報道しています。
特に今年は、3月11日の東日本大震災における福島原発事故による放射能汚染問題を広島・長崎へ投下された原爆による放射能汚染問題と重ね、日本の平和が原発問題の解決なしには担保できないことを伝えています。
■豊かな自然エネルギーで平和を維持する
3・11を経験しポスト原発の課題を背負った日本は、将来のエネルギー問題の解決に向けて世界のお手本(モデル)になれるのではないかと私は考えています。
世界は、国家間の利害やプライドの衝突で戦争を引き起こします。第2次大戦が天然資源とりわけ石油資源争奪のための戦争とも言われているように、石油資源をめぐる争いは戦争の引き金になりやすい問題となっています。
尖閣諸島をはじめ、対立が激化する中国とベトナム、フィリピンとの間の南シナ海の島嶼(とうしょ)をめぐる領土問題も、海底に埋蔵されているガス田や油田などのエネルギー資源が問題の根底にあるといわれています。
原発事故を契機に菅政権により提出された「再生可能エネルギー法案」は8月末にも国会の承認を得られることがほぼ確実視されています。
再生エネルギーとは、太陽光(熱)、風力、バイオマス、水力などから作り出すグリーン・エネルギー。
これらの自然エネルギーを代替エネルギーとして積極的に開発、導入することで日本は世界に対しCO2のない社会を提示できるはずです。
福島原発事故を受け自然エネルギー開発に大きく舵を切ろうとしている日本にとって8月は、新たに地産地消型グリーン・エネルギー国家を目指す決意を表明する象徴的な月となりそうです。
■「絆」が世界平和をもたらす
東日本大震災で見せた日本人の絆の強さは世界を魅了しました。
戦争は相互理解と相互の関わりがある状態では起きることはありません。国家と国家の前に、個人と個人との絆の醸成ほど重要なものはありません。
インターネットが広く普及した社会では、内容によっては国家間の情報よりも個人間の情報がストレートで速報性があり相互理解や相互の関わりを深めるには有効といえます。
特にインターネット規制の外側にいる携帯によるツイッターの普及は目覚しく、政府の不当な規制を乗り越え、草の根レベルの交流を通して絆づくりが実現しやすい環境にあるといえます。まさに21世紀型の国際的個人間連携。
日本は戦後66年間一度も戦争を起こしていません。私たちは悲惨な体験から戦争の無意味さを体験を通して学んだからです。
昨年のこのブログでも書いたように、戦争は、誰もが傷つけられる非人間的な行為。
私たちすべての日本人には、戦争の、そして原爆の悲惨さを後世に伝え、2度とおろかな失敗を繰り返さないために「戦争」と戦い、いかなる「戦争」をも排除しなければなりません。
8月15日は日本人として、2000万人を超えるアジア諸国民を巻き込んだ慰霊の日でもあることを忘れてはなりません。
国境や民族を越えた出会いが増えていくなか、それぞれの価値観や世界観を尊重しながら、絆づくりを行っていくことができますように。
私たちは戦争の記憶を風化させることなく平和を築く責任を共有しなければなりません。
またパブリック・リレーションズ(PR)の実務家として、二度と同じことが繰り返されないようにさまざまな問題にインターメディエータ( 仲介者)としてリレーションシップ・マネジメントを通して役割を果たさなければなりません。
最後に、故ローマ教皇ヨハネ・パウロII世が1981年に来日し、訪問先の広島で発した一節を紹介します。
「戦争は人間のしわざです。戦争は人間の生命の破壊です。戦争は死です。過去をふり返ることは将来に対する責任を担うことです。」(広島『平和アピール』)
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2010年07月22日
急成長する中国人向け国内観光市場
~観光ビザの発給要件が大幅に緩和
こんにちは井之上 喬です。
毎年8月、9月は日本人の海外旅行がピークを迎える時期になります。昨年の実績(法務省出国統計)では8月が1,516,588名、9月は1,590,607名で年間最高となりました。
こうした本格的な旅行シーズンを前に、今回のブログでは急拡大する訪日する中国人観光客の動向についてお話しようと思います。
■10年後に訪日外国人2,500万を目標に
観光は、日本政府が策定を進めている新成長戦略においてもひとつの柱に位置づけられています。2009年は約680万人であった訪日外国人数を2020年初めまでに2,500万人、将来的には3,000万人という目標が掲げられ、なかでも訪日中国人数の拡大が期待されています。
2009年の訪日中国人数は国際的な金融危機による景気後退にもかかわらず、団体観光客を中心に100万人を超えて来日外国人の15%を占め、韓国(22%)、台湾(15%)に次ぐ規模でした。
今年7月からは個人向け観光ビザの発給要件が大幅に緩和され、発給対象世帯がこれまでの10倍の1,600万世帯に拡大すると見込まれています。わが国の観光庁の統計によれば、2010年1月-5月の訪日中国人数はすでに昨年同期比36%増の勢いを示しており、今回の措置によってさらに拍車がかかることになります。
また、中国人観光客の平均消費額は12.8万円と、韓国(6.8万円)や台湾(11.8万円)を上回り、欧米先進国(米国15.0万円、英国13.1万円)と比較しても見劣りしない水準にあります(出典:三菱東京UFJ銀行の「経済レビュー」)。
2006年以降では、中国は日本にとって最大の旅行収支(来日外国人が滞在中に支払った財貨・サービスの対価)の受け取り国となっています。昨年は2,364億円と全体の四分の一を占めています。特に生活家電や化粧品といった物品の平均購入額が7.9万円と主要国の中では最も高く、ショッピングが来日の大きな目的となっています。
■観光特集企画「魅力の日本 ~お国自慢ベスト3~」
一方で日本の伝統的な景勝地などを訪れ、日本文化の体感を目的に訪日する中国人観光客も増加しつつあります。
ショッピングが来日の大きな目的ということでは、その高い購買力の恩恵を受ける地域やショッピングスポットが一部に固定され、拡がりをもてません。不振にあえぐ地方自治体においては、今後中国からの大幅な観光客増に対応するための取り組みが求められます。
こうした背景のなかで私の会社(井之上パブリックリレーションズ)の中国事業支援室と中国語による情報サイトである「日本新聞網」(www.ribenxinwen.com)を運営する株式会社アジア通信社(東京都港区、徐 静波社長)とが協働して地方活性化観光特集『魅力の日本 ~お国自慢ベスト3~』 を企画しました。
この企画は、全国各都道府県別の「お国自慢ベスト3」(景勝地、物産品、温泉・宿泊地、祭りなど)を同サイト内で紹介し、日本の魅力を伝えることによって、多くの中国人観光客に日本の歴史・伝統・文化を理解していただくとともに、訪日機会の創出や日本での観光をより楽しんでもらおうという狙いをもちます。
現在、こうした目的で中国人観光客に勧めたい都道府県ごとの情報募集を始めています。掲載は無料で9月から漸次「日本新聞網」にアップしていく予定です。
この特集企画に関連して先週、ある観光業界紙の編集委員の方とお話する機会がありました。彼は「観光客誘致のためには地域ごとの交流人口拡大が不可欠。そのためには観光客に対する地域をあげたホスピタリティ精神が重要となる」と語っていました。
観光客と地域社会との良い関係性をどのように構築していくかは、まさにパブリック・リレーションズ(PR)の課題です。地方自治体がこのテーマにどのように取り組んでいくのか、また全国都道府県からどのような「お国自慢」が寄せられるか今から楽しみです。
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2009年10月26日
病める地球の健全化に向けて
~「DEVNET賞」贈賞式より
こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。
私が常務理事を務める国連開発計画NPO法人日本DEVNET協会(JDA:以下DEVNET)は、1986年にガリ元国連事務総長らにより設立された国連開発計画DEVNET ASSOCIATION(本部:ローマ)の一員。同協会の事業活動のひとつとして2005年度より「DEVNET賞」を設け、発展途上国の産業・技術支援、社会・文化支援、人材開発、情報交流、女性の社会的活動・起業支援などの分野で継続的な活動の成果を挙げた個人、団体、組織を表彰しています。先日、その贈賞式が有楽町の日本外国人特派員協会記者クラブで開催されました。
■情報化社会における新たな社会貢献モデル
DEVNETとは、Development-Networkを縮めた言葉。そこには情報交流ネットワークを活用し世界が抱える問題解決に貢献しようとの思いが秘められています。いわば情報化社会における新たな社会貢献モデルともいえます。現在の参加国は100カ国を超え、約50万社に技術情報が提供されています。日本では今年3月まで会長を務められた片方善治さんにより2004年から活動が始まっています。
DEVNET賞は、これまで技術、産業分野での活動に対する「TIPS(Technological Information Promotion System)賞」と女性の社会的活動に対する「WINNER (Women into the New Network for Entrepreneurial Reinforcement)賞」の二つのカテゴリーがありました。2009年度からはこれら二つの賞が片方前会長の「病める地球の健全化に向けて」の目標のもとに「DEVNET賞」として統合されています。
2004年の第1回DEVNET賞「多年にわたり途上国留学生支援活動の継続」(長谷部グループ会長長谷部平吉)を皮切りに、2007年には「途上国の地雷除去活動で献身的な活躍」(山梨日立建機社長雨宮清)と「学校建設など途上国の子どもたちへの支援活動の継続」(国際平和基金財団理事川本貴美江)が選ばれました。
2008年は「太陽光発電装置の技術及びシステムを開発途上国に提供するとともに生活向上のための技術指導に寄与した功績」(京セラ株式会社佐倉ソーラーセンター)と「開発途上国に対して国際的レベルの医療看護の技術転移を行い、また支援・指導の奉仕、及び災害発生時における献身的救護活動の功績」(医療法人徳州会理事長徳田虎男、インドネシア・バリ島タバナン県立病院女医スリ・カルヤワチ)に贈賞されています。
■リコーの地球市民としての取り組み
2009年度DEVNET賞は、「生物多様性を保全するための生態系保全」を目的に、ガーナ、フィリピン、マレーシアなど各地の熱帯性雨林回復に寄与した功績に対して株式会社リコーおよび関連会社で構成されるリコーグループに贈賞されました。この贈賞は、DEVNET賞選考委員会(委員長:濱田泰三早稲田大学名誉教授)が 1)活動の意義とその成果、2)継続性と波及効果、3)応募者(社)の姿勢などについて厳正な審査を行い、決定されたものです。
リコーグループは、1992年に環境綱領を制定し環境保全活動と経営活動を同軸であると捉え、地球市民の使命として自らの責任で地球環境保全に取り組んできました。リコーの社会貢献活動は1976年の環境推進室設置にさかのぼりますが、今回の贈賞となった生物多様性保全プロジェクトは1999年に始まります。当時、オフィス機器事業で紙を扱う企業として限りある森林資源の保全に取り組むべきであるとして環境NGOや問題を抱える地域住民との連携により「森林生態系保全プロジェクト」が開始されたのです。
「熱帯雨林回復」プロジェクトには、いくつかの共通点が認められます。一つは持続的森林農法を普及するための地域住民に対する意識啓発や教育。二つ目は、単に地域の発展モデルを提案するだけでなく、現地政府、行政機関や地域住民と共同でプロジェクトを推進し、技術移転や人材育成を行って持続可能な事業として定着させていることです。興味深いことに、このプロジェクトの責任者(社会環境本部長)は、機械出身で同社の理事・技師長の谷達雄さんです。途上国プロジェクトの奥深さが伝わってきます。
ここにはパブリック・リレーションズ(PR)の手法であるコミュニティ・リレーションズやガバメント・リレーションズが応用されています。
このような賞を通して、発展途上国でパブリック・リレーションズが実践され、その認知やニーズが現地社会で拡がっていくのは私たちパブリック・リレーションズ関係者にとって大変嬉しいことです。
2009年06月08日
水素研究会スタート
~100%CO2のないグリーン水素とは
いま地球温暖化の元凶として、化石燃料による二酸化炭素(CO2)問題が世界の共通課題として急速にクローズアップしています。とりわけ地球温暖化問題がテーマとなった「北海道洞爺湖G8サミット」以降、脱石油を合言葉に、化石燃料からの脱却に拍車がかかり、太陽光、風力、バイオマス等の自然エネルギー及び原子力などの代替エネルギーの開発競争が世界の先進国の間で行われています。
このブログでも以前紹介したことがあるクリーンな代替エネルギー開発の中で、究極のエネルギー源として注目を浴びる水素エネルギーの研究会が先日スタートしました。水素研究会の参加者は、水素開発の専門家と関心の高いジャーナリスト、企業で水素とのかかわりを持つひとなどで構成されています。
■意外に身近な水素
水素を作り出すには、水を電気分解する方法が一般的によく知られていますが、この方法は分解するのに必要な電気を何によって作り出すかで、CO2排出量が異なります。電気から水素を作っても、化石燃料から電気を作る時に既にCO2を排出することになり、加えて日本では電気は高く、工業的にはメタンから水素を作っています。しかし、このメタンから作る方法だと安価に水素を作れますが、CO2を出してしまいます。そこで、注目されているのが原子力の一つである高温ガス炉を使った水素生産。
研究会に先立つ今年の2月、日頃懇意にしているジャーナリスト、企業で環境関係の研究者などと茨城県大洗の日本原子力研究開発機構にある「高温ガス炉」を見学しました。これまで原子力と名のつくものには本能的に拒絶反応を示していた私が、そこで見たものは、原子力に対する恐れを根底から覆してくれました。
現在、燃料電池に使われる水素は、上述のように、水蒸気改質法と呼ばれる方法で天然ガス(メタン)から作っていますが、メタンを使えば、石炭・石油よりも少ないとはいえ、前述のようなCO2を排出していることには変わりはありません。ですから究極は、水素を生成する段階でCO2を排出しない水素生産が重要となります。このようにして作られた水素をグリーン水素といいます。
先日の研究会で、これまでの「水素の登場はまだ先」とする概念を一掃するような話を伺いました。それは水素事業に50年以上かかわっている企業の方の話でした。「家庭での水素利用には現在使われている都市ガスシステムをそのまま転用できうる」というものです。現在ガス会社が力を入れているのは、家庭用燃料電池を普及させることで、燃料電池に必要な水素は都市ガス(天然ガス)を使った水素抽出法。
興味深いのは、既存の都市ガスに40-50%でも水素を加えることで、CO2もさらに少なくなり巨大な水素需要が起きるのではないかということです。高温ガス炉で水素製造するには、社会での大量な水素需要が前提条件となるからです。
現在使われている水素は主として、石油精製の過程や製鉄所でのコークスなどから取れる副生水素と前述の天然ガスから作る水素です。水素自体は燃料電池で酸素と結合し、「水」になるだけで、CO2はゼロですが、石油、コークス(石炭)、天然ガスには炭素「C」が含まれていることから、これら化石燃料から水素を作った場合は、グリーン水素とはいえません。
したがってCO2を全く出さない高温ガス炉や自然エネルギーから水素を作れば、水素を作るための天然ガスや石油も必要なくなる。というわけで、CO2削減には一石二鳥の話。エネルギー密度の小さい自然エネルギーとエネルギー密度の大きい原子力による高温ガス炉が役割分担し、水素社会の実現に向けての開発が行われています。
■世界最先端を行く高温ガス炉
現在、日本や世界で稼働している原子力発電は、ほとんど軽水炉型、つまりスリーマイル島で使用されていたものと同じもので、300度程度の熱で水を水蒸気にしてタービンを回し電気を作る発電システム。これに対し、高温ガス炉はヘリウムガスを用いて、1000度に近い高温の熱を取り出すものです。
冷却水がなくなる事故が起きた際に、前者は原子炉に水を注入冷却し、治めるのに対し、高温ガス炉は炉の運転をそのままにしておいても、自然に安定・安全な状態に落ち着くシステム。また大型で多くの水を必要とする軽水炉が川や海に隣接したところで建設されるのに対して、小型で山奥でも建設できる高温ガス炉は利便性も高いように見受けられます。
日本の高温ガス炉は、研究炉で5年前に世界に先駆けて摂氏950度を達成しています。世界では以前ドイツが700度を達成していましたが、原発停止により研究を中止。その技術が、南アフリカや中国に移転され、研究・実験レベルでは現在日本を除くと中国が実現温度700度で行っているだけです。
米国は、スルーマイル事故以来開発はストップした状態ですが、ブッシュ政権の終わりからオバマ政権に移行した現在、高温ガス炉で発電と熱エネルギー利用、特に水素製造用の二つの用途を追求する方針を打ち出し、開発を進めるべく法律で定めています。日本と同じ950度を2013年に原型炉を建設しようと計画していますが、この分野での日本の技術は世界一秀逸でその差は歴然。
なかでも、セラミックでウラン燃料を覆った直径一ミリにも満たない被覆燃料粒子球状粒子は芸術品としか表現できないほどのものです。
私が、水素エネルギーに魅せられたのは、2007年秋に地球温暖化に警鐘を鳴らしていた山本良一東大教授とお会いしてからです。翌年箱根での山本さん主宰の研究会に出席し、化石燃料に代わるクリーンエネルギーの開発に国家が真剣に取り組む必要性を感じるに至りました。
20世紀は石油資源をめぐる争いの世紀であったといわれていますが、水素はまさに理想的なエネルギー。日本は歴史上はじめて、水素エネルギー生産国となり、それらの技術を輸出する国になることが可能となるはずです。そのためには国家の意思が働かなくてはなりません。この分野では後発となる米国や他の国々に追いつかれ追い越されることのないように、国による戦略的な意思決定が求められています。
このような新しい流れを創り出さなければならないとき、パブリック・リレーションズ(PR)が有効に働くことは言うまでもありません。
2008年05月24日
異常な国日本
~自殺者ゼロを目指して
こんにちわ井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?
このところ、ニュースでまた「自殺」に関する報道が増えています。
その特徴も、最近の硫化水素自殺のようにまわりを巻き込むケースもみられ心が痛みます。
日本の自殺者の数は、1998年に3万2863人とはじめて3万人を超えました。以来3万人台で推移し、2006年は、3万2155人(警察庁:2007年6月発表)、2007年も3万人台を超えているとみられ、10年連続の大台記録樹立の汚名をかぶせられそうです。今日は皆さんと自殺について考えたいと思います。
■ 毎年人口3万人の都市が消滅
日本で発生する自殺の原因としては、健康問題、家庭問題、勤務問題、経済・生活問題などが挙げられますが、経済格差が広がりをみせる中で、このところ経済・生活問題による自殺者が急増しています。日本の自殺者の数(2004年WHO:人口10万人で24.0人)は国際的にみると、G8参加国の中で、ロシアについで2番目。米国の約2倍。イギリスの4倍となっています。
ここで3万人という数がどの位のものなの考えてみると:
1) 15年続いたベトナム戦争の米軍の総戦死者数、約5万8千人の半分を
上回る数
2) 昨年、54年ぶりに5000人台となった日本の年間交通事故死者の5倍を
超える数
3) そして人口3万人の地方都市がそっくり消滅する数
などいずれも、尋常ではない数字ということになります。
また年間1万人を越える米国の銃犯罪による死者の数は日本人にとって驚くべき数字ですが、3万人という数は実にその3倍ということになります(ちなみに自殺未遂者はその10倍といわれている)。
日本では自殺が文化の一部になっているようです。古来、武士道精神にみるように責任を取るために「腹を切ってお詫び」自決したり、年老いると「姥捨て山」を受け入れるなどの精神構造がいまだ残っているように思います。一部のメディアが、「自殺天国」という表現でこの社会的問題を捉えるのも根は同じということでしょうか。
■ 今こそ自殺防止国家キャンペーンを
小泉政権による構造改革では、自己責任の名の下で痛みを伴う思い切った政策が実行されました。しかしながらグローバル化の流れの中、「自己責任」という名のもとで、十分なセーフティ・ネットへの対応(十分なコミュニケーション)の怠りについても強い反省が起こっています。しかし自殺問題が社会的な大きな問題となっているにもかかわらず、この問題について国民的論議がなされていないことは信じがたいことです。自殺の直接の原因は過労や失業、倒産、いじめなどさまざまですが、この問題の解決に向けて真剣に取り組む姿勢は見られません。多くの日本人はこの話題を避けているのでしょうか。やむを得ず口にする場合は、異口同音に、グローバル化のひずみや経済の失速、失業者の増加などにその原因があると分析する程度。
日本は今こそ国を挙げて自殺防止キャンペーンを展開しなければなりません。自殺による人材損失がどの程度のものかデーターはありませんが、少子化で日本の人口が漸減していく中で、自殺者を減らすことは国益にもかなうはずです。かってはハンガリーと並んで自殺大国(2004年WHO調べ:90年に人口10万人あたり30.3)であったフィンランドなどの諸外国では、様々な自殺対策がとられています。残された遺族のケアや、増加する児童や生徒の心の問題に目を向けていくことなど、自治体も含めて社会全体で自殺予防に取り組んだ結果、約10年間で自殺者を30%も減らしたとしています。
WHO(世界保健機構)によると、自殺は「追い詰められた末の死」であり、「避けることのできる死(avoidable death)」としています。このことは、数年来、北九州市で生活保護受給に関連して起きた複数の餓死事件をみても理解できます。突き詰めると、受給者を増やしたくない役所の窓口の非人間的な対応に起因していたといえます。
また自殺する人の動機はいろいろあるようですが、生きる支えは、どんなにつらくても希望があることです。希望がなくなった時から人間は自らの存在の否定を始めるからです。
先日、あるテレビ番組で自殺者の心理について語られているのを観ました。理由はどうあれ、キーはコミュニケーションにあるようです。番組の中である自殺志望者は、「親にも見捨てられ(そう感じている)相談する人が誰もいなくなった結果自らの死を選ぶ」とコメントしていました。
人間の命は、天からの大切な授かりもののはずです。また人間はひとりで生きていくことはできません。誰でも「関わり」を持っています。自殺をする人が、他との関わりがなくなったと思い、失望して自らの命を絶つのだとしたら、社会で救いの手を差し伸べることができるはずです。パブリック・リレーションズ(PR)を適用する意味がここにあります。
2008年03月21日
家族力大賞~新しい絆を探そう

こんにちは、井之上喬です。皆さん、いかがお過ごしですか。
先日、さまざまな感動的な生きざまに触れることができました。テーマは「家族力」。社会が複雑化するなか、関わりをもって生きていくことが希薄になってきています。「家庭が壊れている」といわれてから久しい今日。その核となる家族に光を当てようと、東京都社会福祉協議会が今年度から家族力大賞(エッセイ・コンテスト)を始めたのです。
■ 「コロンボ寄金」を囲む家族
いま日本の国力が落ちています。それを支えるベースは家族。その家族の崩壊を憂えた方から昨春連絡をいただきました。その方は、同協議会会長の大竹美喜(アメリカンファミリー生命保険最高顧問)さん。大竹さんは、「家族にはいろいろな形がある。あたらしく家族力大賞を設け、人間の絆に支えられた家族の大切さをひとりでも多くの人に認識してもらいたい」と熱く語られました。
昔と異なり、家族の意味合いも随分変化し、さまざまな人間の絆を家族に見ることができます。エッセイ・コンテストには多くの作品が寄せられましたが、審査員の一人として参加した私にとってすべてが新鮮でした。そこには私の普段の生活の中では見ることができない世界があったからです。最後に絞り込まれた13作品はどれも素晴らしいものばかりでした。ワープロで書かれたもの、手書きのもの、応募者それぞれの環境が読者に伝わってきます。
最終選考では審査員の意見も割れるほど。読み終えて、一人ひとりの作者に会いたいと思わせるほどの、澄み切ったなかにも迫力を感じさせる作品ばかり。結局全員一致で、13作品すべてを入賞にすることに決めたのです。
3月18日、京王プラザホテルで開催された授賞式。ほぼ全員が出席するなか、最優秀賞を始め13の作品が表彰されました。授賞式では選考委員会(委員長:金子郁容慶応義塾大学教授)のメンバーの間で誰がどのエッセイを書いたのか、作者と作品を結びつけることに喜々とした視線が注がれました。
最優秀作品(東京都知事賞)は「コロンボ基金」。松田征士さんの作品。ストーリーは松田さんのご家族と中国から語学留学生として日本にきたアイリーン馬さん、そして中国出身で日本人に帰化し、後に馬さんの夫となる医師、謝さんとの交流を描いたものでした。
馬さんとの出会いは10年ほど前。居酒屋でアルバイトをしていた彼女に初めて知り合った松田さん。語学留学を終え、家族のいるオーストラリアに戻った馬さんが難病治療のために来日します。久しぶりの再会でしたが、そこで彼女が重い肺の病気を患っていることを知ります。
日本で医師になった謝さんは、幼友達でもあった彼女の不治の病を知り、馬さんが日本で治療を受けられるために結婚を決意。しかし唯一残された方法は肺の移植手術でした。1億円という気の遠くなる数字に呆然とする二人。そんな中、松田さんは偶然にインターネットで相談した友人から送られてきた寄付金がきっかけで、全国で募金の呼びかけをおこなう決心をします。
創設された基金の名前は「コロンボ基金」。偶然に松田さんが馬さんとの最初の出会いの前夜TVで観た、刑事コロンボのヒスパニック系への思いやりをイメージした名前でした。手術に必要な金額には及ばなかったものの、全国から100名を超える人々からの暖かい寄付金が集まりました。
馬さんは病魔と闘いながらも基金を取り巻く人々の善意と夫の愛に包まれて命を全うします。この作品は彼らの心のひだを繊細な描写で描く、心温まるストーリーです。
東京新聞賞には、大島史美さんの「名プロデューサー」が選出されました。家族の中でいつも孤独だった父。その父を理解できない娘。しかし娘が父親から離れて上京し働き始めることで父を理解していく。 相手を責めるのではなく思いやることの大切さを教えてくれる作品です。
血縁関係をもとにした伝統的な家族と、共に生きようとする意志に支えられる新しい形の家族。人々の生活が多様性を極める今日には、懸命に生きる意志と心遣いがあれば、さまざまな家族形態があっていい。どの入賞作品もそう思えるものでした。
■ 社会の影に光を
とても気になった作品は森田圭さんの「僕の視線」。筋萎縮性の難病、少年時代に筋ジストロジー症にかかった作者。その彼が、悩み、傷つき、その苦しみの中で希望を見出すという心の軌跡を描いた物語です。彼の鋭い感性で描き出された世界は、障害を持った人の視点から見た世界。そこで私は、健常者がいかに鈍感な部分を持ち合わせているのかに気づかされました。
他にも看護師の現状を訴えた作品、郷里の祖母の生き方について語った話。また、壊れた家族が生活を取り戻していく作品などを通して私は日頃接することはできない世界に出会うことができました。 そこで私は生きていく上での葛藤と喜びを新鮮な形で味わい、人生における本当に大切なものとは何かを少し学んだ気がします。
グローバル競争に組み込まれ、社会の影になりながらも必死に生きる人たちはこの世の中に多くいます。 私たちPRパーソンには、パブリック・リレーションズを通して、そのような人々にも光を当て、彼らと社会とを結び付ける役割があるように思います。
社会が本当に必要とするものを提供できる国。私はこれらの作品に触れたとき、日本がそのような国になって欲しいと願わずにはいられませんでした。
*上の写真の作品集『家族力大賞-新しい絆を探そう』には、13編の作品が紹介されています。東京都社会福祉協議会が発行元です。非売品ですが、50冊程度であればプレゼント可能だそうです。興味をお持ちの方は連絡してみてはいかがでしょうか。
Tel:03-5283-6894
Fax:03-5283-6997
e-mail: tomin-kigyou@tcsw.tvac.or.jp
2007年11月03日
社会貢献活動を支える熱い思いと使命感
~DEVNET賞贈呈式から
こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。
私が理事を務める国連開発計画NPO法人日本DEVNET協会(JDA:以下DEVNET)は、国際機関DEVNET ASSOCIATION(本部:ローマ)の一員。同協会は2005年度より「DEVNET賞」を設け、各年度に国際活動の場で著しく貢献した個人や組織の功績を称え顕彰しています。先日、その贈呈式と祝賀パーティが開催されました。
■ 情報交流ネットワークで問題解決
同協会は、会長を務められる片方善治さんが2004年より活動を開始。今年7月、内閣府からNPO法人として認可を受け、技術開発交流と女性活動支援を軸に様々な活動を展開しています。
設立の由来は、1986年。ガリ元国連事務総長らがDEVNET ASSOCIATION をローマに設立。DEVNETとは、Development-Networkを縮めた言葉。そこには情報交流ネットワークを活用し世界が抱える問題解決に貢献しようとの思いが秘められています。現在の参加国は100カ国。約50万社の中小企業が参画。
石田晴久(東京大学名誉教授、工学博士)さんが選考委員長を務める「DEVNET賞」には2つのカテゴリーがあります。技術開発とその支援・普及の業績を称えるTIPS(Technological Information Promotion System:情報支援システム)賞と女性の企業活動や社会活動とその支援・普及の業績を顕彰するWINNER(Women into the New Network for Entrepreneurial Reinforcement:女性起業家支援ネットワーク)賞です。
■ 現地への熱い思いと使命感
2007年度TIPS賞は、山梨日立建機の雨宮清さんが受賞。同社の社長でもある雨宮さんは1994年のカンボジア視察中、現地で地雷被害を受けた母子の悲惨な姿に遭遇し、対人地雷除去機の開発を決心。建設機械をベースに安全な地雷除去機の研究に没頭。ロータリーカッタ式の地雷除去機の開発に成功しました。99年カンボジアで試作機の稼動テストを行い、現地地雷処理機関で絶大な評価を受けました。
雨宮さんは平和な豊かな大地を取り戻すことで人々の自立、自活が達成されると考え、同機械を耕作機としても利用できるよう改良。これまで同機械はカンボジアを始め、アフガニスタン、タイ、ベトナムなどで使用され、現在52台の除去機がこれらの地域で稼動中です。
更に現地で教育訓練や農地開発などの活動と連携。地雷原から耕作地への転換を実現しました。現在ニカラグアでは跡地にオレンジやコーヒーが栽培され、カンボジアでは学校が設立され、現地の人々の生活を支えています。
そして今年度のWINNER賞は社団法人産業関係研究所の川本貴美枝さんへ贈られました。川本さんは、国際平和基金団体でアフリカにおける砂漠化防止や食料安定供給のための植林事業、井戸掘削業に従事。また現在、モンゴルでの救援プロジェクトの一環として貧困にあえぐ子供のための「大地の家」建設などを積極的に推進。長期的に現地で孤児の教育活動を行う女性指導者と共に奉仕活動を展開しています。
川本さんの話の中でとても感動的だったことは、何年か前の冬、モンゴルで大寒波のために200万頭に及ぶ家畜が死亡したとき、首都ウランバートルの街のマンホールや警察の留置所にはホームレスの孤児であふれかえっていたそうです。そんな逆境のなかでも子供達の輝く目を見たときに「この子達を何とかしたい。彼らの住む家を作ってあげたい」との思いが彼女の心を揺さぶったといいます。それ以来この「大地の家」の建設活動に奔走しています。
これら2つの活動に共通するのは、現地の人々の視点に立った活動を真摯にそして継続的に行なっているという点です。援助や奉仕活動には様々な難問や困難に立ち向かう粘り強さが要求されます。お二人の受賞のスピーチからは、現地の子供たちや人々を救いたいとの強い思いが使命感となり、多くの難関を乗り越えるエネルギーとなったことを感じとることができました。そして何かを成し遂げた人には、それぞれの動機が志となって困難にも打ち勝つ原動力となっているようです。
大学の授業でも感じることですが、最近NPOやNGOでの国際活動を志望する若者が増えてきたように思います。しかし今回受賞した市民レベルでの支援活動は一般にはあまり知られていません。継続的に成果を収めるには、日本国内や現地だけでなく、世界に活動状況をリアルタイムで発信し、認知度を高めるパブリック・リレーションズの活動が非常に重要となります。
このような賞を通して、貢献度の高い活動に対する認知度が向上し、世界へ貢献したいと考える、高い志と使命感を持つ人々が一人でも多く輩出されることを願っています。
2006年12月23日
私の心に残る本 その3 『マザー・テレサ 日々のことば』
~クリスマスにちなんで
こんにちは、井之上喬です。
明日はクリスマス・イヴ。25日にはクリスマスと今年も恵みの時がやってきます。
皆さん、いかがお過ごしですか。
クリスマスは、およそ2000年前にベツレヘムで生まれたイエス・キリストの誕生を祝う日です。クリスマスのスピリットは「愛」。「愛は、この世で最も偉大な贈り物なのです」と神との深い一致を通して、その愛を実践した一人の女性がいました。
彼女の名は、マザー・テレサ。
今日は、マザー・テレサが折りにふれて語った言葉を、365日にわたって、日々のことばとして一冊の本にまとめた、『マザー・テレサ 日々のことば』(2000年、女子パウロ会刊)をご紹介します。
マザー・テレサ(Mother Teresa、本名アグネス・ゴンジャ・ボヤジュ:Agnesë Gonxhe Bojaxhiu)は、1910年8月27日、スコピア(現マケドニア)のアルバニア商人の裕福な家庭に生まれました。両親は熱心なカトリック教徒で、母親は貧しい人を食事に招き入れるほど奉仕の精神に溢れる人でした。
28年、18歳のテレサは、アイルランドのロレッタ修道会に入会しました。その後、カトリックの修道女としてインド・ダージリンへ派遣されました。そして31年、初誓願を立て、その修道名をシスター・テレサとしました。
■ たった10数円を手に一人で貧民街へ
46年、36歳の夏、シスター・テレサは黙想のためダージリンへ向かう汽車の中で神の声を聞きます。テレサは48年、「神の召命」となる貧困救済活動を行うためインド、カルカッタのスラム街に「青空教室」を開設。粗末なサリーをまとったテレサがひとり貧民街に立った時、その所持金は僅か5ルピー(現在1ルピーは約2.5円)だったといいます。
50年、テレサは「主よ、どうか私をあなたの平和の道具としてください」を信条に、 12人のシスターと共に“貧しい中の最も貧しい人に仕える修道会”「神の愛の宣教者会」を設立。総長就任と共に指導的な修道女への敬称であるマザーを用いて「マザー・テレサ」と呼ばれるようになります。
死を迎える最期の一瞬だけでも、人間らしく扱われることの重要性を知っていたマザー・テレサは52年、路上で死に瀕した人を招き入れ、愛のなかで最期を看取るための施設である、「死を待つ人々の家」(Home for Sick and Dying Destitutes)をカルカッタに開設しました。
■ 宗教を超えて人間の尊厳を守る
『マザー・テレサ 日々のことば』のなかの「11月17日」には、愛は、宗教、民族、社会的地位を超えて差し伸べられなければならないという、彼女の人間の命への尊厳と人間に対する敬愛の念を示す、次のことばが記されています。
「『死を待つ人々の家』では、…..誰にも必要とされず、愛されずに亡くなった人は一人もいません。..... 私たちはヒンズー教、イスラム教、仏教、カトリック、プロテスタント、その他どんな宗教でも、それぞれに記された規範に従って彼らが望むものは何でもしたり与えたりしています」
また「2月5日」には、「私たちが排水溝から引き上げた男性は体の半分を虫に食べられている状態でした。カリガートにある『死を待つ人々の家』に連れて来ると彼はこう言いました。『私はこれまで道端で獣のように生きてきました。それなのに今、愛され、手当てを受け、まるで天使のように死んで行きます』」
マザー・テレサの活動は世界でも高く評価され、79年にはノーベル平和賞を受賞しました。審査員の満場一致による受賞であったといわれています。その賞金は全額寄付されました。受賞のスピーチでマザーは、アッシジの聖フランシスコの「平和の祈り」を朗読しました。
その一部分が日々のことばの「2月24日」に記されています。
「主よ、私を平和の道具としてください。憎しみのあるところに、愛を、不当な扱いのあるところに、ゆるしを、分裂のあるところに和解を、誤りのあるところに真実を、疑いのあるところに信頼を、絶望のあるところに希望を、闇のあるところに光を、悲しみのあるところに喜びをもたらしますように」
受賞後も彼女は、愛の担い手として以前と変わりなく朝4時に起床しシスター達と一緒に、最貧の人々を救済する活動に専念したといいます。
97年9月5日、マザー・テレサは「もう息ができない」の言葉を最後に帰天しました。87歳でした。その8日後、インドで国葬が行われました。国家の要職についたわけでもない人のために国葬が行われるのは異例のことでした。如何にインドの人々が彼女を深く敬愛していたかを物語っています。
彼女の死から約6年後の2003年10月、マザー・テレサは教皇ヨハネ・パウロ2世によって異例のスピードで列福されました。
マザー・テレサが一人で始めた活動は、現在では世界120カ国へと広がり、6000人ものシスターやブラザーによって支えられています。そして、彼女が毎日座っていたカリガートのある祈りの部屋には、彼女の棺とともにあの小さく華奢な身体をした、座って祈りを捧げる模像が置かれています。私のマザー・テレサとの出会いは、何年か前にカルカッタの本部を訪問した際のことでした。精緻にできたその模像から、彼女の息づかいが聞こえてくるようでした。
『マザー・テレサ 日々のことば』は彼女の深い愛に満ちたことばを通して、喜び、平和、愛、希望という私たちの中にある大切なものをもう一度気づかせてくれる、そんな本です。一度手にとってみてはいかがでしょうか。その日の日付のページを読むのもいいですし、ふと気になったページを開いてみても、きっと皆さんの求める言葉に出会えると思います。
この本が、皆さんに素晴らしい一日をもたらしますように。
最後にクリスマスの日に選ばれたマザー・テレサのことばを紹介します。
「12月25日」
クリスマスの日、
私たちは、
か弱く、貧しく、
幼い乳飲み子としてのイエス様を見ます。
彼は、愛し、愛されるために来られました。
私たちは今日の世界で、どのようにして
イエス様を愛することができるのでしょうか?
私の夫に、私の妻に、
私の子供たちに、
私の兄弟や姉妹に、
私の周りの人たちに、
そして貧しい人たちの中におられるイエス様を、
愛することによってできているのです。
さあ、ベツレヘムの
貧しい飼い葉おけの周りに集いましょう。
そして、私たちが日々出会う
全ての人の中におられるイエス様を
愛することを固く決心しましょう。
メリー・クリスマス!
2006年08月18日
瀬戸内海のまんなかに浮かぶ癒しの空間 弓削島
瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ弓削島。弓削島は幼少時代に毎夏滞在し、心と体の基礎を築いてくれた私のふるさとです。今年もお盆休みを利用して、母が生れ育ったこの島に住む95才と91才の叔父・叔母に会うために訪れました。島から見る瀬戸内海は、夏霞に太陽をいっぱい浴びて幻想的に輝いていました。この癒し空間で4日間、つかの間の休暇を楽しみました。
■松原海岸が日本の海水浴場の100選に
環境庁が今年初めて選定した日本の快適な「快水浴場百選」に、弓削島の松原海岸が愛媛県で唯一選ばれました。美しさはもちろんのこと安全性や環境への配慮が高く評価されての受賞。またNHKがその100箇所をくまなく歩き、最終的に3箇所の特色のある海水浴場を選びました。なんと松原海岸はその一つに入っているのです。
そして先日NHKで、弓削島の地元ボランティアにより行われている環境保全プロジェクトが紹介されました。「NPOゆげ夢ランドの会(代表:村瀬忍さん)」が3年ほど前から行っているEM菌(有用微生物群)を使った水質浄化プロジェクトです。島内の8箇所の砂浜にEM菌を使った土団子(テニスボール大)を投げ入れるもので、そのおかげもあってか島の水には透明感が戻ってきました。嬉しいことに、海岸にはいつもよりタコが採れるようになったり、10数年ぶりにカニが戻ってきたようです。
瀬戸内海は、年間平均気温が15度から16度と温暖でマイルドな気候に恵まれています。
海の波もおだやかで海水浴に最適の海岸が他にもたくさんあります。そして瀬戸内の島々の美しさは「魂にふれる」という言葉がぴったりくる、人の心を癒す神秘的なところにあります。
■瀬戸内の歴史と文化が身近に
この豊かな自然のほかに、弓削島の周辺にはさまざまな史跡や瀬戸内文化を醸成したゆかりの場所があります。北の対岸に浮かぶ因島(広島県)は、室町時代から戦国時代に隆盛を誇った村上水軍の本拠地があった島で、1983年には因島水軍城が再建されました。そこには資料館が併設され、彼らの活躍の歴史を学ぶことができます。
その西隣の生口(いくち)島(広島県瀬戸田町)には、高来寺や地元瀬戸田出身の画家である平山郁夫の美術館があります。その洗練されたデザインの美術館では、「私の原点は瀬戸内の風土である」と語っている画伯の繊細で感性あふれる絵を存分に楽しむことができます。
さらに生口島の西隣にある大三島(愛媛県)には、推古天皇により摂津(現在の大阪府)から同地に移された(594年)大山祗(おおやまづみ)神社があります。「山の神」「海の神」「戦いの神」として朝廷や武将から崇められていたこの神社には、平安初期の日本最古の鎧や源頼朝、源義経(鎧もある)が使っていた名刀を初め日本の国宝・重要文化財の約6割を占める刀剣類や鎧が納められています。ちなみに、ここでご紹介した島々は弓削島を除いて、尾道市と今治市を10の橋で結ぶ自動車道「しまなみ海道」沿いにあります。
瀬戸内文化が生んだ多彩な歴史と美しい自然をもつ島々。しかし、これらの島にも過疎化や高齢化など、日本の地方が直面する問題を抱えています。私は、地元の歴史・文化に根ざした街づくりと、インターネットのインフラ整備によるIT企業、とりわけソフト企業の誘致に同時並行で取り組めば、瀬戸内の豊かな自然を維持しながらの経済的な繁栄の実現も可能であると、つい考えてしまいます。
ひょっとしたら、日本を代表する一大癒し空間になるのではないかと思ってしまうほど瀬戸内の島々には不思議な魅力があるのです。
今年も叔父・叔母そして従姉弟や、彼らの子供たちと共に釣りや会話を楽しみ、幼少のころと変わらない海草の香りのする潮風をたくさん受けて、心と体を癒しました。
東京に帰る日、叔父と叔母には来年また戻ってくることを約束しました。目に泪を浮かべ、船上の私の姿が見えなくなるまで、桟橋から両手を力いっぱい振って見送ってくれた叔母の姿が私の目に焼きついています。
2006年07月14日
心に残った本。
~司馬遼太郎『対訳 21世紀に生きる君たちへ』
こんにちは、井之上喬です。
7月も中旬を迎え、梅雨明けが待ち遠しい季節となりました。
皆さん、いかがお過ごしですか。
先日ある書店に立ち寄った際、一冊の本に目が留まりました。司馬遼太郎が亡くなる数年前に著した『対訳 21世紀に生きる君たちへ』(1999年、朝日出版社)です。
発刊以来読書するチャンスを失っていた私が偶然にも書店でこの小さな本を手にしたとき、司馬さんの子供たちへの熱いメッセージと真剣な思いが私の胸に突き刺さりました。
日本を始め、世界の歴史や20世紀の人間の営みを繊細な目で観察してきた司馬さんはこの本の中で、21世紀を担う子供や若者たちに対して、彼らへの希望と期待を平易な言葉で丁寧に語っています。今回は「一編の小説を書くより苦労した」と語られるこの短編を彼の思いと共に、このブログでご紹介したいと思います。
■人間はもっと謙虚で素直になれる
司馬遼太郎は1960年、産経新聞社在職時代に「梟の城」で第42回直木賞受賞、その後 「竜馬がゆく」「国盗り物語」で菊池寛賞など数々の賞を受賞し、93年には文化勲章も受章している20世紀の日本を代表する作家です。膨大な資料から得られたその独自の歴史観は「司馬史観」と呼ばれ、96年にこの世を去るまで様々な視点で捉えた数多くの作品を残しました。
今回ご紹介する本には、「人間の荘厳さ」に始まり、彼が小学校用教科書のために書き下ろした「21世紀を生きる君たちへ」、そして「洪庵のたいまつ」が英文対訳で収録されています。
「人間の荘厳さ」では、いまの一瞬を経験するとき、過去や現在のたれとも無関係な、まっさらの、自分だけの心の充実だけがあると云い、「21世紀を生きる君たちへ」では、歴史から学んだ人間として21世紀を担う人たちに何を大切に生きてほしいかを語っています。
まず重要となるのは不変の価値に基準を置くこと。これはこの地球を支配する倫理観であるともいえます。司馬氏は、その基準を大切にしながら大きい存在に生かされていることを知り、その存在に対する恐れを抱くことで、人間はもっと謙虚で素直になれると書いています。
またこれらを素地として、自分に厳しく、相手にはやさしく、という自己を確立することで、自己中心的ではなく、いたわりを持って互いに助け合うことのできる頼もしい自己を築いて欲しいと率直に語っています。
一方、「洪庵のたいまつ」では当時鎖国状態の江戸末期に生まれながらオランダ医学を学んだ後、大阪で「適塾」を開き、福沢諭吉や大村益次郎らの多くの弟子を残して明治維新の礎となった蘭医学者、緒方洪庵について語っています。「人のため」に生きた彼の生涯を例にとり、志の大切さやその高い志をシェアすることで、大きなうねりを起こすことができると説いています。
■パブリック・リレーションズに共通する心構え
司馬さんがこの本で主張していることは、人生においてだけでなく、「倫理観」 http://inoueblog.com/archives/2005/05/prtwoway_commun.html 「自己修正」に支えられた質の高いパブリック・リレーションズを実践する上でも欠かせない心構えでもあると思います。
常日頃、私は日本のみならず世界の安定と持続的な繁栄のためには、自立した個を持った次世代のリーダーの育成が急務であると考えています。早稲田大学で教鞭を執ることになったのも、パブリック・リレーションズの普及をとおして、一人でも多くの次世代のリーダーを育成することで、閉塞状態にある日本が少しでもよい方向へ変容することを期待してのことでした。この本はそんな気持ちを抱く私をいとも簡単に魅了したのです。
いま、混迷する日本では普遍的な価値基準ともいえるバックボーンを持ち、高い志を持ってしっかりとした足取りで歩める、個の確立した強いリーダーが求められています。この本が示す精神で、一人ひとりが山積する問題の解決に取り組めば、司馬さんのいう「真夏の太陽のように輝いている」未来が日本社会にも訪れるかもしれません。
この本は米国の著名な日本文学研究者、ドナルド・キーン氏監訳による英文対訳もついていますから、英語の学習にも有効です。機会があれば、一度手にとってみてはいかがでしょうか。
「もし『未来』という町角で、私が君たちを呼びとめることができたら、どんなにいいだろう。」-----この一文は、いまでも私の心に強く残っています。
21世紀の到来をまたずこの世を去った司馬さんは、今の世界をどのように見ているでしょうか。
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本書が日経ビジネス(2006年6月19日号)の書評欄で紹介されました!
『パブリック・リレーションズ~最短距離で目標を達成する戦略広報』
(日本評論社、税込2520円)好評発売中!
「人」「モノ」「金」「情報」のすべてを統合する「第5の経営資源」
これまで長年にわたって誤解されてきた「PR」を「パブリック・リレーションズ」として正しく捉えなおすことにより、パブリック・リレーションズの本質とダイナミズムを分かりやすく解説している。広報の実務に携わる人はもちろん、経営者から学生まで幅広い人たちが戦略的広報を理解することのできる待望の入門書。
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2005年12月24日
クリスマス・イヴの夜話『ヨシュア』 ~ 自由と解放をもたらすひと
皆さんこんにちは。
今日はクリスマス・イヴです。今から約2000年前にユダヤのベツレヘムという村の「馬小屋」で生れた、イエス・キリストの誕生日(25日)の前夜をクリスマス・イヴといいます。
今日はクリスマスにちなんで米国で1983年に刊行されベストセラーとなった本『ヨシュア』のご紹介をしたいと思います。作者はカトリック司祭のジョーゼフ・F・ガーゾーンで、発売以来今日に至るまで推定約4000万人以上の人びとに読まれている本です。
『ヨシュア』は、日常の喧騒と葛藤の複雑な社会に生きる私たち読者に対し、精神的な安らぎと共に不思議な時間と空間を与えてくれます。
アメリカの片田舎のオーバーンという古い村にヨシュアとい名の若い男性が何処からともなくやってきます。彼は村のはずれの牧草と動物たちに囲まれた、古い小さな家に住み始めます。職業は木工で、村人や教会から頼まれるとたとえ小さなものでも丁寧にこなし、質素な生活をしています。接する人には誰にでも親切で、困っている人には心から手助けをし、謙遜のうちに人々の日常の些細な問題や相談事に誠実に応えます。
彼と接する人々は、その何かを超越した、寛容で神秘的な人柄に興味を持ちながら次第に引き込まれていきます。信仰について質問があれば、形ではなく如何に自由意志をもって信仰生活を日々の生活の中に活かすことが大切か、神と人間の関係を規則や規律で形づけるべきでないことなどを語りかけます。彼が人々にもたらす数々の奇跡や小さな愛の行為は人々の心をとらえ、村人にとって大切な存在となっていきます。
神を礼拝するところなら、プロテスタント、ユダヤ教、カトリックの教会と分け隔てなく出かけていきます。やがて、2000年も前にイエスがファリサイ派の人々に批判されたときのように、教会の指導者の批判の対象になっていきます。読者はヨシュアがいつもキリストと同じような目線を持っていることを感じます。
この本はとかく気ぜわしい日常生活を送りがちな私たちに、特別な空間を与えてくれます。もし「イエス・キリストのような人が現代を生きていれば、どのような行動をとるのだろうか、またどのように過ごしたのだろうか?」をイメージさせてくれます。それ故、読者はヨシュアに強く惹かれていくのかもしれません。
ストーリー内容はこれ以上ご紹介できませんが、本書は米国のキリスト教をテーマにした読み物ですが、人間の本質を丁寧に描いた傑作といえます。400頁に及ぶ読み応えのある『ヨシュア』は、忙しく毎日を送っている人には、食後のくつろぎのときや就寝前などを利用して少しずつ読むことをお勧めします。不思議な心の安らぎを感じると思います。
訳者の山崎高司さんは、原作者のガーゾーン神父との運命的な出会いをとおして、仕事の傍ら時間を見つけては翻訳されたとのこと。大蔵省〈現財務省〉で若かりし頃、英国留学中にスコットランドでプロテスタントの受洗をされた方で、私とはある縁でご本人が中心的な役割を果たす、毎月定期的に行われる朝食会でご一緒させて頂いています。
ちなみにギリシャ語の「イエス・キリスト」の「イエス」は名前にあたり、「キリスト」は「油を注がれたもの」を指します。そして、「イエス」はヘブライ語で「ヨシュア」の意味です。
最後にこの本の中で、山崎さんもまたこの私も、心に深く刻みこまれた箇所をご紹介したいと思います。それはヨシュアが少年マイケルに起こした奇跡的な出来事への医師の質問に対するものです。「日々の営みはすべて果てしない奇跡に満ちています。ただそれがあまりにもごく自然によどみなく日常的に流れていくので、(私たちは)つい当たり前のことと考えてしまう。しかし、小さな出来事の一つひとつ、時の流れの一瞬一瞬は創造の奇跡なのです」(353頁)。
メリー・クリスマス。
2005年05月30日
ヤマハグループを世界に導いたカリスマ経営者、川上源一さんを偲ぶ
5月25日はヤマハの中興の祖、川上源一さん(1912-2002)の3周忌でした。私の20代に、川上さんと出会う事ができたのは本当に幸運でした。
3年前の7月、前社長の石村和清さんから招待を受け、浜松で行われた川上さんとの「お別れの会」に出席させていただきました。4,000人を超える弔問客すべてを収容するホールを借りきったその会は、まるでコンサートのようで、川上さんの生前を彷彿とさせる型破りなものでした。
川上源一さんは、日本の戦後高度成長期に、類まれなる経営手腕でヤマハを世界的な企業グループに仕立てた人物です。
私がまだ25歳ぐらいの駆け出しの頃、何人かの外部発案でヤマハが提唱するポピュラー音楽の普及のため、川上さん主催で民放ラジオ・プロジューサー会を定期開催しました。川上さんは毎月欠かさず浜松から上京し、新曲の紹介や意見交換を行い、年齢や立場の違いなど一向に気にせず、自分がいいと思ったら誰にでも、ためらわず真剣に接する人でした。
当時の日本楽器製造(現ヤマハ株式会社)はソニー、資生堂と並ぶ三大花形企業として急成長を遂げていました。私は学生時代に音楽をやっていたこともあり、就職先に日本楽器を志望しましたが、クラブ活動に明け暮れていたため成績が悪く、書類選考にもれました。そんな中、クラブでのプレーイング・マネジャーの実績が買われ、幸運にも社長推薦で入社できました。しかし、大きな歯車の中に組み込まれるのがたまらず、入社後三ヶ月で退社してしまいました。その後独立し、今の会社を始めましたが、最初の顧客はヤマハでした。川上さんが社長として最も輝いていた70年代、ヤマハが戦略的な国際展開をするなか、さまざまなプロジェクトで、ヨーロッパやオーストラリアに派遣され鍛えられていったことが懐かしく想い出されます。
織田信長的な、天才的で強烈な個性のもとで、スケール感のある事業が次々に打ち出されました。楽器、スポーツ用品、レジャー施設の拡大、ヤマハ音楽教室の国内・海外展開、そして吉田拓郎、中島みゆきなどの多くのポピュラー音楽家を輩出したポピュラー・ミュジック・コンテスト(ポプコン)や世界歌謡祭の開催。また、ヤマハ発動機における、オートバイ事業を核にしたヨット、パワーボート、ジェットスキーなどマリン事業へも参入を果たし、情熱的で心ときめかせる事業展開には目を見張るものがありました。
川上さんの事業のユニーク性は、「人間が生きていくための生活必需品は一切作らず、ひたすらその生活や人生を豊かにする製品やサービスを提供する」という点にあり、この特色こそが、ヤマハグループを世界にも類を見ない特異な存在にした所以ともいえます。
川上さんの「スピード経営」は、1968年の日本初の株式時価発行にみられるように、グローバル時代のCEOに必要とされる経営戦略構築力と経営遂行上の迅速な意志決定など、21世紀の企業経営にも通用する手法でした。
音楽家を目指していた若き日のソニーの大賀さんと川上さんとの交流は、一部の人には良く知られています。大賀さんのソニーでの経営手法は、川上さんのそれと極めて近いものがあったといえます。両者の経営戦略に共通するのは、「自社のブランドを最高のものにする」ことでした。
以前、大前研一さんの著書『やりたいことは全部やれ』(講談社)の中で、「戦後の経営者の中で誰が一番すごかったか、という質問を受けたら、私は迷わずにヤマハの川上源一さんではないかと答える………創造的破壊力においては、誰をも寄せ付けないくらい強烈なイノベータであった」とその印象が語られていたのを思い出します。
いまさらながら驚くべき先見性と信念、そしてそれらを抱合する独自の経営哲学をもった、そんな川上さんの下で、私の青年期、身近に仕事をさせて頂いたことに感謝するのみです。















