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2008年08月30日

「人間力」は社会を変える

こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?

日本社会が崩れかかっていることは、このブログでも何度か指摘していますが、年間3万人を超える自殺者、親子殺人、通り魔殺人、幼児虐待、教育界の不祥事そして組織体の不祥事などなど、年々勢いを増すことがあっても減る傾向にありません。これらの問題の根底にあるのは、「人間力」の欠如であるといえます。

先日、私の入っているある会の集まりで、同じメンバーの谷川和穂(元法務大臣、防衛庁長官)さんとお話する機会がありました。半世紀ほどつとめあげた国会議員を辞められた谷川さんが現在力を入れているのは更生保護司という仕事。

その仕事内容については、これまで何度かご本人からうかがっていたのですがピンと来ていませんでした。しかし偶然にも先日、法務省保護観察局が刊行している月刊誌「更生保護」への執筆依頼をきっかけに、更生保護司という谷川さんの仕事がどういうものか分かったのです。

■社会の最端で働く更生保護司
更生保護司は現在全国で約5万人。犯罪や非行をした、年間約7万人の護観察対象者に対して、更生を図るための約束ごと(遵守事項)を守るよう指導するとともに、生活上の助言や就労の援助などを行い、その立ち直りを助けるものです。社会が抱えるひずみや矛盾の中に生きる人に、希望や力を与える崇高な仕事といえます。

更生保護制度は明治中期に民間人がはじめた慈善事業が源流。更生保護司の身分は非常勤の国家公務員ですが無給で実質的には民間のボランティアで、世界に類を見ないユニークな制度です。70歳後半とは思えないぐらいお元気な谷川さんは、全国保護司連盟会長として週末には全国を駆け回っています。

谷川さんは最近の傾向として、2つの胸の痛む話をしてくれました。一つは、これまでほとんど見られなかったこととして、70代の初犯者が出ていることについてです。かれらは経済的な問題を抱え、老後、自力で生活できない人が国の施設の世話になることを期待し犯罪行為に至るようです。先日の渋谷駅の自称79歳の老女による通り魔事件のように、老人が所持金もなく、事件を起こせば生活は警察がなんとかしてくれるというおもいで凶行に走ることなどはこれまで考えてもみなかったことです。
法務省の平成19年版犯罪白書(HP)では、刑法犯認知件数で2002年には戦後最多を記録しその後は減少に転じてはいるものの、10年前(H8年)の246万件から平成18年には287万件と増加。中でも高齢者の犯罪は著しい増加を見せ、平成18年の60歳以上の新受刑者数は、同じ平成8年と比べて2倍以上に達しています。

谷川さんの指摘したもう一つの傾向は、低学歴で収入の低い若者が早婚によりたどりがちなケース。生活苦で高利貸しから借金をし、過酷な取り立てで離婚し一家離散の憂き目にあいます。若い母親はシングルマザーになりますが、低収入のためにアパート代を払うとほとんど何も残りません。生活に追われ養育に手が回らず子供は放置されたまま。その結果、子供は薬物に手を出し非行を繰り返すようです。若者の犯罪が増えている背景にはこのような事情があるのかもしれません。ちなみに、20代前半で1犯目の罪を犯した者の再犯率は41%。20台後半で1犯目の罪を犯した者の再犯率は28%(平成18年)。

■「人間力」とパブリック・リレーションズ
これらの状況に至る要因はさまざまありますが、その根底には人間力の劣化があります。日本の抱えるさまざまな問題を単に社会システムの構造的問題として捉えるだけでは無理があるからです。人間力のベースには「倫理観」があります。倫理観という言葉はよく耳にするものの、なんとなく使用されることが多く、むしろ明確な意味を持って使われることのほうが少ないかもしれません。

倫理観を誰にでも解りやすく端的に言い表すと、「人間の行為における善・悪の観念」で人間力になくてはならないものです。そして人間力をもたらすものは何かというと、それはパブリック・リレーションズ(PR)

また、人間力とは、周囲(パブリック)との関わりの中で自分の道を切り開いて生きていく力でもあります。私たち人間は本質的に「かかわる」存在です。したがって、人間の最も深い体験は他者との関係です。他者とかかわることで私たちは今の自分自身を作り上げています。パブリック・リレーションズは倫理観のある環境で、相手との情報流通が双方向状態にあり、その行為に間違いがあれば、自らを修正しなければなりません。

特に罪をおかした人が更生(自己修正による立ち直り)するとき、社会にこれを受け入れる土壌が必要となります。人間は、完全ではなく罪を犯すものであるという考えに基づいた社会でなければ、更生者が社会での居場所がなくなってしまうからです。

更生保護は、人とさまざまな社会をつなぐ仕事。心と心のふれあいを大切にし、様々な人との出会いから学び向上していくことで社会に役立つ人間を育成します。まさに人間力を強化するパブリック・リレーションズ(PR)が求められているのです。

投稿者 Inoue: 2008年8月30日 08:39

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