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2006年03月10日

実務家に求められる10の能力 2.判断力

こんにちは、井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか。

広報担当者やパブリック・リレーションズの実務家はIR(インベスター・リレーションズ)や危機管理など、経営に重要な影響を与える機能と役割を担っています。その現場は決断の連続といえます。それを支えるのは判断力です。ひとたび判断を誤れば企業を破綻に追いやることにもなり、実務家には常に高度な判断力が求められているといっても過言ではありません。

前々回は、実務家に必要とされる10の資質や能力の一つとして「統合力」を紹介しましたが、今回は、「判断力」を採り上げたいと思います。

広辞苑によれば判断力とは「物事を認識、評価、決断する精神的能力」とされています。パブリック・リレーションズに要求される「判断力」とは、最短距離で目的を達成するために適切な方向付けをおこなうために必要な能力です。

「判断力」の必要性については古くからから論じられ、古代ギリシアで活躍した3大哲学者の一人、アリストテレス(B.C.384-B.C.322)は、人間の生き方について「よい人間であるためには、優れた判断力と人柄の善さ(倫理感)が必要である」としました。またドイツ古典哲学者であるカント(1724‐1804)は『判断力批判』の中で判断力は対象を意味づけ価値づけるものであるとし、美や自然などをそれぞれの視点で論じています。このように「判断力」は真理探求の場で、時代の変遷と共にさまざまな角度から論じられてきました。


判断までの3つのプロセス「理解・思考・決定」
私たちが何かを判断するプロセスは一般的に、問題を理解し、考え、結論を出すという3段階から成リます。判断する対象は「今この道を渡るべきか」という単純なものから、「この企業に就職するべきか」のように人生の行く末を左右する複雑なものまで、様々なレベルで存在します。私たちはどのレベルにおいても、無意識にこのプロセスを踏んで判断を実行しています。

では、最適な判断を行うために必要となるものは何でしょうか?

全てのプロセスを通して重要となるのは、大局的で複眼的なものの見方です。全体を俯瞰する力は目的達成への適切な方向付けを可能にし、プラス面とマイナス面、自分と相手の視点など複眼的な見方は、複数の当事者の利益にかかわる複雑な問題を判断するときに効力を発揮します。

まず第一段階として問題を正しく理解するには、必要な情報の質と量が成否を分けます。私たちはデータとしての情報や過去に培った知識、体験に基づいて物事を判断します。従って、日頃から十分な周辺情報を収集し、知識の蓄積をおこない、積極的に経験を積み重ねることにより、すばやく物事を理解する能力を身につけることになります。

次の考える段階では、原因となりうる要素を洗い出して因果関係を推測し、その因果関係に基づいて仮説を立てる思考のプロセスを知ることが大切です。思考のプロセスには推論を加える要素が多いために、未知の部分に対処する知恵や機転、発想力や想像力が非常に重要となります。

因果関係を論証し結論づける方法論として代表的なものに「演繹法」と「帰納法」があります。演繹法が定められた前提条件から結論を導く方法論であるのに対し、帰納法は個々の事例から一般的な結論を導きだすものです。

演繹法では、「鳥は空を飛ぶ。私は鳥だ。それゆえに、私は空を飛ぶ。」というように3段論法の形をとります。前提を論証し結論づけに至るまでひとつの論理がながれていて、全てのポイントが互いに導かれる関係にあります。この論証法は単純な問題を思考するのに役立ちます。

一方、帰納法では「A社は増収増益だった。B社の経常利益は予測を上回った。C社は最高益を記録した。ゆえに景気回復は始まっている。」というように個々の事象に共通項を見出しグループ化し、グループ内の類似性から結論(仮説)を推測するので、ものの見方によって異なった結論(仮説)が導き出されます。したがって、より精度の高い仮説を立てるには、より正確な情報を多く集めて様々な角度から検証することが肝要です。この論証法は多面性のある複雑な問題を思考するときに有効です。

いよいよ最後の決定です。このプロセスでは根拠となる明確な基準がそのスピードと精度を高めます。最も重要となるのは、私たちが人間として持つべき価値基準、倫理観です。この善悪の基準は、相手の視点を失った身勝手な結論づけを避け、後に問題が発生するリスクを軽減してくれます。また客観性や論理性も的確で公平な決定を可能にするので、複数の当事者となるインター・メディエータ(仲介者)には特に意識しなければならない基準です。


優れた判断力は目標達成をスムーズにする
判断力を磨くには、日常生活の中で多くのシミュレーションを行うことです。毎日のニュースや周りの出来事を常に自分なりに判断することは極めて有効な訓練になります。加えて自分なりの判断を結果と照らし合わせて検証すれば、修正点など今後の対処方法が明らかになり、良質な経験として私たちの中に蓄積されます。

ネット社会において複雑多岐な問題を扱う実務家は、常に難しい判断を迫られます。しかも状況の変化に応じてリアルタイムで対処なければならないため、スピーディかつ最善の判断が要求されます。そこで疲弊せずに最適な判断を下すには「何のために判断するのか」という目的意識と目的達成への強い意志を持つことです。

優れた判断力は目標達成を容易にします。また高い判断力は個を強くし、リーダーとしての素養をも向上させます。世界のリーダーたちが優れた判断力を身につければこの混迷の世界に平和と繁栄をもたらすことは難しいことではありません。ですから自発的に新しいことにどんどんチャレンジして判断力を磨き、皆さんには次世代を担うリーダーに成長していただきたいと思います。


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<講演会のお知らせ>:


3月29日(水)にネット広報の先駆者である蓮香尚文さんの主催する、第12回「広報達人会」(会場:赤坂エクセルホテル)に講師と招かれ講演をします。
蓮香さんが出版した『プレスリリースのつくり方・使い方』(日本実業出版社)]と、私の3月末発売予定の『パブリック・リレーションズ』(日本評論社)の発刊を記念しておこなわれるものです。詳細は下記のサイトにアクセスください。
http://s-pr.com/koho-lecture/event.php3?id=12


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投稿者 Inoue: 2006年3月10日 19:06

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